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大学・研究所にある論文を検索できる 「経口バルガンシクロビル治療後の症候性先天性サイトメガロウイルス患児における神経予後不良の予測因子」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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経口バルガンシクロビル治療後の症候性先天性サイトメガロウイルス患児における神経予後不良の予測因子

Fukushima, Sachiyo 神戸大学

2021.03.25

概要

【緒言】
先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染は、非遺伝性疾患の中で難聴や発達障害を引き起こす最大の原因である。特に、出生時から症状を呈する症候性先天性 CMV 感染児は、約 70-90%の確率で重度発達障害、てんかん、聴覚障害といった重度の神経学的後遺症を有する。症候性先天性 CMV 感染児の神経学的後遺症と関連する予後予測因子について、臨床研究が散見される。出生時の頭部画像異常または小頭症が、聴覚障害、知的障害、または視覚障害と有意に関連があるとの報告や、低出生体重児・小頭症・頭部画像異常・播種性血管内凝固は重度後遺症と死亡に関連するとの報告がある。このように未治療の症候性先天性 CMV 感染児において、評価時期や方法は様々であるが、小頭症と頭部画像異常は神経学的後遺症の発症に関連する新生児因子である可能性が高いと考えられる。

近年、症候性先天性 CMV 感染児は、新生児期にガンシクロビル(GCV)または経口バルガンシクロビル(VGCV)による抗ウイルス治療を行うことで、聴覚障害および神経発達障害の改善があることが明らかになってきた。

そこで、本研究は、経口 VGCV 治療後の症候性先天性 CMV 感染児において、修正 18ヶ月間時の精神神経発達を前向きに評価し、後遺症発生率、発達指数(DQ)<70 と関連する出生時の症状を同定することを目的とした。

【方法】
2009 年から 2018 年の間に神戸大学医学部附属病院で先天性 CMV 感染症の診断・抗ウイルス薬治療を行った。先天性 CMV 感染の診断は、生後 3 週間以内に採取した液体尿を用いて real time PCR を行い、尿 1ml 当たり 3.0×103copies 以上の CMV-DNAを検出した場合、先天性感染ありとした。

先天性感染児のうち、出生時に小頭症、肝機能障害、血小板減少、頭部画像異 常、眼合併症、Auditory brainstem response(ABR)異常のいずれか一つの所見を認めた児を症候性感染とした。症候性感染児は 6 週間、または 6 か月の経口 VGCV 治療を行った。治療を行った症候性感染児のうち修正 18 か月までフォローできた児について精神神経発達を評価した。正常発達、片側難聴または DQ70-79 を有する軽度後遺症、両側難聴、てんかん、DQ<70 の重度障害またはそれらの複数の後遺症のある重度後遺症に分類した。さらに修正 18 か月時の DQ で、DQ<70 群、DQ≧70 群に分け、予後と関連する周産期リスク因子を感度、特異度、Youden 指数を用いて検討した。本研究は倫理委員会の承認と患児の両親の同意のもと行った。

【結果】
9 年間で計 72 人の先天性 CMV 感染児を診断した。そのうち症候性感染は 27 人で、治療を受けなかった 2 人と GCV にて治療を行った 1 人を除いて 24 人に経口 VGCV 治療を行った。治療を受けた症候性 CMV 感染児のうち、21 人が修正 18 か月に達した。 21 人の出生時の患者背景は、在胎週数 36 週(31-40 週)、出生体重 2192g(940-3312g)、出生身長 44.5cm(35.0-51.0cm)、出生頭囲31.5cm(25.5-34.5cm)であった (値は中央値、範囲)。出生時の症候は、頭部画像異常 10 人(90%)、ABR 異常 17 人(81%)、血小板減少 11 人(52%)、SGA9 人(43%)、小頭症 8 人(38%)、肝機能障害 8 人 (38%)、眼合併症 6 人(28%)であった。経口 VGCV 内服治療開始日齢は中央値 13 日で、最も高頻度に発生した副作用は好中球減少(7 人、33%)であった。

修正 18 か月児の後遺症発症率は、後遺症なしが 6 人 (29%)、軽度後遺症が 4 人 (19%)、重度後遺症が 11 人(52%)であった。さらに DQ<70 群は 8 人、DQ≧70 は 12 人であった。総合 DQ (42 vs. 90, <0.01)、姿勢・運動 DQ (31 vs. 70, <0.01)、認知・適応 DQ (49 vs. 93, <0.01)、言語・社会 DQ (44 vs. 94, <0.01)であり、全ての領域で優位に低下を認めた。DQ <70 と関連する出生時の症状は、小頭症および/または SGA であった。

【考察】
本研究では、経口 VGCV 治療を行った症候性先天性 CMV 感染児の神経発達転帰と、修正 18 か月時の DQ <70 と関連する出生時の症状を検討した。経口 VGCV 治療後の症候性先天性 CMV 感染児の約 50%で重度後遺症を発症した。さらに、経口 VGCV 治療を行っても、出生時に小頭症および/または SGA を認めると、修正 18 か月時 DQ <70 と関連することが明らかになった。

CMV 母子感染の機序は、CMV の経胎盤感染で、胎児の様々な臓器に感染を来すと言われている。特に中枢神経への侵入は、さまざまな中枢神経細胞の広範囲に渡る感染をもたらし、中枢神経系の異常、脳容積の減少、および小頭症を引き起こす。さらに、胎盤への CMV 感染は、胎盤の無血管領域や線維症の進行、胎盤の機能不全により胎児の成長不良をもたらすことが示されている。CMV に感染した胎盤は胎児の体重増加、腹囲または身長の発達に影響を与える報告もあり、CMV に感染した胎盤は胎児の成長と密接に関連していることを示唆している。したがって、CMV 感染による胎児期の成長不良を来した症候性先天性 CMV 感染児は、出生後に抗ウイルス治療が行われた場合でも、神経発達が悪い可能性がある。本研究では DQ<70 群で小頭症または SGA と関連を認めた結果は、この理論を支持するものと考えられる。

【結論】
経口 VGCV 治療を行った症候性先天性 CMV 感染児のコホートでは、修正 18 ヶ月時の重度後遺症の発生率は約 50%であった。SGA と小頭症が VGCV 治療を行っても修正 18 か月時の DQ<70 となるリスク因子であった。

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