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Histiocytic and dendritic cell neoplasms: Reappraisal of a Japanese series based on t(14;18) and neoplastic PD-L1 expression

渡邊, かなえ 名古屋大学

2023.05.30

概要

主論文の要旨

Histiocytic and dendritic cell neoplasms: Reappraisal
of a Japanese series based on t(14;18) and neoplastic
PD-L1 expression
組織球及び樹状細胞腫瘍:t(14;18)と
neoplastic PD-L1発現についての臨床病理学的検討

名古屋大学大学院医学系研究科
高次医用科学講座

総合医学専攻

臓器病態診断学分野

(指導:加留部 謙之輔
渡邊 かなえ

教授)

【緒言】
Histocytic sarcoma(HS), Follicular dendritic cell sarcoma(FDCS)に代表される組織球及
び樹状細胞腫瘍(H/DC neoplasm)は、稀な血液リンパ球系悪性腫瘍であり、一般に進行
性で予後不良である。過去に、H/DC neoplasm は、一部の B 細胞性リンパ腫で認めら
れる t(14;18)転座やクローナルな免疫グロブリン遺伝子再構成(clonal IgH rearrangement)
が報告されてきた。しかし、腫瘍起源や B 細胞性リンパ腫との関連性など詳細不明な
点も多い。また、近年のがん治療に革命的効果をもたらした免疫チェックポイント阻
害剤の有効性について、H/DC neoplasm でも検討がなされつつあるものの、稀少疾患
のため研究報告が乏しいのが現状である。本研究の目的は、本邦の H/DC neoplasm に
ついて、臨床病理学的特徴を捉え、t(14;18)転座と IgH 再構成を解析し、腫瘍細胞の
PD-L1(neoplastic PD-L1[nPD-L1])発現の有無を検討することである。
【対象および方法】
1998~2014 年、当院と研究協力施設で診断した H/DC neoplasm 17 例を対象とした。
2017 年 WHO の診断基準に従って病理診断を再評価した。ホルマリン固定パラフィン
包埋検体を使用し、以下の免疫組織化学染色を行った(CD1a、CD3、CD4、CD20、CD21、
CD68、CD163、S-100、FDC、Langerin、Bcl2、PD-L1)。PD-L1 は 3 抗体(SP142, E1J2J,
28-8)を用い、全腫瘍細胞の 5%以上で陽性とした。t(14;18)転座の検討として IGH/BCL2
FISH を行い、IQ FISH プロトコール(DAKO)で SureFISH IGH DF probe (Agilent)と
SureFISHBCL2 DF(Agilent)で染色した。50 個の細胞核をカウントし 10%以上で陽性と
した。clonal IgH rearrangement は BIOMED2 法で FR3 領域を解析した。
【結果】
17 例の臨床的特徴を表 1・2 に示す。組織亜型は、HS 2 例、Interdigitating dendritic
cell sarcoma(IDCS)2 例、Langerhans cell sarcoma(LCS)1 例、Dendritic cell sarcoma(DCS)2
例、FDCS 10 例であった。男性 12 例、女性 5 例で、10 例は 60 歳以上であった。15 例
が Stage I/II の限局期であった。発生部位はリンパ節が 12 例であった。8 例で化学療
法が行われ、6 例で CHOP 療法行われた。治療効果は、無再発を含めた CR 10 例、PR
4 例、PD 2 例であった。6 例が死亡し 5 例が原病死であった。観察期間は 0.6~157 か
月であった。
図 1・2、表 3 に、組織学的所見と遺伝子解析結果を示す。FDCS では、細胞境界の
不明瞭な類円形~短紡錘形細胞が束状や花筵状に増殖していた(図 1-A)。免疫染色で
全例が CD21 あるいは FDC 陽性、3 例で S-100 蛋白陽性であった。HS では、豊富な好
酸性細胞質を有する大型異型細胞の密な増殖を認め、核分裂像が散見された(図 1-B)。
免疫染色で CD68 と CD163 陽性で、Langerhans 細胞や濾胞樹状細胞のマーカーは陰性
であった。IDCS では、淡明~軽度好酸性の胞体で、時に多核化や分葉化を示す異型核
を有する細胞が浸潤しており、背景にリンパ球浸潤を伴っていた(図 1-C)。免疫染色
で CD4、CD68、S-100 蛋白陽性、Langerhans 細胞マーカーが陰性であった。LCS は、

