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大学・研究所にある論文を検索できる 「高速回転及び高ヘリカルピッチを用いた超高速CT 撮影によるモーションアーチファクトの低減に関する検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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高速回転及び高ヘリカルピッチを用いた超高速CT 撮影によるモーションアーチファクトの低減に関する検討

高柳, ともこ 東京大学 DOI:10.15083/0002004991

2022.06.22

概要

【背景】
CT 撮影法にはヘリカル撮影と非ヘリカル撮影がある。従来の非ヘリカル撮影では、ある一定の範囲を撮影するためには寝台を固定した状態において 1 回転で投影データ収集を行い、撮影間休止時間のうちに寝台を移動させ、また固定した状態で投影データ収集を行うということを繰り返さなければならず、長い検査時間を要した。そこで、検査時間を短縮できるヘリカル撮影方式が開発され、実用化された。これは連続回転で投影データ収集をしながら寝台を Z 軸方向に一定速度で移動させる方法である。さらに、複数断面を同時に撮影できるマルチスライス CT 装置が開発され、現在広く用いられている。検出器がチャネル方向だけでなく、Z 軸方向にも多数配置され多列化されている。この多列検出器を用いてヘリカル撮影を行うことで、撮影の高速化が可能となった。X 線管の回転速度を上げることによっても、撮影の高速化が進められてきた。撮影時に設定されるビーム幅に対する X 線管の 1 回転中の寝台移動距離がヘリカルピッチの定義である。ヘリカルピッチを大きくすると短時間に広範囲を撮影できる。今回、撮影時間のさらなる短縮を目的として、ワイドカバレッジ、高速回転及び高ヘリカルピッチを用いた新世代 CT 装置における超高速撮影法が新たに開発された。この超高速撮影法により、モーションアーチファクト低減効果がどの程度得られるかについて検討した。

(1) 動態ファントムを用いてのモーションアーチファクトの比較
【目的】
同一メーカーの従来型CT 装置及び超高速撮影が可能な新型 CT 装置を用いて動態ファントムを撮影し、モーションアーチファクトの程度を比較することで、モーションアーチファクト低減における超高速撮影の有用性について検討することが目的である。

【方法】
鉛直方向に一定の振動数及び振幅で動くファントムを用いた。異なる濃度の造影剤(120 kvp 撮像で 40、130、250、520 HU)を充填した異なる直径(2、8、18 mm)のシリンダーをファントムにセットした。振動数は 10 bpm、50 bpm、70 bpm、振幅は 5 mm、10 mm、20 mm として、これらの振動数・振幅の組み合わせ合計 9 通りの設定で、従来型 CT 装置(ビーム幅, 40 mm; ヘリカルピッチ, 1.38; X 線管回転速度, 0.4 秒/回転)と新型 CT装置(ビーム幅, 80 mm; ヘリカルピッチ, 1.53; X 線管回転速度, 0.28 秒/回転)を用いて 20 回ずつ撮影した。2 名の読影者が各 CT 値、直径の対象におけるモーションアーチファクトに着目して 5 点法にて視覚評価を行った。評価者間の一致度は Cohen’s κ係数で検定した。両 CT 装置間のスコアの比較は Wilcoxon の順位和検定をし、P < 0.05 を統計学的有意とした。

【結果】
評価者間の主観的評価の一致度は、ファントムの振動の各設定でほぼ完全な一致を示した(κ値 = 0.94–1.00)。振動数 10 bpm における振幅 20 mm(P = 0.012-0.030)、振動数50 bpm における振幅 5 mm(P < 0.001)、振動数 50 bpm における振幅 10 mm(P < 0.001)、振動数 70 bpm における振幅 5 mm(P < 0.001)と振動数 70 bpm における振幅 10 mm(P < 0.001)の設定時に新型 CT 装置におけるモーションアーチファクトスコアが有意に小さかった。その他の振動数・振幅の設定時には有意差を認めなかった。

【結論】
新型 CT 装置における超高速撮影は従来型 CT 装置を用いた撮影に比べ被写体の動きによるモーションアーチファクトの低減効果が優れている。振動数 10 bpm かつ振幅 20 mm の設定は臨床現場での自然呼吸運動に近く、振動数 50 bpm や 70 bpm における振幅 5 mm と10 mm の設定は心拍動に比較的近い。従って、超高速撮影法を用いることで臨床での呼吸や心拍動によるモーションアーチファクトのより大きな低減効果が期待できる。

(2) 意識障害により呼吸止め不可能な救急外来患者に対する全身 CT 撮影でのモーションアーチファクトの比較
【目的】
意識障害により呼吸止め不可能な救急外来患者に対して、従来型 CT 装置及び超高速撮影が可能な新型 CT 装置を用いて全身 CT を撮影し、モーションアーチファクトの程度を比較することでモーションアーチファクト低減における超高速撮影の有用性について検討することが目的である。

【方法】
全身造影 CT が撮影された意識障害のある救急外来患者 60 名(従来型CT 装置群 30 名、新型 CT 装置群 30 名)を対象とした。両 CT 装置の撮影パラメータは(1)の検討と同様である。2 名の読影者が大動脈、肺野、横隔膜、肝、腎においてモーションアーチファクトに着目して 4 点法にて視覚評価を行った。評価者間の一致度は Cohen’s κ係数で検定した。両 CT 装置群間のスコアの比較は Wilcoxon の順位和検定をし、P < 0.05 を統計学的有意とした。

