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書き出し

ロングリードシーケンサーMinIONを用いたゲノム編集マウス遺伝型解析プラットフォームの開発

池田, 祥久 筑波大学 DOI:10.15068/0002008052

2023.09.04

概要



波 大



博士(医学)学位論文

ロングリードシーケンサーMinION を
用いたゲノム編集マウス遺伝型
解析プラットフォームの開発

2022

筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科

池田 祥久

原典論文
この学位論文は以下の論文を原典とする。
**********************************
DAJIN enables multiplex genotyping to simultaneously validate intended and unintended
target genome editing outcomes.
Akihiro Kuno*, Yoshihisa Ikeda*, Shinya Ayabe*, Kanako Kato, Kotaro Sakamoto, Sayaka
R. Suzuki, Kento Morimoto, Arata Wakimoto, Natsuki Mikami, Miyuki Ishida, Natsumi Iki,
Yuko Hamada, Megumi Takemura, Yoko Daitoku, Yoko Tanimoto, Tra Thi Huong Dinh,
Kazuya Murata, Michito Hamada, Masafumi Muratani, Atsushi Yoshiki, Fumihiro Sugiyama,
Satoru Takahashi, Seiya Mizuno.
PLOS Biology, January 18, 2022; 20(1): e3001507. doi: 10.1371/journal.pbio.3001507

*: These authors contributed equally to this work
**********************************

原典論文の再利用(Re-use)について
本学位論文では、PLOS Biology, January 18, 2022; 20(1): e3001507.
doi: 10.1371/journal.pbio.3001507 に掲載された論文の内容を、Creative Commons
Attribution 4.0 International(CC BY)license にしたがって再利用している。

2

目次
1. 背景................................................................................................................................... 6
2. 目的................................................................................................................................. 10
3. 方法................................................................................................................................. 11
3-1. マウス ...................................................................................................................... 11
3-2. マウス初期胚のゲノム編集 ...................................................................................... 11
3-3. ナノポアシーケンスのためのライブラリ調製とシーケンス .................................... 12
3-4. ソフトウェア解析 .................................................................................................... 13
3-5. 従来の遺伝型解析の手法 (PCR、PCR-RFLP、サンガーシーケンス) ..................... 17
3-6. ショートリード NGS ............................................................................................... 18
3-7. TIDER 解析 ............................................................................................................... 18
3-8. 免疫染色 ................................................................................................................... 19
4. 結果................................................................................................................................. 20
4-1. ゲノム編集マウス遺伝型解析プラットフォームの考案 ........................................... 20
4-2. ソフトウェア開発 .................................................................................................... 21
4-3. 開発したソフトウェアを用いた検証実験 ................................................................. 24
4-3-1. flox マウスの遺伝型解析 ................................................................................... 24
4-3-1-1. Cables2 flox マウスの遺伝型解析 ............................................................ 24
4-3-1-2. Exoc7 flox マウスの遺伝型解析 ............................................................... 26
4-3-1-3. Usp46 flox マウスの遺伝型解析 ............................................................... 28
3

4-3-2. KO マウスの遺伝型解析 ..................................................................................... 30
4-3-2-1. Prmd14 KO マウスの遺伝型解析 ............................................................... 30
4-3-2-2. Ddx4 KO マウスの遺伝型解析 ................................................................... 32
4-3-2-3. Stx2 KO マウスの遺伝型解析 .................................................................... 33
4-3-3. PM マウスの遺伝型解析 ..................................................................................... 34
5. 考察................................................................................................................................. 38
6. 結語................................................................................................................................. 44
7. 要約図 ............................................................................................................................. 45
8. 参考文献 ......................................................................................................................... 47
9. 謝辞................................................................................................................................. 53
10. 図表............................................................................................................................... 54

