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大学・研究所にある論文を検索できる 「非肥厚性偽関節には骨分化能を有する細胞が存在し、大腸菌発現系BMP-2により骨・軟骨分化能が促進する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

非肥厚性偽関節には骨分化能を有する細胞が存在し、大腸菌発現系BMP-2により骨・軟骨分化能が促進する

吉川, 遼 神戸大学

2023.03.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Human Non-Hypertrophic Nonunion Tissue Contains
Osteoblast Lineage Cells and E-BMP-2 Activates
Osteogenic and Chondrogenic Differentiation

吉川, 遼
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-03-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8510号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100482258
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)

学位論文の内容要旨

Human Non-Hypertrophic Nonunion Tissue Contains Osteoblast Lineage Cells
and E-BMP-2 Activates Osteogenic and Chondrogenic Differentiation

非肥厚性偽関節には骨分化能を有する細胞が存在し、
大腸菌発現系 BMP-2 により骨・軟骨分化能が促進する

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
整形外科学
(指導教員:黒田 良祐教授)
吉川 遼

【目的】

骨折後の骨癒合過程には、力学的安定性と生物学的活性の両方が必要と考えられている。骨折の
5-10%は偽関節という骨癒合不全の状態となり、治療に難渋する。偽関節の治療において、偽関節
組織の生物学的特性を明らかにすることは重要である。偽関節には様々なタイプが存在し、我々
は以前、単純 X 線像で肥厚性仮骨を有さない偽関節を非肥厚性偽関節と定義し、肥厚性仮骨を有
する肥厚性偽関節と比べて骨シンチグラフィでの集積が低下していたと報告した。また我々は、
肥厚性偽関節や萎縮性偽関節に骨分化能を有する間葉系幹細胞が存在することを報告した。
Bone morphogenetic protein-2 (BMP-2)は骨に関連する成長因子として以前から知られている。
BMP-2 は骨芽細胞や骨芽細胞前駆細胞の骨分化を誘導する、骨再生における重要な成長因子であ
ると報告されている。しかし、BMP-2 は主にハムスターの卵巣細胞を利用して生成され、大量生
産するにはコストがかかることが問題であった。近年、大腸菌発現系で生成する BMP-2
(Escherichia coli-derived BMP-2:E-BMP-2)が開発され、大量培養が可能であることから、安価
に臨床で使用できることが期待されている。
今回我々は、非肥厚性偽関節に存在する非肥厚性偽関節細胞(non-hypertrophic nonunion cells:
NHNCs)に注目し、増殖能・骨分化能・軟骨分化能を in vitro にて調べ、また E-BMP-2 による影
響についても検討した。
【対象と方法】
対象

単純 X 線像で非肥厚性偽関節と診断した患者 5 例を対象とした。年齢は平均 36.6 歳(20-59 歳)、
男性 3 例、女性 2 例であり、鎖骨骨幹部偽関節 1 例、脛骨骨幹部偽関節 1 例、大腿骨骨幹部偽関
節 3 例であった。手術中に偽関節部の組織を採取し、NHNCs を分離培養し、下記の項目を評価
した。
増殖能

維持培地で培養し、2 週ごとに継代する際に細胞数を測定し、population doublings (PD)を計算し
た。PD とは、細胞が集団として何回分裂したかを表すものであり、PD = log2(回収時細胞数)-
log2(播種時細胞数)と計算した。
細胞表面抗原

フローサイトメトリー法を用いて、NHNCs の細胞表面抗原として造血幹細胞マーカーである
CD14 と CD45、間葉系幹細胞マーカーである CD73 と CD105 の発現を調べた。
骨分化能

骨分化培地を用いて培養を行い、7、14、21、28 日目に Alizarin Red S 染色、アルカリホスファ
ターゼ(ALP)活性、real-time reverse transcription-polymerase chain reaction(RT-PCR)を用

いて評価した。RT-PCR では骨分化関連遺伝子である runt-related transcription factor 2
(RUNX2 )、osterix (OSX )、activating transcription factor 4 (ATF4 )、collagen type I (COL1A1 )、
bone sialoprotein (BSP )、osteocalcin (OCN ) の発現量を測定した。
軟骨分化能

