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大学・研究所にある論文を検索できる 「シスプラチン耐性卵巣がん細胞株におけるFDX1の発現はシスプラチンによるフェロトーシスを阻害する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

シスプラチン耐性卵巣がん細胞株におけるFDX1の発現はシスプラチンによるフェロトーシスを阻害する

髙橋, 良輔 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Expression of Ferredoxin1 in cisplatinresistant ovarian cancer cells confers their
resistance against ferroptosis induced by
cisplatin

髙橋, 良輔
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8693号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485877
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Expression of Ferredoxin1 in cisplatin-resistant ovarian cancer cells confers their
resistance against ferroptosis induced by cisplatin

シスプラチン耐性卵巣がん細胞株における FDX1 の発現は
シスプラチンによるフェロトーシスを阻害する

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
産科婦人科学
(指導教員:寺井義人特命教授)
髙橋

良輔

卵巣がんは本邦では年間約 13,000 人が罹患し、約 5,000 人が死亡する、婦人科悪性腫瘍の中で
最も死亡率が高い悪性腫瘍である。初期の卵巣がんは無症候性であることが多く、40%以上が進
行卵巣がんとして診断される。進行卵巣がんは手術治療に加えてプラチナ製剤を含む化学療法を
施行することが標準治療であるが、プラチナ製剤への感受性が予後に大きく影響する。プラチナ
製剤耐性卵巣がんであった場合は、その他の化学療法への奏功率は 10%程度であり、無増悪生存
期間は 3 か月と極めて予後が不良である。プラチナ製剤耐性卵巣がんの治療方法は確立しておら
ず、プラチナ製剤に対する耐性獲得のメカニズムや、その解除方法については未だ一定の見解が
得られていない。そのため本研究では卵巣がんのプラチナ製剤への耐性化に関わる因子の同定と
機能解析を目的とした。
我々はシスプラチン感受性卵巣がん細胞株である A2780 と OVK18、また A2780 から樹立され
たシスプラチン耐性卵巣がん細胞株である A2780cis を入手した。さらに OVK18 を低濃度のシス
プラチン存在下で培養し、段階的にシスプラチン濃度を上昇させることでシスプラチン耐性卵巣
がん細胞株 OVK18cis を樹立した。A2780 と A2780cis、OVK18 と OVK18cis の間でそれぞれシ
スプラチン耐性に伴い発現上昇する遺伝子について RNAseq および qRT-PCR を用いて解析した
結果、シスプラチン耐性の獲得に伴い、主にミトコンドリアに局在する 鉄・硫黄クラスタータン
パク質 Ferredoxin 1 (Fdx1)の発現が上昇することを見出した。実際に卵巣がん患者より採取した
臨床検体について免疫組織化学的解析を行ったところ、卵巣がん組織におけるがん細胞で Fdx1 が
発現していること、プラチナ製剤感受性卵巣がんに比べてプラチナ製剤耐性卵巣がん細胞では
Fdx1 の発現が高い傾向にあることが明らかとなった。鉄・硫黄クラスターは細胞内の鉄の恒常性
に重要な役割を担っているため、鉄依存性細胞死であるフェロトーシスとの関連が予想された。
また、シスプラチンはフェロトーシスを誘導することが近年報告されており、これらのことを踏
まえて、Fdx1 とシスプラチンおよびフェロトーシスの関係性について検討を行うこととした。
まずシスプラチンによる細胞死が鉄依存的に誘導されているかを検討するために鉄キレート剤
である Deferoxamine の添加を行ったところ、OVK18 およびA2780 の両細胞株において
Deferoxamine の添加によりシスプラチンによる細胞死が抑制された。次にフェロトーシスの指標
である過酸化脂質を標識する Liperfluo を用いた解析を実施したところ、シスプラチン感受性株で
ある OVK18 および A2780 ではシスプラチンにより過酸化脂質が増加するが、シスプラチン耐性
株である OVK18cis および A2780cis ではシスプラチンによる過酸化脂質の増加が抑制されるこ
とを明らかにした。さらに、siRNA を用いて OVK18cis における Fdx1 の発現を抑制したところ、
シスプラチンにより過酸化脂質が増加すること、またシスプラチンによる細胞死が亢進すること
を見出した。これらのことから、シスプラチンによりフェロトーシスが誘導されること、シスプラ
チン耐性株ではフェロトーシスに対して抵抗性を示すこと、さらに Fdx1 はシスプラチンによる
フェロトーシスを抑制することで、シスプラチン耐性に寄与していることが示唆された。
次に Fdx1 の機能解析を行うために、OVK18 および OVK18cis における Fdx1 の細胞内局在に
ついて免疫蛍光染色法を用いて解析したところ、OVK18 に比べて OVK18cis では Fdx1 の発現が
上昇することが確認されるとともに、Fdx1 は主にミトコンドリアに局在していることが確認され