4

略語表
略語

名称・用語

BC

Barcode

bp

base pair

ds

double strand

Gb

Giga base

gRNA

guide RNA

HDR

Homology-directed repair

Kb

kilo base pair

KO

Knock out

LAR

Large rearrangement

NGS

Next generation sequencing

ONT

Oxford Nanopore Technologie

PM

Point mutation

ss

single strand

UMI

Unique Molecular Identifiers

WT

Wild-type

5

1. 背景
遺伝子改変技術は、細胞や動物の生体内において、特定の遺伝子がどのような機能を有
しているかを研究するために利用されており、生命科学や医学の分野においてなくてはなら
ない存在である。細胞や動物の特定の遺伝子を改変する技術として、ES 細胞を介した遺伝
子ターゲティング法が長年用いられてきた(1, 2)。遺伝子ターゲティング法は、ES 細胞の標
的ゲノム部位(オンターゲットサイト)に、相同組み換えを利用して内在性遺伝子の破壊や外
来遺伝子の挿入を誘導する手法である(3, 4, 5, 6)。遺伝子改変が行われた細胞や動物を評価
することにより、破壊された遺伝子や挿入された外来遺伝子の機能を明らかにすることが可
能である。しかし、この遺伝子改変技術は ES 細胞が必要なため、マウスなどの ES 細胞の
樹立が可能な一部の動物種に使用が限定されていた。
近年、遺伝子ターゲティング法に代わる新たな遺伝子改変技術として、CRISPR/Cas な
どのゲノム編集技術が登場した(7, 8)。ゲノム編集技術は ES 細胞を介さずに特定の遺伝子
を改変できることから、あらゆる動物種の遺伝子改変を可能にした(9, 10, 11)。ゲノム編集
ではオンターゲットサイトに意図した変異を誘導することができる。現在までに、Cas9 や
FokI などのヌクレアーゼと Cas9 に融合したデアミナーゼが、それぞれ DNA 二本鎖切断の
導入と塩基編集に使用されている(12, 13, 14)。ゲノム編集による遺伝子改変動物および細
胞株の作製は容易となったが、ゲノム編集の根底にある DNA 修復機構は宿主細胞がもつ内
因性因子によって制御されている(15)。したがって、意図するゲノム編集変異だけをオンタ
ーゲットサイトに誘導することは難しく、逆位・欠損・内因性および外因性の DNA 挿入な
ど、さまざまな意図しないゲノム編集変異も誘導される(16, 17, 18)。つまり、ゲノム編集を
施した細胞や動物の集団には、意図する変異アレルや野生型(wild-type、以下 WT)アレルだ
けでなく、さまざまな意図しない変異アレルも存在する。オンターゲットサイトに誘導され
る意図しない変異の多くは、数十塩基対 (base pair、以下 bp)の挿入および欠損(insertion and
deletion、以下 indel)変異であり(19, 20, 21)、数百 bp 以上の indel 変異が生じるのは非常に
6

