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大学・研究所にある論文を検索できる 「固体触媒を活用した高光学純度の軸不斉ビアリール類不斉合成法の開発」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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固体触媒を活用した高光学純度の軸不斉ビアリール類不斉合成法の開発

笠間, 建吾 大阪大学

2022.03.24

概要

軸不斉をもつ光学的に純粋なビアリール構造は、有機分子触媒、遷移金属触媒、天然有機化合物、医薬品候補化合物など様々な分野に遍在する骨格である。同骨格は、sp3不斉中心にはない3次元的な広がりをもち、新たなケミカルスペースを提供できる。従って、今後充実すべき創薬候補化合物群として期待され、その光学純粋な軸不斉骨格を得る手法の開発が切望される。しかし、真に光学的に純粋な軸不斉ビアリール化合物の合成法は、中心不斉に比べて未だ発展途上である。近年、有機分子触媒を用いた不斉合成反応は環境調和の観点から注目を集めているが、触媒そのものが複雑化してきた。特に、回収・再利用が困難な均一系触媒において、触媒合成も合わせた全体的なコストは増大している。一方、固体触媒は、ろ過により回収でき、繰り返し利用もできることから、反応全体としての環境負荷を低減することが可能である。

 このような背景下、著者は、固体触媒を用いて真に光学的に純粋な軸不斉ビアリール化合物を得る不斉合成法を開発すれば、先述の課題を一挙に解決できると考えた。つまり、再利用可能な不均一系触媒を用いて、フェノール性水酸基をもつ化合物からビアリール類を簡便に合成し、さらに、固体触媒である固定化リパーゼによって光学純粋な軸不斉ビアリール化合物を合成する。これにより、環境に調和しつつ、軸不斉のもたらす新たなケミカルスペースの拡充に大きく寄与できる。そこで著者は、固体触媒を活用した高光学純度の軸不斉ビアリール類の不斉合成法の開発を目的に本研究に取り組み、以下の成果を得た。

 初めに、固定化加水分解酵素リパーゼを用いる高光学純度の軸不斉ビアリール類の不斉合成に取り組み、リパーゼ触媒エステル化反応の塩基による加速効果を見出した。固定化加水分解酵素リパーゼを触媒とした、従来のエステル化を経る速度論的光学分割(Kinetic Resolution、以下KRと略す)は、2, 2’-dihydroxy-1, 1’-biaryl(BINOL)類を優れたエナンチオ選択性で光学分割できるが、非常に長い反応時間(3~14日)を必要とした。また、これらの基質適用範囲は、C2対称性のビアリール類に限定され、C1対称性のビアリール類のKRは報告されていなかった。そこで著者は、通常、リパーゼ触媒エステル化反応における律速段階であるacyl-enzyme中間体に対する、フェノール性水酸基の求核性を高めることができれば、酵素反応を加速させることができると考えた。この仮説に基づき各種塩基を検討した結果、トルエン中における、Pseudomonas sp.リパーゼ(Toyobo LIP301)によるエステル化反応は、Na2CO3によって加速されることを見出した。このNa2CO3による加速効果は、高いエナンチオ選択性を維持しつつ反応速度を格段に向上させた。さらに、基質適応範囲を拡張し、C1対称性ビアリール類に適応可能であることを明らかにした。続いて、Na2CO3による加速効果を用いて、軸不斉同一リパーゼによる両エナンチオマーの作り分けを開発した。リパーゼ触媒を用いて高い光学純度のビアリール化合物を高収率で得る手法として、分子の対称性を利用した非対称化法がある。このリパーゼ触媒不斉非対称化反応は、中心不斉では数多く報告されている。しかし、軸不斉に注目すると、σ-対称性のビアリールジエステルを加水分解して単一の光学活性なビアリール化合物を得る加水分解法のみ報告されており、対応するビアリールジオールのエステル化法は前例がなかった。そこで、前述のNa2CO3による加速効果を用いて、1, 1ʹ-biphenyl-2, 6-diol類のエステル化を検討した。最適酵素のBurkholderia cepaciaリパーゼ(Amano PS-IM)によるエステル化反応もBINOL類と同様に、Na2CO3によって加速された。この際、高いエナンチオ選択性も維持された。さらに、1, 1ʹ-biphenyl-2, 6-diol類から導いたジエステルに対し、同じリパーゼを用いて加水分解できることを確認した。これにより、両方のエナンチオマーを高収率かつ高い光学純度(>98% ee)で作り分けることに成功し、軸不斉ビアリール化合物においても、両エナンチオマーの作り分けが可能であることを実証した。

 次に、不均一系バナジウム触媒による脱水素型クロスカップリング反応とリパーゼによる不斉合成法を開発した。著者は、赤井らが開発した、多孔質材料であるメソポーラスシリカ(MPS)にオキソバナジウムを固定化した不均一系バナジウム触媒V-MPS4に注目した。これまでV-MPS4はredox neural反応の触媒としてのみ用いられており、酸化還元反応における触媒活性は不明であった。そこで、V-MPS4を触媒に、カップリング前駆体として3-ヒドロキシカルバゾール類と、求核剤として2-ナフトール類を1:1のモル比で用いるクロスカップリングを検討した。本反応は、酸素を再酸化剤にジクロロメタン中、室温という温和な条件でクロスカップリング反応が進行した。本反応は水を形式的な副生成物とした高い化学・位置選択性かつ高収率(最大98%収率)であるため、アトムエコノミーの観点からも非常に優れた反応である。反応機構の解析により、本反応は固体表面に担持されたバナジウムが酸素により再酸化され、触媒的に進行していることが示唆された。さらに、V-MPS4の再利用を検討し、環境調和性に優れた触媒であることを示した。

 V-MPS4は、リパーゼとの共存性に優れた触媒であることが赤井らによって報告されている。そこで、不均一系触媒V-MPS4によるクロスカップリング反応と、固定化加水分解酵素リパーゼを用いた軸不斉ビアリール化合物のKRを連続して行うone-pot化を検討した。この2つの固体触媒を用いたone-pot反応は、収率の面では改善の余地を残すものの、光学活性なビアリール化合物を非常に高い光学純度(98% ee)で得ることにも成功した。

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