た。そこで、シスプラチンによって誘導されるフェロトーシスとミトコンドリア機能との関連に
ついて検討を行った。まず、シスプラチン処理によるミトコンドリア膜電位の変化について解析
したところ、OVK18 と A2780 の両細胞株においてシスプラチンによりミトコンドリア膜電位が
上昇することを見出した。さらに電子伝達系阻害剤である Rotenone を用いてミトコンドリア膜
電位を抑制したところ、OVK18 と A2780 の両細胞株においてシスプラチンによるフェロトーシ
スが抑制されることが明らかとなった。これらのことからシスプラチンはミトコンドリアの膜電
位を上昇させることによりフェロトーシスを誘導していることが示唆された。また、OVK18cis お
よび A2780cis ではシスプラチンによるミトコンドリア膜電位の上昇が抑制され、OVK18cis にお
いて Fdx1 の発現を抑制することにより、シスプラチンによるミトコンドリア膜電位の上昇が確
認された。さらに OVK18cis において Fdx1 の発現抑制により上昇していたミトコンドリア膜電
位を Rotenone で抑制すると、フェロトーシスの誘導が減弱することを見出した。これらのことか
ら、Fdx1 はシスプラチンによるミトコンドリア膜電位の上昇を抑制することで、フェロトーシス
を抑制することが示唆された。
以上の結果から、シスプラチン耐性卵巣がん細胞では Fdx1 が高発現しており、Fdx1 はシスプ
ラチンによって誘導されるミトコンドリア膜電位の上昇を介したフェロトーシスを抑制すること
で、シスプラチンに対する耐性獲得に寄与している可能性が示された。今後、Fdx1 がシスプラチ
ンによるミトコンドリアの膜電位上昇を抑制する詳細な分子機構の解明や、シスプラチン耐性卵
巣がんで Fdx1 の発現が上昇する分子機構を明らかにすることが重要であると考えられる。

神戸大学大学院医学(
系)
研究科(博士課程)
論 文審 査 の 結 果 の 要 旨
甲 第 3295号





受 付 番号

高 橋 良輔

シスプラチ ン耐性卵巣が ん細胞株における F
D
X
lの発現はシスプラチ
論 文 題 目 1ンによるフェロトーシスを阻害する

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審査委員

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(要旨は 1, 0 0 0字∼ 2, 0 00字程度)

各れム




【背景・目的】
卵巣がんは 40%以上が進行がんとして診断され婦人科悪性腫瘍の中で最も死亡率が高い。進行卵巣が
んの治療では手術治療に加えプラチナ併用化学療法を施行するが、プラチナ感受性が予後に大きく影響
0%程度で、無増悪生存期間は 3か月と予
する。プラチナ耐性卵巣がんは他の化学療法への奏功割合も 1
後不良である。プラチナ耐性卵巣がんの治療方法は確立しておらず、耐性獲得のメカニズムや克服方法
も十分解明されていない。そのため、本研究では卵巣がんのプラチナ製剤への耐性化に関わる因子の同
定とその機能解析を実施した。
【対象と方法】
シスプラチン感受性卵巣がん細胞株である A2780と OVK18、A2780から樹立しシスプラチン耐性細

i
sを入手し、さらに OVK18を低濃度のシスプラチン存在下で培養し段階的にシス
胞株である A2780c
i
sを樹立した。 A2780と A2780c
i
s
、OVK18と
プラチン濃度を上昇させシスプラチン耐性株 OVK18c
OVK18c
i
s において、それぞれシスプラチン耐性化に伴い発現が上昇する追伝子を RNAseqおよび
qRT-PCR で解析したところ、シスプラチンに対する耐性獲得により主にミトコンドリアに局在する
e
r
r
e
d
o
x
i
n 1(
F
d
x
l
)の発現が上昇していたた。そのため、シスプラチ
鉄・硫黄クラスタータンパク質 F
ンによる細胞死が鉄依存的に誘導されているか感受性株である親株を用いて鉄キレー・ト剤である

