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書き出し

マイトトキシンのWXYZA’B’C’D’E’F’環部の合成研究

梅野, 圭太郎 UMENO, Keitaro ウメノ, ケイタロウ 九州大学

2023.03.20

概要

九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository

Synthetic Study of the WXYZA'B'C'D'E'F' Ring
Segment of Maitotoxin
梅野, 圭太郎

https://hdl.handle.net/2324/6787416
出版情報:Kyushu University, 2022, 博士(理学), 課程博士
バージョン:
権利関係:

(様式3)





:梅野

圭太郎

論 文 名 :Synthetic Study of the WXYZA’B’C’D’E’F’ Ring Segment of Maitotoxin
(マイトトキシンの WXYZA’B’C’D’E’F’環部の合成研究)






















【研究背景および研究目的】
マイトトキシン(MTX)は,渦鞭毛藻 Gambierdiscus toxicus が産生する梯子状ポリエーテル化合
物であり,32 個の環状エーテルおよび 98 個の不斉中心を有する分子量 3422 の中分子である。天然
から微量しか得られないこと,および複雑で巨大な分子構造を有することから,MTX の構造決定
には大きな困難を伴った。MTX はマウスに対して強力な急性毒性を示し,また極低濃度で細胞内
Ca2+流入活性を示すことが知られているが,その作用機構は解明されていない。MTX の部分構造
の合成は数多く報告されているが,未だに全合成は達成されていない。また,これまでに合成され
た部分構造について,MTX と同等の生物活性を有するものは報告されていない。MTX に存在する
極性官能基の分布には偏りがあり,極性官能基が多く存在する親水性部分,およびそれ以外の疎水
性部分に分けることができる。これまでの研究から,MTX の疎水性部分の部分構造が MTX の Ca2+
流入活性を阻害するという興味深い結果が得られている。そこで,より強力な生物活性を有する部
分構造を探索するために,MTX の疎水性部分に相当し,これまでに合成が達成されていない側鎖
部分を含む WXYZA’B’C’D’E’F’環部を合成することを目的として研究を行った。当研究室では二環
構築型収束的合成法として α-シアノエーテル法を開発しているので,この方法論を用いることにし
た。目的の化合物は,WXYZ 環部と C’D’E’F’環部から A’B’環部を構築しつつ合成する計画を立てた。
当研究室では WXYZ 環部および C’D’E’F’環部の合成法を開発しているが,本研究を行うためにこれ
らのフラグメントの大量合成を行い,その過程で生じた問題点を克服することで合成法の改良を行
うことにした。
【共通中間体の大量合成】
WXYZ 環部および C’D’E’F’環部を合成するための共通中間体であるテトラヒドロピラン誘導体の
大量合成を行った。2-デオキシ-D-リボース(67 g)から Wittig 反応を経由して,ケトエステル(117
g)を合成した。トリメチルアルミニウムによるケトンのメチル化,および水素化ジイソブチルア
ルミニウム(DIBALH)による α, β-不飽和エステル部分の 1,2-還元をワンポット反応としてバッチ
条件で行った。しかし,大量スケールでの合成において,実験器具の容量に上限があること,−78 °C
の低温を長時間保たなければならないこと,および後処理を行う際の安全性に問題があった。そこ
でこれらの問題点を克服するためにフロー条件での反応を行うことにした。すなわち,ケトエステ
ル(85 g)のテトラヒドロフラン(THF)溶液と臭化メチルマグネシウムの THF 溶液をシリンジ
ポンプによって 1 段目のマイクロミキサーへと送液して室温で混合し,さらに連続して DIBALH
のヘキサン溶液を 2 段目のマイクロミキサーへと送液して室温で混合し,溶出液を 0 °C に冷却し

た酒石酸カリウムナトリウムの水溶液とエーテルの混合物に滴下することで,目的のジオール(64
g)をバッチ条件と同等の収率(83 %)で得ることに成功した。さらに,Shi エポキシ化,Wittig