軟骨分化培地を用いて培養を行い、21 日目に Safranin-O 染色、real-time RT-PCR を用いて評価
した。real-time RT-PCR では軟骨分化関連遺伝子である aggrecan (ACAN )、collagen type II
(COL2A1 )、collagen type X (COL10A1 )、Sry-type high-mobility group box 9 (SOX9 )の発現量
を測定した。
E-BMP-2 の投与濃度

NHNCs の増殖能、骨分化能、軟骨分化能に及ぼす E-BMP-2 の影響を調べるために、各培地に
100 ng/mL の濃度で添加し比較した。
Positive control

Alizarin Red S 染色と Safranin-O 染色の際の positive control として、髄腔内を掘削し自家骨を
採取する reamer-irrigator-aspirator (RIA) システムで得られた細胞を使用した。RIA 産物は間葉
系幹細胞を多く含む細胞集団であることが知られており、E-BMP-2 を添加しない NHNCs と同じ
条件で培養した。
統計解析

Alizarin Red S 染色と ALP 活性における培養期間 (7、14、21、28 日目)での比較では、KruskalWallis 検定および Dunn-Bonferroni post hoc 検定を行った。
E-BMP-2 投与の有無での比較では、
Mann-Whitney U 検定を行った。統計ソフトは SPSS 22.0 を使用し、有意水準は p<0.05 とし
た。
【結果】
増殖能

NHNCs の増殖能は継代を繰り返していくと緩徐に低下したが、第 10 継代まで増殖能は保たれて
いた。また、E-BMP-2 を投与しても PD に差は認めず、増殖能への影響は認めなかった。
細胞表面抗原

すべての患者から採取した NHNCs において間葉系幹細胞マーカーである CD73、
CD105 は陽性、
造血幹細胞マーカーである CD14、CD45 は陰性であった。
骨分化能

NHNCs は骨芽細胞に分化する能力を有していたが、骨分化培地単独では、石灰化は弱かった。ま
た骨分化培地単独ではいずれの培養日数でも、OSX、BSP、OCN の遺伝子発現の上昇を認めなか
った。E-BMP-2 を投与すると、ALP 活性、OSX、BSP、OCN の遺伝子発現が有意に上昇し骨分
化能が促進され、強い石灰化を認めた。
軟骨分化能

NHNCs は軟骨分化培地単独では、十分な軟骨分化能は有さなかった。E-BMP-2 を投与すると、

ACAN、COL2A1 の遺伝子発現が有意に上昇し、軟骨分化能が促進された。
【考察】

本研究の結果において、NHNCs は間葉系幹細胞を含んでおり、増殖能と骨分化能を認めたが、軟
骨分化能は乏しかった。NHNCs が骨分化培地単独では石灰化が弱かったことや、軟骨分化培地単
独では軟骨分化能が乏しかった結果は、非肥厚性偽関節が肥厚性仮骨を有さない生物学的な要因
として示唆された。
BMP-2 は骨形成に必要な成長因子して広く研究され、
骨形成を誘導することが実証されているが、
偽関節に対する BMP-2 の治療効果は未だ不明である。本研究では E-BMP-2 が、細胞増殖能に影
響を与えることなく骨分化能と軟骨分化能を促進することが明らかとなった。E-BMP-2 は主に骨
分化に必須な転写因子である OSX の発現を介し、NHNCs の骨分化を促進したと考えられた。ま
た、軟骨分化においては E-BMP-2 は ACAN と COL2A1 の発現を介し、NHNCs の軟骨分化を促
進したと考えられた。
肥厚性偽関節には、骨形成能や軟骨形成能を有する間葉系幹細胞が存在することが知られている
ため、偽関節部の掻爬や骨移植などの局所処置を行わず、骨折部を安定化させることのみで治療
することが多い。一方で、本研究の対象となった非肥厚性偽関節は生物学的活性が乏しいと考え
られていたため、骨折部の安定化だけではなく偽関節部の掻爬や自家骨移植を併用する治療がな
されてきた。しかし自家骨は腸骨から採取されることが多く、時に感染や骨折などの重篤な合併
症を引き起こすことが問題である。本研究の結果から、今後の非肥厚性偽関節の治療は、偽関節組
織を温存して E-BMP-2 を投与することにより、骨移植を要さない治療ができる可能性があると
考えられた。
【結論】