稀だと報告されていた(22, 23, 24)。しかし最近、数千塩基対(kilo base pair、以下 kb)単位の
大きな欠損、重複や逆位などの複雑なゲノム構造変化がオンターゲットサイトに生じること
が示された(25)。さらに動物初期胚のゲノム編集では、卵割が進んだ発生ステージでもゲノ
ム編集が起こるため、誕生した動物が 3 つ以上の変異アレルを有するモザイク個体である
ことが少なくない(26)。オンターゲットサイトにおけるゲノム編集結果の正確な評価は、フ
ァウンダー(F0)動物とその子孫の効率的な産出に欠かせない。しかし、これら意図しない変
異とモザイク現象は、遺伝型解析を複雑化させ、ゲノム編集結果の正確な評価の障害となり
うる。一般的にゲノム編集動物の遺伝型解析は、PCR やサンガーシーケンスなどの解析手
法により、ゲノム編集変異配列を決定する。また、3 つ以上の変異アレルを有するモザイク
個体の場合、PCR 産物のサブクローニングを行い、各アレルの変異配列を決定する。しか
し、PCR 産物のサブクローニングにて各アレルの変異配列を決定することは非常に手間で
ある。また、数百 bp のオンターゲットサイトだけに着目する一般的な手法では、数 kb に及
ぶ広範囲のゲノム編集結果を見逃す危険性がある(27, 28)。
ノックアウト(Knock out、以下 KO)マウスは遺伝子機能解析と疾患メカニズム解明に有
用である。しかし、多くの遺伝子は胚発生および生命維持に必須なため、それらの KO マウ
スは致死を示す。この致死を回避するために条件付きノックアウト(conditional KO)戦略が
用いられる。この戦略で重要となるモデルが flox マウスである。flox マウスは染色体上から
欠損させたい機能的に重要なエクソン(標的エクソンと定義)の上下流のイントロンにそれ
ぞれ LoxP 配列を挿入することにより作出される。flox マウスは Cre リコンビナーゼを発現
するドライバーマウスと交配することで、Cre リコンビナーゼが LoxP 配列を認識し、標的
エクソンのみを染色体から除去する。この戦略により、Cre リコンビナーゼが発現する細胞
でのみ標的遺伝子の機能的不活性化がもたらされるため、致死を回避した in vivo 遺伝子機
能評価が可能となる。KO やポイントミューテーション(Point mutation、以下 PM)などの他
のモデルと同様に、CRISPR/Cas は flox マウスの作製を容易とした(29, 30, 31, 32, 33)。flox
7

マウス作製で最も重要なプロセスのひとつは、同一アレル上に 2 つの LoxP が挿入された
cis 型変異アレルを有するマウスを選択することである。flox マウスを作製するためのゲノ
ム編集では、意図する変異である cis 型変異だけではなく、意図しない変異である trans 型
変異も誘導される。従来の解析手法では、同一アレル上の 2 箇所に LoxP が挿入された cis
型変異と、別々のアレル上にそれぞれ 1 つの LoxP が挿入された trans 型変異を判別するこ
とが容易でない(34, 35)。それは、2 つの LoxP が標的エクソンを挟む形で数 kb 離れた領域
に挿入されるケースが多く、長鎖 1 分子解析が必須なためである。ショートリード次世代シ
ークエンス(Next Generation Sequencing、以下 NGS)では原理的に cis/trans を判別できな
いため、各個体ごとのサブクローニング等の大変に手間のかかる作業が必要であった。この
課題は、flox アレル特定のための大きな障害となっている。
近年、オックスフォード・ナノポアテクノロジーズ(Oxford Nanopore Technologies、以
下 ONT)社からナノポアシーケンス技術を用いたロングリードシーケンサー、製品名 MinION
がリリースされ、長鎖 DNA NGS 分野に大きな技術革新がもたらされた。MinION は 2014
年に初期ユーザーへリリースされた後、2015 年に正式に商品化された(36)。ナノポアシー
ケンサーは、DNA 分子が膜上に配置されたタンパク質微細孔(ナノポア)を通過する際の電流
の変化でその塩基情報を決定する。DNA 分子そのものから直接塩基配列を決定するため、
事実上シーケンスリードの限界長が存在しない。したがって、ナノポアシーケンスは理想的
なロングリードシーケンス技術だと言える。ナノポアを含むパーツであるフローセルは日々
改良が進められており、開発初期のフローセル_Ver.R6 のスループット: 約 1 ギガベース
(Giga base、以下 Gb)、平均リード長: 約 1 kb、最大リード長: 約 100 kb、精度: 約 70%に
対し、2017 年にリリースされたフローセル_Ver.R9.4 はスループット: 10~20 Gb、平均リ
ード長: 約 24kb、最大リード長: 約 2,300 kb、精度: 90%以上を達成した(37)。MinION は
PacBio のような従来のロングリードシーケンサーと比較して、非常に小さなデバイスであ
り、ランニングコストも低いため、多くの施設で容易に導入可能である。更にライブラリ調
8