Def
eroxam
i
neの添加によるシスプラチンの感受性を検討した。また、卵巣がん患者より採取した臨床
検体で免疫組織化学染色を行い、プラチナ感受性の有無により Fdxlの発現を比較した。さらに、 Fdxl
とシスプラチンおよび鉄依存性細胞死であるフェロトーシスとの関係を検討した。
【結果】

OVK18および A2780の親株で鉄キレート剤である Def
eroxam
i
n
eはシスプラチンによる細胞死を抑
制した。次にフニロトーシスの指標である過酸化脂質を標識する Li
pe
r
f
l
uoを用いて解析したところ、

OVK18および A2780ではシスプラチンにより過酸化脂質が増加するが、耐性株である OVK18c
i
sおよ
び A2780c
i
sではシスプラチンによる過酸化脂質の増加がみられなかった。さらに、 OVK18ci
sの Fdxl
の発現を si
R
NAで抑制したところ、シスプラチンにより過酸化脂質が増加し細胞死も充進した。
卵巣がん患者検体用いた免疫組織化学染色では、プラチナ製剤感受性卵巣がんに比べてプラチナ製剤
耐性卵巣がんで Fdxlの発現が高い傾向にあった。
次に Fdxlの機能解祈を行うために、 OVK18および OVK18c
i
sにおける Fdxlの細胞内局在を免疫
蛍光染色法で解析したところ、 Fdxlは OVK18に比べて OVK18c
i
sで発現が充進し主にミトコンドリ
アに局在していた。そこで、シスプラチンによって誘導されるフェロトーシスとミトコンドリア機能と
の関連を検討するため、シスプラチンによるミトコンドリア膜電位の変化を解析したところ、 OVK18
と A2780 ともにシスプラチンによりミトコンドリア膜電位が上昇していた。さらに電子伝達系阻害剤
である Ro
t
enoneでミトコンドリア膜電位を抑制したところ、 OVK18とA2780ともにシスプラチンに
よるフェロトーシスが抑制さた。これらのことからシスプラチンはミトコンドリアの膜電位を上昇させ
ることによりフェロトーシスを誘導していることが示唆された。

また、 OVK18c
i
sおよび A2780c
i
sではシスプラチンによるミトコンドリア膜電位の上昇が抑制され
ており、 OVK18c
i
sで Fdxlの発現を抑制することにより、シスプラチンによるミトコンドリア膜電位
の上昇が確認された。さらに Fdxlの発現抑制により上昇したミトコンドリア膜電位を Ro
t
enoneで抑
制すると、フニロトーシスの誘導が減弱した。これらのことから、 Fdxl はシスプラチンによるミトコ
ンドリア膜電位の上昇を抑制することで、フェロトーシスを抑制することが示唆された。
【考察】
シスプラチンはフェロトーシスを誘導することが近年報告されているが、本研究はシスプラチンによ
りフェロトーシスが誘導されることを確認し、さらに、シスプラチンはミトコンドリアの膜電位を上昇
させることによりフェロトーシスを誘導していることを示した。シスプラチン耐性卵巣がん細胞では

Fdxlが高発現しており、 Fdxlはシスプラチンによって誘導されるミトコンドリア膜電位上昇の抑制に
よりフェロトーシスを抑制することで、シスプラチンに対する耐性獲得に寄与している可能性が示され


今後、 Fdxlがシスプラチンによるミトコンドリアの膜電位上昇を抑制する詳細な分子機構の解明や、
シスプラチン耐性卵巣がんで Fdxlの発現が上昇する分子機構を明らかにすることが重要であると考え
られる。。
【結論】
本研究は Fdxlがシスプラチンによるミトコンドリア膜電位の上昇を抑制することで、フェロトーシ
スを抑制しシスプラチン耐性化に関与することを示した。この知見はシスプラチンンの体制獲得の一
つの機序をしめしたもので、シスプラチン耐性克服のための基礎情報となりうるものであり、重要
な貢献をした価値ある研究であると認める。よって、本研究者は、博士(医学)の学位を得る資格
があると認める。

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