リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「Efficient One-Pot Synthesis of Glycoforms of CCL1 and the Evaluation of the Hydration Area of Glycoproteins」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

Efficient One-Pot Synthesis of Glycoforms of CCL1 and the Evaluation of the Hydration Area of Glycoproteins

芝田, 大之 大阪大学

2022.03.24

概要

糖タンパク質上の糖鎖は、生体内で様々な役割を担っている。しかし糖鎖構造の不均一性から糖鎖付加の普遍的な機能はわかっていない。そこで、本研究では糖タンパク質上の糖鎖の機能とその存在意義を明らかにすることを目的とし、種々の均一な糖鎖構造を有する糖タンパク質を化学合成し、その糖鎖機能を調べた。
 初めに、水の凍結を阻害する不凍活性を有する不凍糖タンパク質(AFGP)の糖鎖機能に注目した。AFGPの構造は、(Ala-Thr-Ala)の繰り返し配列により構築され、Thr側鎖水酸基には、Gal- (3-(1-3)-GalNAcの二糖が結合した構造を有している(Figure la)。AFGPの活性発現にはGalNAc残基の付加が必須であることが報告されていたが、末端のGal残基の役割はわかっていなかった。本研究ではAFGP上の末端Gal残基の立体構造が、どのように活性に影響しているのかを詳細に解明することを目指し、非天然型構造を持つ(AT(Glc-P-(1^3)-GalNAc)A)10と、天然型構造を有する(AT(Gal-p-(1^3)-GalNAc)A)10を化学合成し、これらの機能解析をおこなった。その結果、末端Gal残基からGlc残基への置換は、AFGPの立体構造を大きく変えることなく、その不凍活性のみを減少させることを明らかにした(Figure lb)。これらの結果から、糖鎖の特異的な水和による周辺の水分子の挙動の変化が、不凍糖タンパク質の活性に影響している可能性を見出した。また、このように糖鎖の立体構造のわずかな違いで水の周辺の溶媒環境が変化するのであれば、より大型 の構造をもつN-結合型糖鎖におい て、そのような現象が顕著に発現 するのではないかと考えた。
 そこで、タンパク質上でのN-結合型糖鎖の水和環境を調べるために、ケモカイン糖タンパク質CCL1をプローブ分子として選んだ。CCL1は、1本のN結合型糖鎖をもつ糖タンパク質であり、X線結晶構造解析から糖鎖の有無によってたんぱく質の立体構造に変化がないことが、すでに明らかとなっていた。また、水和環境の分析手法として、水素重水素交換質量分析(HDX- MS)を利用することとした。一般的にHDX-MSの重水素交換パターンは、タンパク質の立体構造の違いによって変化する。糖タンパク質と糖鎖を除去したタンパク質の間で構造が同一である場合、これらタンパク質部分のHDX-MSパターンの違いは、糖鎖の影響を反映することになる。したがって、糖鎖構造が明確で、均一な構造を有する糖タンパク質を基質として利用した HDX-MSを行うことで、糖鎖と水との相互作用を評価できると考えた。

 まず、本研究では種々の糖鎖構造を有するCCL1グリコフォームを簡便に化学合成するため、アミノチアゾリンを脱離基とした新規ワンポット連結反応を開発した(Figure 2)。ペプチドアミノチアゾリン体は中性緩衝液条件下 で、不活性なペプチド誘導体である。そのため、NCLの際に一般的に用いられる、C-末端にチオエステルをもつペプチド誘導体との間で、位置選択的な NCLを行うことができる。一方で、ペプチドアミノチアゾリン体は、過剰量のチオールを含む緩衝溶液で処理することで、NCLに利用可能なペプチドチオエステル体へと変換できため、煩雑な作業なくペプチドの反応性を制御することができる。本合成手法では、効率的にペプチド連結を行うことができただけでなく、フォールディング反応までワンポットで実施可能であった。これを利用し、4種類のCCL1グリコフオームの合成を達成した。
 合成した種々の糖鎖構造をもつCCL1グリコフオームと、糖鎖をもたないCCL1を基質として、HDX-MS実験によるN-結合型糖鎖の水和領域の評価をおこなった。この結果、糖鎖が、夕ンパク質上で自由に周辺の水分子と相互作用する分子として働いている様子を、初めて実験的に観測することができた。さらにこの相互作用の様式は、糖鎖のサイズによっても変化しうることが示唆された。また、タンパク質と糖鎖の重水素化数を明確に区別するために、糖加水分解酵素であるPNGase Aを用いたHDX-MSを行なった。この結果から、糖鎖部分が多くの水を集める機能があるとともに、これによりタンパク質部分の水和状態にも影響を与うることを示唆する結果を得た。
 以上のような研究結果から、糖タンパク質上の糖鎖が、水との相互作用を介してタンパク質機能を変化させる機能を備えている、というこれまでにない新しい知見得るに至った。このような機能は、単に糖タンパク質表面の水和状態を変化させるだけでなく、糖タンパク質の分子間相互作用にも影響しうる。本研究の知見は、未だ不明瞭である糖タンパク質上の糖鎖について、普遍的な機能の一端を示すものではないかと考えている。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る