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大学・研究所にある論文を検索できる 「Development of Sequence-Specific DNA Binders for the Therapy of Mitochondrial Diseases」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Development of Sequence-Specific DNA Binders for the Therapy of Mitochondrial Diseases

Hidaka, Takuya 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23034

2021.03.23

概要

ミトコンドリアは真核細胞における細胞内小器官の1つであり、特に細胞代謝において重要な機能を持つ。ミトコンドリア病は遺伝性の代謝疾患であり、核DNAあるいはミトコンドリアDNAの変異によるミトコンドリアの機能障害により引き起こされる。成人において約5000人に1人の割合で発症し、その多様な症状は患者のQuality of Lifeを著しく損なうが、根治的療法はいまだなく対症療法が中心である。成人患者の場合、その80%がミトコンドリアDNAの変異により引き起こされるとされており、その根本的治療のためには、細胞内の変異ミトコンドリアDNA量を減らす必要がある。これまで変異配列選択的にDNAを切断するようプログラムされた制限酵素や zinc fin
ger nuclease、transcription activator-like effector nuclease (TALEN)のようなヌクレアーゼをミトコンドリアに導入する手法が提案され、ミトコンドリア病の遺伝子治療の可能性を提示したが、発現ベクターのゲノムへのランダムな組換えやウイルスベクターの使用が課題となっている。そこで、塩基配列選択的DNA結合能を有するピロールイミダゾールポリアミドを用いてDNAの転写及び複製を制御することで、化学的アプローチによるミトコンドリア病の根本的治療の可能性を検討した。

まず、ピロールイミダゾールポリアミドによるミトコンドリアDNAの配列認識を可能にするため、ピロールイミダゾールポリアミドにアルギニンとシクロヘキシルアラニンからなるミトコンドリア透過ペプチドを導入したMITO–PIPを開発した。アルギニンのみを導入したものでは核局在性が見られた一方、透過ペプチドを導入したMITO-PIPはミトコンドリア集積性を示した。またミトコンドリアDNAにあるLight strand promoter内のmitochondrial transcription factor A (TFAM)結合サイトを標的としたMITO-PIPは、HeLa細胞において下流遺伝子(ND6)の発現を抑制し、DNA融解温度測定による結合能評価では配列選択的DNA結合能が認められたことから、培養細胞内におけるMITO-PIPの配列選択的ミトコンドリアDNA結合とそれによる転写制御が可能であることが示唆された。

次に、ミトコンドリアDNAにおけるグアニンからアデニンへの一塩基変異について変異ミトコンドリアDNA選択的な複製阻害を実現するため、アデニン塩基に対し高い反応選択性をもつDNAアルキル化剤、クロランブシルをMITO-PIPに導入した。HeLa S3細胞にて同定された変異(m.8950G>A)に隣接する配列に結合するよう設計されたクロランブシル導入MITO-PIPは、新たに確立されたキャピラリー電気泳動によるin vitro評価において、標的のアデニン変異を選択的にアルキル化することが明らかとなった。この化合物をHeLa S3細胞に処理し、定量PCR法により正常および変異ミトコンドリアDNAの定量を行ったところ、変異ミトコンドリアDNAの減少が濃度依存的に認められた。これは従来分子生物学的アプローチでしか実現できなかったミトコンドリア病の遺伝子治療に対して化学的アプローチを提供し、より安全な遺伝子治療につながると期待される。

以上の研究ではミトコンドリアDNAの変異に着目していたが、核DNAの変異もミトコンドリア病治療における重要な標的である。これまでピロールイミダゾールポリアミドは、核内遺伝子の発現を制御する人工遺伝子スイッチとして応用されてきた。しかしその核内輸送効率は、さまざまな因子(例えば分子サイズや細胞種、標的となるDNA配列など)に影響され、in vitro評価で効果が見られた化合物でも、低い取込み効率により細胞評価では効果が得られない可能性がある。そこで、ピロールイミダゾールポリアミドの細胞内取込みおよび核内輸送を促進するトリアルギニンベクターを同定した。まずSOX2結合配列を標的としたピロールイミダゾールポリアミドを例として、トリアルギニンベクターにより細胞取込みおよび核内輸送が促進されることをフローサイトメトリーおよび蛍光観察により示した。またトリアルギニンベクターの持つ正電荷により、負電荷をもつDNAと非選択的に相互作用する可能性が考えられたが、異なる配列を標的とするコントロール化合物を用いたゲルシフトアッセイにより、トリアルギニンベクターはピロールイミダゾールポリアミドの配列選択性を損なわないことを示した。さらに、下流遺伝子の転写抑制に必要な化合物濃度がトリアルギニンベクターの導入により格段に低減できることを示し、細胞取込みの促進により細胞内機能が強化されることを明らかとした。また、これまで輸送効率の問題により実現できていなかったがん遺伝子HER2の発現抑制を、トリアルギニン導入ピロールイミダゾールポリアミドを用いてAP-2転写因子のDNA結合を阻害することにより達成した。このベクターは非常にシンプルな構造を持ち、ピロールイミダゾールポリアミドに簡単に導入できることから、多様な細胞応用を可能にすると期待される。

以上の研究はミトコンドリア DNA および核 DNA の人工的な転写・複製制御を実現し、ミトコンドリア病治療に対し新たな化学的アプローチを提供するものと考えられる。

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