反応,および酸性条件下での 6–endo 環化反応を経由することで,目的の共通中間体(19 g)を合
成した。
【ビルディングブロックの合成】

C’D’E’F’環部の合成:共通中間体から E’環部へと誘導し,ヨウ化サマリウムを用いた分子内還元
的環化反応を β-アルコキシアクリレートとケトンを有する基質に適用することで D’環部を構築し
た。さらに同様の反応を β-アルコキシアクリレートとアルデヒドを有する基質に適用することで C’
環部を構築し,C’D’E’環部を合成した。また,1,3-プロパンジオールから香月–Sharpless 不斉エポ
キシ化,ジアステレオ選択的 Michael 付加反応,および野依不斉水素移動反応を経由することで側
鎖部分に相当するヨードオレフィンを合成した。C’D’E’環部オレフィンに対してヒドロホウ素化を
行い,生じたアルキルボランと側鎖部分に対応するヨードオレフィンを鈴木–宮浦カップリングに
より連結した。さらに Pd(II)触媒を用いる立体選択的環化反応により F’ 環部を構築することで
C’D’E’F’環部を合成した。
WXYZ 環部の合成:共通中間体から Z 環部および W 環部へとそれぞれ誘導した。Z 環部アルキ
ンをリチウムアセチリドに変換した後,W 環部アルデヒドとのカップリングを行い,アルキン部分
の還元およびアルコールの酸化によりケトンへと変換した。酸性樹脂である Nafion NR-50 を用い
た脱水的環化反応を行った場合,収率が中程度であること,高価な Nafion NR-50 を基質に対し大
過剰に用いる必要があることが問題となった。そこで,種々の脱水剤を検討した結果,五酸化二リ
ンを用いることで速やかに脱水的環化反応が進行することを見出し,目的の環化体を収率良く得る
ことに成功した。さらに,環拡大反応により Y 環部を構築した後,O,S アセタールへの変換および
酸化–メチル化反応を経由することにより X 環部を構築し,WXYZ 環部を合成した。
【WXYZA’B’C’D’E’F’環部の合成】
当研究室で開発した二環構築型収束的合成法である α-シアノエーテル法を適用することで,
WXYZA’B’C’D’E’F’環部の合成を行った。C’D’E’F’環部ジオールと WXYZ 環部アルデヒドをアセタ
ール化により連結し,位置選択的開環反応により α-シアノエーテルを合成した。西沢–Grieco 法に
より第一級アルコールを末端オレフィンへと変換した後,ジエンの閉環メタセシス反応により B’
環を構築した。O,S アセタールへの変換およびラジカル還元による A’環の構築は,以前に検討され
た条件では再現性が取れなかった。そこで改めて反応条件を精査したところ,トリエチルボラン存
在下,水素化トリフェニルスズを作用させることで再現性良く A’環部を構築することに成功した。
最後に側鎖部分に末端オレフィンを導入することで,WXYZA’B’C’D’E’F’環部の合成に成功した。合
成の最長直線工程数は 53 段階,総工程数は 104 段階であった。合成した WXYZA’B’C’D’E’F’環部の
1H

および 13C NMR データを天然物のものと比較したところ,天然物とは構造の異なる W 環部以外

は良い一致を示し,提出構造に誤りがないことを確認することができた。合成に成功した
WXYZA’B’C’D’E’F’環部の分子量は 1140 であり,これまでに報告されている MTX の部分構造の中
で最大の分子量を有する部分構造であった。

参考文献

241

1.

Synthesis and Stereochemistry of the C30–C63 section of Karlotoxin 2

K. Umeno, T. Oishi, Asian J. Org. Chem. 2020, 9, 1597.

2.

Convergent Synthesis of the WXYZA’B’C’D’E’F’ Ring Segment of Maitotoxin

K. Umeno, H. Onoue, K. Konoki, K. Torikai, Y. Yasuno, M. Satake, T. Oishi, Bull. Chem.

Soc. Jpn. 2022, 95, 325.

3.

マイトトキシンの WXYZA’B’C’D’E’F’環部の合成研究

梅野圭太郎, 大石徹, 有機合成化学協会誌 2023, 81, 35.

242

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