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書き出し

原子力災害による農業用水や水田への影響と放射性セシウムの動態に関する研究

久保田, 富次郎 KUBOTA, Tomijiro クボタ, トミジロウ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

原子力災害による農業用水や水田への影響と放射性
セシウムの動態に関する研究
久保田, 富次郎

https://hdl.handle.net/2324/6787705
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(農学), 論文博士
バージョン:
権利関係:







久保田

富次郎

論文題名



原子力災害による農業用水や水田への影響と放射性セシウムの動態に関する
研究























2011 年 3 月の東日本大震災により発生した東京電力福島第一原子力発電所(FDNPP)による放
射性物質の放出事故と関連して,本研究では,農村地域に沈着した放射性セシウムの動態と影響に
関する知見を得るため,農業用水による水田への影響把握や農業用水路,ため池といった農業水利
施設における放射性セシウムの動態解明に取り組んだ.
第1章では,水系における放射性セシウムの動態に関するレビューと被災後の行政や研究による
放射性セシウム汚染への対応の経過について記すとともに,本研究の目的と論文の構成を示した.
第2章では,水中の放射性セシウムの分析法について記すとともに,水中の放射性セシウムの遠
隔観測の方法について示した.被災地の多くにおいて自由な立入が制限される中で放射性セシウム
の動態把握に必要な採水試料を得るため,任意時間での採水が可能な遠隔採水システムを開発した.
また,濁度センサーを用いた水中の放射性セシウム濃度の連続観測の方法と観測上の注意点につい
て整理した.
第3章では,まず,現地で実施された水稲の試験栽培において灌漑水に含まれる放射性セシウム
が水稲に与える影響を概観した.また,水稲作における放射性セシウムの吸収抑制に重要な役割を
果たすカリウムの動態について,浸透水の水質の違いによるカリウムの溶脱に着目した実験的研究
を行った.供試土壌では,カリウム溶脱は,浸透水中の主要カチオン濃度と密接な関係があり,特
にカリウム吸着比が指標となることを見いだした.本研究で得られた知見は,近い将来,灌漑用水
からのカリウムの供給能力の評価や,カリウム肥料の溶脱低減技術の開発につながる可能性がある.
第4章では,農業水利施設における放射性セシウムの動態把握について記した.まず,上流から
下流までを含む一連の水路系を対象として,農業用水路における放射性セシウムの堆積状況を調べ
た.その結果,幹線水路では多くの堆積物中の放射性セシウム濃度は低いが,幹線水路の掘込みの
一部や流速が遅い支線水路で,堆積物中の放射性セシウム濃度が高い傾向にあることが明らかにな
った.また,堆積物の放射性セシウム濃度は,自然減衰を大きく超えて低下する傾向が示された.
次に,底質から比較的高い濃度の放射性セシウムが検出されていた農業ため池における放射性セ
シウムの動態について検討した.はじめに,原子力発電所から比較的近く,放射性セシウムの沈着
量が比較的多いため池における放射性セシウムの動態を調べた.その結果,低水位で管理したため
池では,平水時にため池が放射性セシウムのソースとして機能することが明らかになった.このこ
とは,高濃度の放射性セシウムを含む底質の除去を行うため池除染が,水位が低いため池では特に
放射性セシウムの流出を抑えることに貢献し淡水資源の回復に効果的であることを示唆する.
また,阿武隈山地の山間部に位置する小規模ため池における 2 年間の水質鉛直分布の観測から放
射性セシウムの動態について考察した.その結果,底質からの放射性セシウムの溶出は,夏季に水
温が 15℃以上,溶存酸素濃度が低く,アンモニウムイオンが共存する条件でのみ観測されることが
示され.また,底質から放射性セシウムが溶出している条件であっても,最大水深が 3m 程度のた
め池の表層水では,溶存態放射性セシウムの濃度上昇はほとんど見られなかった.したがって,類

似の条件を持つため池における水利用に際して,平水時に表層取水を行う限り水稲生産への水中の
放射性セシウムの影響は小さいと結論された.
第 5 章は総合考察である.原発被災地の多くでは,水中の放射性セシウム濃度は概して低く,水
稲生産上は問題となる濃度になることはほとんどないことがわかった.一方で,FDNPP 周辺の一
部のため池では,事故後 10 年近くを経過した時点においても 1 Bq L-1 を超える溶存態

137 Cs

が検

出されていた.これは,ため池の底質を除去することで解消されるものと期待されるが,この現象
の科学的解明は十分に進んでいるとは言えない.今後,福島で得られた科学的知見を整理し,国際
的に記録を残すことが引き続き重要な課題である.

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