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書き出し

右室流出路再建のための湾曲形かつ手作りの二尖弁を内挿した拡張ポリテトラフルオロエチレン導管

松島, 峻介 神戸大学

2023.09.25

概要

Kobe University Repository : Kernel
PDF issue: 2024-05-02

Expanded polytetrafluoroethylene conduits with
curved and hand-sewn bileaflet designs for
right ventricular outflow tract reconstruction

松島, 峻介
(Degree)
博士(医学)

(Date of Degree)
2023-09-25

(Resource Type)
doctoral thesis

(Report Number)
甲第8716号

(URL)
https://hdl.handle.net/20.500.14094/0100485900
※ 当コンテンツは神戸大学の学術成果です。無断複製・不正使用等を禁じます。著作権法で認められている範囲内で、適切にご利用ください。

(課程博士関係)
学 位 論 文 の 内 容 要 旨

Expanded polytetrafluoroethylene conduits
with curved and hand-sewn bileaflet designs
for right ventricular outflow tract reconstruction

右室流出路再建のための湾曲形かつ手作りの二尖弁を内挿した
拡張ポリテトラフルオロエチレン導管

神戸大学大学院医学研究科医科学専攻
心臓血管外科学
(指導教員:岡田 健次教授)
松島

峻介

目的
右室流出路再建は様々な先天性心疾患に対する外科治療に不可欠であり,
弁付き導管がよく使用される. 本邦では拡張ポリテトラフルオロエチレン
(ePTFE) 素材の導管が応用され, その優れた生体適合性から良好な耐久性
が報告されてきた. しかし小口径導管においては未だ満足できるものではな
く, 予期せず早期に導管置換が必要となる症例がある.
その要因の一つに, 生理的な肺動脈弁位とは異なる位置 (heterotopic
position) への導管移植による弁部位の変形や屈曲が挙げられる. 我々は
10-16 mm 径導管を使用する際は予め湾曲させ, そういった環境下でも弁機
能が保持される Nunn 医師提唱の手作り二尖弁を内装させた ePTFE 導管を
作成し使用してきた. 本研究ではその臨床成績を後方的に検討し, さらに本
導管を模擬回路に組み込み流体力学的な機能評価を行った.

方法

導管デザイン
ePTFE 人工血管に弁内挿用の窓を切り開いた後, 0.1 mm 厚 ePTFE 心膜シ
ートからトリミングした一枚もの弁尖の basal edge を縫着し, free edge 中央
を導管後壁に一点固定することで前後に開閉する二尖弁を作成した. 開窓部
を一回り大きな人工血管壁にて閉鎖することで導管を湾曲させ, 開口時の弁
尖と導管内壁との間にスペースを設けた.

臨床研究
兵庫県立こども病院で 2010-2022 年に本導管を移植した連続症例を対象と

した. 主要評価項目をカプランマイヤー法による生存率, 導管狭窄へのカテ
ーテル治療介入率, 導管置換率とした. 副次評価項目を心エコー検査による
肺動脈弁機能とし, 対象が 10 例以上となる導管径では線形混合モデルを用い
た近似を行った.

実験研究
16 mm 径の本導管を 3 つの角度 (130, 140, 150º) に屈曲させた状態で模
擬回路に接続し, 体表面積 0.4, 0.7, 1.0 m2 の心拍出量に相当する 1.5, 2.7, 3.6
L/min の脈動流量下に, 計 9 条件で 3 導管を試験した. 差圧計と流量計によ
る測定に加え, 弁下流の粒子画像流速測定法 (PIV) による解析を行った. 評
価項目は最大弁圧較差, 逆流率, 収縮中期の最大レイノルズ剪断応力とした.

結果

臨床結果
対象は 50 例で, 10, 12, 14, 16 mm 径の本導管がそれぞれ 1, 4, 6, 39 例の患
者に移植された. 手術時体重中央値は 8.4 [range, 2.6-12] kg であった. 34 例
の症例で導管は heterotopic position に移植された. フォローアップ期間中央
値は 3.7 (interquartile range, 1.2-8.4) 年であった.
主要評価項目として, 1 例の早期死亡と 2 例の遠隔死亡 (いずれも非導管関
連) を認め, 8 年生存率は 89 ± 6.9%であった. 10 例にカテーテル治療介入を
要し, その 5 年および 8 年回避率はそれぞれ 87 ± 6.4%および 45 ± 13%であ
った. 10 例 (16 mm, n=5; 14 mm, n=3; 12 mm, n=2) で導管置換が行われ,
その 5 年および 8 年回避率はそれぞれ 89 ± 5.6%および 82 ± 8.0%であった.

