頭頸部MRIの脂肪抑制と動きに対する頑健性に関する研究
概要
頭頸部癌は年間2.2万人が罹患する疾患であり,MRIはその治療戦略の決定に大きな役割を占めている.しかしながら,頭頸部MRIでは局所磁場不均一による脂肪抑制不良や,体動によるモーションアーチファクトにより評価困難となる事がある.そこで,本研究は高精度な脂肪抑制と動きへの頑健性を兼ね備えたシークエンスを確立する事を目的とした.
本論文は「第1章序論」,「第2章脂肪抑制T2強調画像のためのmodified-Dixon法-PROPELLER法併用シークエンス」,「第3章脂肪抑制T1強調画像のための低Refocusing Flip Angleを用いたmodified-Dixon法-PROPELLER法併用シークエンス」,「第4章総括」より構成される.第1章では,頭頸部癌におけるMRIの役割とその課題について解説した.第2章では,月旨肪抑制T2強調画像の取得において,新しいmodified-Dixon法-PROPELLER法併用シークエンスと従来のmodified-Dixon法単独シークエンスを患者50名において比較し,併用シークエンスが水脂肪分離エラーのわずかな増加と引き換えに,モーションアーチファクトを著しく改善し,包括的な画質を向上する事を実証した.第3章では,T2強調画像のみを前提に作成されているmodified-Dixon法-PROPELLER法併用シークエンスに低refocusing flip angleを採用する事で,T1強調画像を取得する手法を考案した.造影剤投与後の患者50名において,従来のmodified-Dixon法単独シークエンスと比較し,ガドリエウム造影剤による増強効果が評価可能である事を実証した.また,水脂肪分離エラーのわずかな増加と引き換えに,モーションアーチファクトが著しく改善し,包括的な画質も向上する事を確認した.
本研究では,modified-Dixon法-PROPELLER法併用シークエンスが,頭頸部MRIにおいて有用なシークエンスである事を明らかにした。低refocusing flip angleを採用する事で,取得困難とされてきた脂肪抑制T1強調画像を取得可能な手法を確立した.これにより,モーションアーチファクトによる画質不良で評価困難となる事が多い認知機能の低下した高齢者においても,正確なMRI診断が可能となる.