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大学・研究所にある論文を検索できる 「Evaluation of the Straightening Phenomenon of Various Types of Coils」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Evaluation of the Straightening Phenomenon of Various Types of Coils

石田, 衛 名古屋大学

2021.07.27

概要

【緒言】
デタッチャブルコイル(以下コイル)は動脈瘤塞栓術などの脳血管内治療に用いられるデバイスである。動脈瘤などの腔内に留置したマイクロカテーテルから適切なサイズのコイルを複数本留置することで、内部の血栓化を促し、血流を停止させる。直線化現象は、コイルを過度に小さい腔に挿入した際にマイクロカテーテルのキックバック(脱落)を起こす現象として知られている。

コイルには挿入時の構造破綻防止のため、内部に伸長防止線(SR 線)という機構が組み込まれている。直線化現象はこの SR 線の存在が原因となって起こる事象であり、その機序は Figure1 の通りである。コイルが挿入される際、コイルの曲がりに伴って SR 線はコイル内部で蛇行し、そのためコイル長よりも長い距離を走行する。コイルが過度に小さい腔に挿入されるとき、コイルは小さく頻回に折り畳まれることになる。 SR 線の蛇行が増えることで、コイルに比較した SR 線の走行距離が長くなり、コイル近位端において SR 線が不足する。これによりコイルは柔軟性を失い、硬い直線状の挙動を示すこととなる。結果としてコイルの挿入抵抗は上昇し、カテーテルがキックバックする。

現在本邦では多種多様なコイルが使用可能であるが、コイルの種類によって直線化現象の発生しやすさが異なると想定される。本研究では、直線化現象再現モデルを作成し、5 種類のコイルの直線化現象への耐性について比較検討した。

【方法】
動脈瘤モデルと自動挿入システムから成る実験系を作成した(Figure2)。直線化現象の発生条件である、過度に小さな挿入腔を実現するため、動脈瘤モデルは実験コイル径の半分の 1.5mm 径の数珠形状とした。実験には Axium Prime ES、ED Coil Extrasoft、 Hypersoft 3D、SMART Coil Complex Extra Soft、Target 360 nano の 5 種類の 3mm 径 6cm長コイルを使用した。5 種類のコイルそれぞれ 5 本を動脈瘤モデルに挿入し(Figure3)、直線化現象が発生した時点でのコイル挿入長を記録および比較した。挿入長が長いコイルほど直線化現象に対する耐性が高いと定義した。One-way ANOVA 法で全体の比較を行い、Tukey’s post hoc test で一対比較検討を行った。

【結果】
全てのコイル挿入施行で直線化現象の発生が確認された(Table1)。直線化現象が発生した時点での挿入長には、コイル種間で有意差があり(p=0.013)、ED coil (平均±標準偏差、27.0±8.3mm)、Axium prime 3D (21.6±7.0mm)、Target 360 (15.8±6.9mm)、 Hypersoft (13.8±5.8mm)、SMART (12.4±4.7mm)の順で長かった。一対比較では ED coilが Hypersoft (p=0.037)と SMART (p=0.018)に対して有意差を持って長い挿入長であった(Figure4)。

【考察】
直線化現象はコイル塞栓術においてしばしば経験される現象であるが、コイルの種類による直線化現象の発生しやすさの差について検討した報告はこれまでない。直線化現象の発生は挿入に伴うコイルの挙動やカテーテルの位置など、様々な要素で規定されているため、その検討には再現モデルの作成が必要であると考えた。

今回、広く使われている 5 種類のコイルを用いて実験を行った結果、ED coil が直線化現象を最も起こしにくいコイル種であった。ED coil は SR 線がコイル内を波状に蛇行して走行しており、この特徴的な構造が直線化現象に対する耐性を持たせている可能性がある。

直線化現象はコイル塞栓術の終盤で発生しやすい。すでにコイルが留置されており残存腔が正確に評価できないことから、実際の腔より過度に大きいサイズのコイルが選択されやすいためである。直線化現象が発生した状態でコイル挿入を継続すると、動脈瘤破裂などの臨床合併症に至る可能性があり、危険である。また、カテーテルのキックバックはカテーテル再挿入の必要性が生じ、これも合併症のリスクである。塞栓術の終盤では直線化現象が起こりづらいコイルを挿入すべきであり、適切な径、長さ、そして直線化現象に耐性のあるコイル種の選択が望まれる。今回の実験結果がその選択において有用となる可能性がある。

本研究にはいくつかの限界がある。まず、5 種類のコイル計 25 回という少ない実験回数である。一度直線化現象が発生したコイルは、その後挿入時の挙動が変わってしまう可能性があるため、1 本のコイルにつき 1 回の挿入とせざるを得なかった。これが実験回数の制限に繋がった。また、直線化現象が発生した時点での挿入長において、同コイル種でも値のばらつきが見られた。直線化現象の発生にはコイルの挙動やカテーテルの位置が関与しており、これらの細かな差が直線化現象の発生するタイミングに大きなばらつきを生じさせたと考える。最後に、自動挿入である点、カテーテル位置を固定している点など、実験モデルが実際の臨床におけるコイル挿入の状況を完全に再現できていない可能性が挙げられる。今回の結果の裏付けに、今後臨床におけるデータの蓄積が待たれる。

【結語】
再現モデルを使用してコイルの直線化現象に対する耐性を比較した。5 種類のコイルのうち ED coil が最も直線化現象を起こしづらいコイルであった。本研究結果が臨床におけるコイル選択の一助となる可能性がある。

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