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大学・研究所にある論文を検索できる 「異なる分子量を有する超高分子量ポリエチレンフィルムおよび通常分子量ポリエチレンとのブレンドフィルムの溶融延伸による構造変化と高機能化」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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異なる分子量を有する超高分子量ポリエチレンフィルムおよび通常分子量ポリエチレンとのブレンドフィルムの溶融延伸による構造変化と高機能化

田中, 秀和 タナカ, ヒデカズ 群馬大学

2021.03.23

概要

ポリエチレン(PE)は、直鎖状で最も基本的な骨格を有している結晶性高分子である。このうち、分子量が百万を超えるものを超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)と呼び、耐衝撃性、耐摩耗性などの優れた機械的特性を示すエンジニアリングプラスチックとして、人工関節やベアリングなどに用いられている。しかしながら、UHMW-PE はその高い分子量に起因して多くの分子鎖絡み合いを有するため、溶融状態における粘度が極めて高く、射出成形等の一般的な樹脂加工技術を適用することが難しい。これに対して、UHMW-PEの高い溶融粘度を逆に利用することで、分子鎖を高度に配向させる加工法が溶融延伸法である。この溶融延伸法では、溶融状態における分子鎖絡み合いを起点として応力が試料全体に伝播し、配向結晶化が誘起される。この際、延伸過程で分子鎖絡み合いの解きほぐしが進行することで、結果として延伸方向に対して分子鎖が配向した優れた機械的強度を有する延伸物が得られる。この延伸法の利点は、既存のゲル延伸法と異なり、有機溶剤を一切用いることなく、UMMW-PE の高強度化が達成できる点にある。このように分子鎖の絡み合いを利用する溶融延伸法においては、その変形挙動や延伸フィルム物性が、試料の分子鎖絡み合い状態に大きく影響を受けることが推察される。そこで、本研究では、異なる分子量組成を有する UHMW-PE を対象に、溶融延伸に特有の配向結晶化挙動を in-situ(その場)計測し、その結果から、分子鎖絡み合いが相構造変化へ及ぼす影響を検討した。

本論文は 6 章で構成されており、第 2 章では分子量の異なる UHMW-PE の溶融プレス フィルムを作製し、溶融延伸過程における相構造変化を、広角 X 線回折(WAXD)測定を用いた in-situ 測定により解析した。すべての試料で、溶融延伸に特徴的な挙動である応力平坦領域が観測され、この領域に入ると同時に六方晶結晶化を生じていた。解析結果より、UHMW-PE の分子量が高くなるほど、六方晶の結晶反射強度と斜方晶の結晶反射強度の増加が顕著になっていた。また、分子量の高い UHMW-PE の溶融延伸物では、より多くの伸びきり鎖結晶(ECC)が形成されたことが ex-situ 測定の結果より明らかとなった。

これら結果から、分子量が高い UHMW-PE では溶融延伸過程にて解きほぐれにくい“深い”絡み合いが多く形成されており、このような絡み合いを通じて応力が効率的に伝搬することで、六方晶結晶化並びに斜方晶結晶への相転移が促進されることが示唆された。

第 3 章では、異なる分子量を有する PE として分子量の低い通常分子量ポリエチレン(NMW-PE)を UHMW-PE にブレンドしたフィルムを作製し、これらを溶融延伸した際に起こる相構造変化を、in-situ WAXD 測定により解析した。NMW-PE をブレンドすることで、溶融延伸過程での斜方晶の出現時間が顕著に遅れるとともに、UHMW-PE 単品で出現していた六方晶が観測されなくなっていた。これらの結果から、NMW-PE をブレンドすることで、溶融延伸過程で解きほぐれやすい“浅い”絡み合いが多く形成されることが示唆された。加えて、分子鎖絡み合いの解きほぐしが進行したブレンド延伸試料においては、折りたたみ鎖結晶(FCC)からなる均一ラメラ構造を発現することがモルフォロジー解析の結果から明らかとなった。

第 4 章では、ブレンドフィルムの溶融延伸物を昇温した際の相転移挙動を in-situ WAXD測定と小角 X 線散乱(SAXS)の同時測定によって解析した。さらに、これらの in-situ 測定より得られた解析結果と DSC 融解挙動を対比させることで、溶融延伸物の DSC 測定で観測された複数の吸熱ピークを、ECC および FCC の融解にそれぞれ帰属することに成功した。このような解析結果から、NMW-PE を添加したブレンドフィルムの溶融延伸物では、UHMW-PE 単品フィルムと比較して、ECC 量が著しく減少するとともに、延伸方向に対してより伸長した ECC が得られていることを定量的に確認することができた。

第 5 章では、ブレンドフィルムの溶融一軸延伸で得られた知見を溶融二軸延伸へと展開することにより、FCC からなる均一ラメラ構造を大面積で発現させることを試みた。さらに、この FCC の均一構造を再度、固相状態で二軸延伸することで、膜面全体にわたって nm 径の細孔が形成された微多孔膜の創製を行った。各種の検証結果から、膜面に対して優れた連通性を有する細孔ネットワーク構造を有しつつ、破断強度が 30MPa と優れた機械的強度を有するナノポーラス膜を得られていることが明らかとなった。この膜は、ろ過膜、リチウムイオン電池セパレーターや人工透析膜といった産業的な用途への応用が期待される。

第 6 章では、これら第 1 章から第 5 章で得られた知見を総括した。本論文では、異なる分子量を有する UHMW-PE および NMW-PE とのブレンド試料を対象として、溶融延伸過程における分子鎖絡み合い特性の効果ならびに高次構造発現に及ぼす影響を検討した。その結果、溶融延伸過程における解きほぐしやすさを指標として、 “深い”絡み合い、および“浅い”絡み合いが定義できることが示された。この知見を応用することで、均一構造膜や微多孔膜を得ることに成功した。

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