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豊富な好酸性細胞質、核形不整で切れ込みのある異型核を有し、CD1a と Langerin が
陽性であった(図 1-D,E)。FDCS、HS、IDCS、LCS に分類できない 2 症例は、FDCS と
IDCS の中間の細胞所見を示し、免疫染色で CD4 陽性を示していたことから、現在の
WHO 分類では DCS に分類された(図 1-F)。nPD-L1 陽性例は、HS 2 例、IDCS 1 例、
FDCS 5 例であった。3 抗体全てで nPD-L1 陽性を示したのは FDCS 3 例で、他の 4 例
は clone 28-8 のみ陽性であった(図 2)。
t(14;18)転座は 3 例に認められ、HS 2 例、IDCS 1 例であった。clonal IgH rearrangement
は 2 例で陽性であり、いずれも t(14;18)転座陽性の症例であった。B 細胞性リンパ腫
の形質を示す Bcl2 蛋白は、clonal IgH rearrangement を認めた 2 例中 1 例で陽性だった。
【考察】
本研究の H/DC neoplasm 17 例の臨床病理学的特徴は、西欧の既知報告とよく一致し
ていた。ほぼ全例が限局期で診断されたが、その後、再発や治療抵抗を認め 6 例が死
亡した。この点も H/DC neoplasm は進行性で予後不良の疾患であると言える。
t(14;18)転座と clonal IgH rearrangement の解析結果から、B 細胞性リンパ腫と H/DC
neoplasm の腫瘍起源について考察する。t(14;18)転座の 3 例は HS 全 2 例と IDCS 1 例
であり、このうち HS 1 例と IDCS 1 例は clonal IgH rearrangement も認められた。しか
し、FDCS は全 10 症例で両所見を認めなかった。このことから、HS と IDCS では B 細
胞性リンパ腫の性格が示唆されるが、FDCS では B 細胞性リンパ腫との関連性が乏し
いと考えられた。近年、約 100 例の H/DC neoplasm の遺伝子解析の結果、HS、IDCS、
LCS では MAPK 経路の遺伝子異常が多く、FDCS では NF-κB 経路の遺伝子異常が多い
ことが報告され、両疾患群は異なる腫瘍起源であるとの仮説が立てられている。また、
成書を参考すると、HS、IDCS、LCS の各起源と仮定されている単球、interdigitating
dendritic cell、ランゲルハンス樹状細胞はいずれも骨髄系幹細胞が起源である。これに
対し、FDCS の起源とされる follicular dendritic cell は間葉系幹細胞(つまり非造血系幹
細胞)が起源である。本研究においても、FDCS とその他の H/DC neoplasm との遺伝子
学的相違を指摘できたと考えられた。
悪性腫瘍における PD-L1 の蛋白発現や遺伝子異常について、治療応用を踏まえた革
新的研究が多数報告されている。本研究では、HS 2 例、IDCS 1 例、FDCS 5 例に nPDL1 の発現を認めた。FDC は生体内において PD-L1 陰性であり、FDCS の腫瘍化と PDL1 の関連性が今後の研究課題と考えられた。H/DC neoplasm ではまだ大規模な臨床病
理学的解析が困難であるが、免疫チェックポイント阻害剤が今後の治療選択となる可
能性もあり、更なる症例蓄積と臨床病理学的・分子遺伝子学的解析が必要である。
【結語】
本邦の H/DC neoplasm 17 例の臨床病理学的特徴は、西欧の報告とよく合致し、一部
で B 細胞性リンパ腫の遺伝子学的特徴が確認された。 nPD-L1 蛋白発現例が確認され、
免疫チェックポイント阻害剤が今後の治療選択となる可能性が示された。

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