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Synthetic study of aplysiasecosterol A,a marine 9,11-secosteroid

田野, 輝 筑波大学

2021.08.03

概要

【序論】
 アプリシアセコステロール A (1)1)は、海洋軟体動物アメフラシ(Aplysia kurodai)より単離、構造決定された 9,11-セコステロイド化合物である。構造的特徴として、通常のステロイド骨格のA, B 環に相当する部分が大きく異なり、三環性のу-ジケトン構造を有していることが挙げられる。さらに、生物活性として、ヒト前骨髄性白血病細胞株(HL-60)に対する細胞毒性を示すことがわかっている。一方、1 の生合成前駆体と考えられているアプリシアセコステロール B2)は、三環性骨格以外の構造は共通しているものの、HL-60 細胞に対して細胞毒性を示さない。すなわち、1 の細胞毒性の発現には、その三環性骨格が重要であることが予想される。そこで、1 の三環性骨格、D 環、側鎖部分の構造を自在に連結可能な全合成経路を確立することで、1 あるいは人工類縁体の量的供給、続く構造活性相関研究等への展開が可能と考えた。さらに、1 のような複雑な化合物で確立した構造活性相関研究の手法は、他の 9,11-セコステロイドにも広く応用可能な手法となると考えた。以上のことから本研究では、三環性骨格を構築し、別に合成する D 環セグメントを直接的導入するという収束的戦略によるアプリシアセコステロールA (1)の全合成を目指した。

【三環性骨格の合成】
 Scheme 1a に合成計画を示す。アプリシアセコステロール A (1)は、三環性骨格セグメント 2 とD 環セグメント 3 を合成後、C8-C14 位間で連結することで合成できると考えた。
 Scheme 1b に三環性骨格の合成概略を示す。(+)-Hajos–Parrish ケトン(4)3)より、15 段階で環化前駆体であるアルデヒド 5 を得た後、鍵反応である分子内アシルラジカル付加環化を検討し、三環性骨格 7 の構築に成功した 4)。また、7 のメチルアセタール部の脱メチル化反応は、BCl3–nBu4NI 条件下 5)で円滑に進行し、アプリシアセコステロールA (1)の部分構造であるヘミアセタール 2 の合成を完了した。

【D 環セグメントの合成】
 三環性骨格の合成を完了したので、続いて D 環セグメント 9 の合成を行った。既知化合物 86)より、17 段階で、種々の結合形成反応へ用いることが可能なD 環セグメントの合成を完了した。

【三環性骨格に対する、D 環の導入方法の検討】
 三環性骨格およびD 環セグメントの合成を完了したので、次に鈴木–宮浦カップリングによる D 環の導入を検討した (Scheme 3a)。三環性骨格 7 の反応点をC8 位に限定するため、L-selectride によりC5 位を選択的に還元した後、C8 位の臭素化により、臭化物 10 とした。10 より三段階で合成したボラート 11に対して、様々な条件のカップリング反応の検討を行った。その結果、望みのカップリング体 12 は得られなかったが、脱シリル化されたカップリング体 13 の生成が痕跡量ながら示唆された。この結果から、反応が進行しない原因を C5 位上の水酸基周辺の立体障害と予想し、立体障害を低減させたセグメント 15 を用いることとした (Scheme 3b)。
 Scheme 4 に、セグメント 15 の合成検討の結果を示す。興味深いことに、10 の酸化は進行したが、望みのジケトン 14 は得られず、エンジオン 16 を与えるのみであった。このエンジオン 16 は、環のひずみとエンジオンという官能基から、優れた求電子剤となることが予想された。すなわち、D 環セグメントの導入が、求核付加反応により可能であることが考えられた。そこで 16 に対して、1,4-付加に広く用いられるロジウム触媒による求核付加反応を試みたところ、中程度の収率で望みのフェニル化体が得られた。しかしながら、同様の条件下でD 環のモデル化合物を用いた 1,4-付加を試みたところ、望みのアルキル化体は得られなかった。
 また様々な有機金属種の16 に対する反応性と選択性を調べるため、ハードなアルキル化剤であるPhLi、およびソフトなアルキル化剤である Ph2CuLi によるアルキル化の検討行った (Table 1, entry 1, 2)。その 結果、entry 2 の条件下、良好な収率で、期待通り位置選択的かつ立体選択的にフェニル化体を得ること ができた。さらに、D 環のモデル化合物であるシクロペンテニル基の導入を、有機リチウム種および有 機銅種を用いて試みた(entry 3, 4)。その結果entry 4 において、中程の収率で、望みのシクロペンテニル 化体が単一の異性体で得られた。これらの検討結果から、D 環セグメントの、エンジオン 16 のC8 位へ の導入は、有機銅種を用いた求核付加可能であると予想した。

【総括】
 本研究では、特異な三環性の構造を有する、アプリシアセコステロール A (1)の合成研究を行った。まず、その三環性骨格の合成を、ラジカル環化を鍵反応として、(+)-Hajos–Parrish 4 から 17 段階で合成を完了した。次に、既知化合物 8 から、各種結合形成反応条件に応用可能なD 環セグメント 9 を設計・合成した。さらに三環性骨格への直接的な D 環部分構造の導入を目指し、三環性骨格の誘導体に対する、クロスカップリング反応の検討を行ったが、カップリング体の生成はほとんど見られなかった(Scheme 3a)。一方で、三環性エンジオン 16 に対する求核付加反応の検討においては、高い位置選択性、立体選択性でアルキル化体が得られた。このことから、求核付加反応による D 環セグメントの導入が可能であることが示唆された。
 求核付加反応による、三環性骨格-D 環セグメント間の結合形成に関する知見は、アプリシアセコステロールA のみならず、他の 9,11-セコステロイドの収束的な合成手法として期待できる。

参考文献

1) Kawamura, A.; Kita, M.; Kigoshi, H. Angew. Chem. Int. Ed. 2015, 54, 7073. 2) Kita, M.; Kawamura, A.; Kigoshi,H. Tetrahedron Lett. 2016, 57, 858. 3) Hajos, Z. G.; Parrish, D. R. J. Org. Chem. 1974, 39, 1615. 4) Ohyoshi, T.; Tano, H.; Akemoto, K.; Kigoshi, H. Tetrahedron Lett. 2017, 58, 3327. 5) Paige R.; Wirtz, M. C.; Vetelino, M. G.; Rescek, D. M.; Woodworth, G. F.; Morgan, B. P.; Coe, J. W. J. Org. Chem. 1999, 64, 9719.

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