非肥厚性偽関節には間葉系幹細胞が存在し、骨分化能を有していたが、軟骨分化能は乏しかった。
E-BMP-2 は細胞増殖能に影響を与えず、骨分化能と軟骨分化能を促進した。非肥厚性偽関節の治
療として、E-BMP-2 を投与し偽関節組織を温存する治療が新たな選択肢となる可能性がある。

神戸大学大学院医学(
系)
研究科(博士課程)

論 文審 査 の 結 果 の 要 旨

論文題目

甲 第 3254 号





受 付 番号

吉川遼

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要旨は 1, 000字∼ 2, 000字程度)

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【目的 】
骨折の 5
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0%は偽関節という骨癒合不全の状態となり、治療に難渋する 。偽関節には様々
なタイプが存在し 、その一つに肥厚性仮骨を有さない非肥厚性偽関節がある 。骨再生にお

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方 法】
単 純 X 線像で非肥厚性偽関節と診断した患者 5名を対象とし、術中に偽関節部の組織を
採取し分離培養した。増殖能は、 2 週ごとに継代する際の細胞数を計測し評価した。細胞
表面抗原はフローサイトメトリー法を用いて造血幹細胞マーカーである CD14と CD45、
間葉系幹細胞マーカーである CD73と CD105の発現を調べた。骨分化能は骨分化培地を

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pbox9(SOX9) の発現量を測定した。E-BMP-2は各培地に 100ng/mL
の濃度で添加し比較した。

結果】

NHNCsの増殖能は継代を繰り返していくと緩徐に低下したが、第 10継代まで増殖能は
保たれていた。 E-BMP-2投与による増殖能への影響は認めなかった。すべての患者から採

sにおいて CD73、CD105は陽性で、 CD14、CD45は陰性であった。NHNCs
取した NHNC
は骨芽細胞に分化する能力を有していたが、骨分化培地単独では、石灰化は弱かった。骨
、BSP
、 OCNの遺伝子発現の上昇を認め
分化培地単独ではいずれの培養日数でも、 OSX
なかったが、 E-BMP-2を投与すると、 ALP活性、 OSX
、BSP
、 OC N
の遺伝子発現が有意
に上昇し骨分化能が促進され、強い石灰化を認めた。 NHNCs は軟骨分化培地単独では、

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2 を投与すると、 ACAM
、 CO
L2Alの遺伝
十分な軟骨分化能は有さなかったが、 E-BM
子発現が有意に上昇し、軟骨分化能が促進された。


結論 】

今回の研究により、ヒトの非肥厚性偽関節の局所組織は間葉系幹細胞を含んでおり、増
殖能と骨分化能を認めるが 、軟骨分化能は乏しいことが明らかになった。この特性は、非
肥厚性偽関節が肥厚性仮骨を有さない生物学的な要因として示唆された。また今回研究者
らは、 E-BMP-2が細胞増殖能に影害を与えることなく骨分化能と軟骨分化能を促進するこ
とを報告した。これまでは非肥厚性偽関節は局所の細胞活性が乏しいと考えられていたた
め、偽関節部の掻爬や自家骨移植などの治療がなされてきたが、自家骨は腸骨から採取さ
れることが多く、時に感染や骨折などの重篤な合併症を引き起こすことが問題であった。
今回の研究により、偽関節組織を温存して E-BMP-2を投与することで、非肥厚性偽関節
を自家骨移植を行わずに治療できる可能性があると考えられた。
本研究は、非肥厚性偽関節部の細胞特性について研究したものであるが、従来行われて

BMP-2
いない非肥厚性偽関節に存在する細胞の増殖能・骨分化能・軟骨分化能の評価と Eの影響の証明を 、 ヒトの組織を用いて初めて行った報告である 。非肥厚性偽関節の治療に

BMP-2を用いることが、新たな治療アプローチと成り得るとした点で価値ある
対して E業績であると認める。したがって、本研究者は博士(医学)を得る資格があると認める 。

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