【結果】
評価者間の主観的評価の一致度は良好な一致(κ値 = 0.80–0.93)を示した。新型 CT 装置におけるモーションアーチファクトスコアが有意に小さかった部位は大動脈基部(P < 0.001)、下肺野(P = 0.011)、横隔膜(P = 0.005)、肝(P = 0.003)、腎(P = 0.019)であった。大動脈弓部、胸部下行大動脈、腹部大動脈、上肺野においては両群間に有意差を認めなかった。

【結論】
高速回転及び高ヘリカルピッチ、ワイドカバレッジを用いた新世代 CT 装置における超高速撮影法は、従来型 CT 装置を用いた撮影法に比べ、呼吸止め不可能な救急外来患者の CT 画像におけるモーションアーチファクトの低減効果が優れている。特に大動脈基部、下肺野、横隔膜において顕著なモーションアーチファクトの低減が認められた。従って、超高速撮影法は救急 CT 画像診断おいて有用であることが期待される。

(3) 時間感度プロファイル(time sensitivity profile : TSP)の測定
【目的】
TSP の測定により、回転速度、ヘリカルピッチ、ビーム幅が時間分解能にどの程度影響するかを検討することが本研究の目的である。

【方法】
インパルス信号として金属球を高速で撮影面と垂直方向に通過させて評価した。ファントムは落下法を用いて作製した。約 1.8m の高さから落下させた直径 11 mm の金属球がガントリーに対して垂直方向へ入射するよう調整した。回転速度やヘリカルピッチやビーム幅は以下のような様々な設定を用いた。従来型 CT 装置においては、X 線管の回転速度は 0.4 秒/回転、0.5 秒/回転、0.7 秒/回転、ヘリカルピッチは 0.51、0.99、1.38、ビーム幅は 4 cm に設定して撮影した。新型 CT 装置においては、X 線管の回転速度は 0.28 秒/回 転、0.5 秒/回転、0.7 秒/回転、ヘリカルピッチは 0.51、0.99、1.38、1.53、ビーム幅は 4 cm、8 cm に設定して撮影した。一部の再構成画像において、球の直径にほぼ等しい帯状の像が得られた。各々のスライス面で、帯内に収まる直径 4 mm の ROI でX 線管の回転中心付近の平均 CT 値を測定した。CT 値と対応する時間との関係から、各々の撮影条件の TSP を得てその半値幅を比較した。

【結果】
ビーム幅やヘリカルピッチを固定し回転速度のみを変化させると、新型CT 装置においても従来型 CT 装置においても回転速度が高い程、TSP はプラトーを有する形状であればプラトーを有したまま、プラトーの無い形状であればプラトーの無い形状のまま、その半値幅は狭くなった。ビーム幅や回転速度を固定してヘリカルピッチのみを変化させると、ヘリカルピッチによって TSP 上のプラトーの有無に大きな変化がみられた。回転速度やヘリカルピッチを固定し、ビーム幅を変化させても TSP の形状に変化はみられなかった。新型 CT 装置と従来型 CT 装置のそれぞれにおいて、(1)や(2)の検討で用いた回転速度、ヘリカルピッチ、ビーム幅を使用した場合、TSP の形状は両者ともプラトーを有する形状で、新型 CT 装置における TSP の半値幅の方が小さかった。

【結論】
回転速度が高くなる程、TSP の半値幅が狭くなり時間分解能が向上した。ヘリカルピッチの変更により TSP 上のプラトーの有無に大きな変化がみられたが、これはヘリカルピッチの変更に伴い検出器列の重み付けが変化するためと考えられる。なお、ビーム幅の違いは時間分解能に概ね影響を与えなかった。

【考察】
本研究により高速回転及び高ヘリカルピッチを用いた超高速撮影法の方が従来の撮影法と比べて、モーションアーチファクト低減効果は優れていることが示された。特に心拍 動、呼吸運動によるアーチファクトにより有用であった。(2)の臨床研究で用いられた従来型 CT 装置の回転速度は 0.4 秒/回転、ヘリカルピッチは 1.38、新型 CT 装置の回転速度は 0.28 秒/回転、ヘリカルピッチは 1.53 であった。TSP の測定実験結果から両者の時間分解能の違いは主に回転速度に起因するものと考えられる。一方、ビーム幅の時間分解能への影響は小さい。しかし、新型 CT 装置の高ヘリカルピッチ、ワイドカバレッジは総撮影時間の短縮には寄与している。今回の検討によれば、回転速度が同じであれば、ヘリカルピッチが 1.38 と 1.53 ではほとんど時間分解能が同じであった。一方、ヘリカルピッチを上げることでより強いヘリカルアーチファクトが生じる恐れがあることが知られている。従って、ヘリカルアーチファクトを抑えるため、非常に重症なケースを除き、あえてヘリカルピッチを 1.53 にせず、1.38 で撮影する方がよりよい画質を得ることができるかもしれない。今後症例ごとに適したパラメータの設定を検討することが望まれる。

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