製もシンプルで簡易な作業性も特徴の 1 つである。

9

2. 目的
ゲノム編集により作出された F0 マウスの従来の遺伝型解析の手法は、意図しない変異
アレルの見逃し・誤った遺伝型の動物の選択・段階的な解析ステップによる作業の煩雑化な
どの諸問題を抱えている。私はロングリードシーケンスがこれらの課題を克服すると考えた。
そこで、低ランニングコストかつ簡易な作業性を特徴とする MinION によるロングリードシ
ーケンス技術を軸とするゲノム編集マウスの新しい遺伝型解析プラットフォームを開発す
ることを目的として本研究を実施した。

10

3. 方法
3-1. マウス
ICR および C57BL/6J マウスは日本チャールス・リバー株式会社から入手した。
C57BL/6J-Tyrem2Utr マ ウ ス は 、 理 研 バ イ オ リ ソ ー ス 研 究 セ ン タ ー か ら 入 手 し た
(#RBRC06459)。マウスは SPF 条件下で室温 23.5±2.5℃、および湿度 52.5±12.5%に維持さ
れた部屋で、14 時間の明期: 10 時間の暗期のサイクルでプラスチック製のケージで飼育し
た。マウスは市販の餌 (MF ダイエット:オリエンタル酵母工業株式会社)とろ過水を与えた。
すべての動物実験は、筑波大学動物実験取扱い規程、文部科学省の研究機関等における動物
実験等の実施に関する基本指針および実験動物・動物実験に関わる法令やガイドラインに従
い実施された。

3-2. マウス初期胚のゲノム編集
PM マウスと KO マウスは、エレクトロポレーション法で作製した(38)。各変異を誘導
するための guide RNA(以下、gRNA)標的配列を表 1 に示す。gRNA は、GeneArt Precision
gRNA Synthesis Kit(Thermo Fisher Scientific) を 使 用 し て 合 成 お よ び 精 製 し 、 OptiMEM(Thermo Fisher Scientific)に溶解した。PM マウスのゲノム編集においては、表 2 に示
す 3 つの一本鎖(single strand、以下 ss)DNA ドナーを設計し、点変異を誘導した。これらの
ssDNA ドナーは Ultramer DNA オリゴとして、Integrated DNA Technologies にて合成され、
Opti-MEM に溶解した。PM マウスのゲノム編集においては、gRNA(5 ng/μL)と ssDNA (100
ng/μL)および GeneArt Platinum Cas9 ヌクレアーゼ(100 ng/μL; Thermo Fisher Scientific)の
混合物(以下、gRNA/ssDNA/Cas9 混合物)を調整した。KO マウスのゲノム編集においては、
2 つの gRNA(それぞれ 25 ng/μL)および GeneArt Platinum Cas9 ヌクレアーゼ(100 ng/μL;
11

Thermo Fisher Scientific)の混合物(以下、2 つの gRNA/Cas9 混合物)を調整した。
雌馬血清ゴナドトロピン PMSG(5 U)とヒト絨毛性ゴナドトロピン hCG (5 U)を 48 時間
間隔で C57BL/6J 雌マウスの腹腔内に投与し、過剰排卵を誘導した。次に未受精卵を卵管か
ら採取し、標準的なプロトコルに従って未受精卵と C57BL/6J 雄マウスの精子を用いて体外
受精を行った。 5 時間後、PM マウスのゲノム編集においては gRNA/ssDNA/Cas9 混合物、
KO マ ウ ス の ゲ ノ ム 編 集 に お い て は 2 つ の gRNA/Cas9 混 合 物 を 使 用 し 、 NEPA
21(NepaGene)を用いて、以前に報告された条件(39)でマウス受精卵にエレクトロポレーシ
ョンした。 2 細胞期に発生した胚は偽妊娠 ICR 雌マウスの卵管に移植した。flox マウスは、
マイクロインジェクション法で作製した(40)。表 1 に示す各 gRNA 標的配列は、gRNA と
Cas9 の両方の発現ユニットを持つ pX330-mC プラスミド(40)のエントリーサイトに挿入し
た。 ...

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