内, 導管自体が原因での置換が 6 例 (16 mm, n=5; 12 mm, n=1) であり, 16
mm 径では移植から 8 年後以降, 12 mm 径では 6 年後以降に行われた.
副次評価項目として, 45 例の計 490 回の心エコー検査データが対象となっ
た. 患者の成長および術後経過とともに肺動脈弁狭窄が進行する一方で, 14
mm 径導管が移植された 2 例を除いて中等度以上の肺動脈弁閉鎖不全を全経
過中で認めなかった. 16 mm 径導管で線形混合モデルによる近似を行い, 体
重 (x, kg) に対する最大導管通過流速 (y, m/s) は y = 0.11x + 0.67 であった.

実験結果
最大弁圧較差は 11.5-25.5 mmHg, 逆流率は 8.0-14.4%, 最大レイノルズ剪
断応力は 29-318 Pa であった. PIV にて, 収縮早期に導管後側から血流が生じ
管全体で層流となるが, 収縮中期に乱流が発生し, 拡張期に入ると弁閉鎖血
流後には逆流をほぼ認めない様子が確認された. 収縮期の乱流は流量増加に
伴って顕著になった. 逆流率と流量とに明らかな相関を認めなったが, 最大
弁圧較差および最大レイノルズ剪断応力は流量増加に伴い上昇した. いずれ
の評価項目でも導管屈曲角度による明らかな差は認めなかった.

考察
右室流出路再建において半月弁形態の導管を使用することは生理的である
が, 多くの心奇形に移植される右室-肺動脈導管は位置取りがそもそも生理的
ではなく, 胸壁近くの経路や変則的な吻合部にて導管は変形し屈曲する. 導
管の変形は弁尖の接合を不良にし, 弁尖の導管内壁への接着の原因にもなる
ことで逆流を引き起こす. また屈曲や狭窄があることで過度の乱流が誘発さ

れ, 早期に弁尖が劣化し得る. 体格の小さい患者ではその傾向は顕著となり,
結果として小口径弁付き導管の耐久性が悪化すると考えられる. 本導管の二
尖弁は比較的長い free edge を持つことで多様な右室流出路後壁と柔軟に接
合し, かつ十分に開口する. さらに弁尖と人工血管前壁とが接触せず弁尖の
開口位固定が予防される. これら特徴が良好な臨床成績につながっていると
考えられる.
さらに本導管の弁機能を実証するため, 模擬回路上で流体力学的に評価し
た. 流量 1.5 L/min における弁圧較差や, どの流量でも閉鎖不全が制御されて
いる点は, 16 mm 径導管の臨床結果と一致していた. 一方で, 流量の増加に
伴う弁圧較差の上昇は臨床結果より抑えられ, 臨床でのより強い狭窄は弁尖
石灰化を反映していると考えられる. そして PIV による血流可視化は想定以
上の乱流発生を露呈した. レイノルズ剪断応力は血栓形成や溶血の指標とさ
れ, 流量増加に伴う本実験での上昇は許容内であるが理想的ではなかった.
従って本導管を次回導管置換までの姑息手段とし, 患者が成長し heterotopic
position での悪影響が薄れる体格になれば, 生理的で乱流が少ないと期待で
きる半月弁形態の導管への置換が望ましいと考えられた.

結論
湾曲形かつ手作りの二尖弁を内挿した当導管は, どの移植環境においても
閉鎖不全を制御することで良好な臨床成績を有し, その流体力学的性能も示
された. 当導管は次回導管置換までの信頼できるブリッジとして有用である.

神戸大学大学院医学研究科(博士課程)

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

論文題目

甲第

3305号





受付番号

松島峻介

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右室流出路再建のための湾曲形かつ手作りの二尖弁を内挿した拡張
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on ホリテトラフルオロエチレン導管

主 査

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審査委員

副 査

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副 査

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十困噴—

打屯令希

澤田知可

(要旨は 1
, 000字∼ 2, 000字程度)

【目的

様々な先天性心疾患に対する右室流出路再建は外科治療に不可欠であり、弁付 き導管が
使用される。本邦では拡張ポリテトラフルオロエチレン (
e
PTFE
)素材の導管が応用さ
れ、その優れた生体適合性から良好な耐久性が報告されてきた。しかし 、小口径導管にお
いては末だ満足できるものではなく 、予期せず早期に導管置換が必要となる症例がある。
その要因の一つに生理的な肺動脈弁位とは異なる位置への導管移植による弁部位の変形
や屈曲が挙げられる。申請者らは 10・16mm径導管を使用する際は予め湾曲させ、手作り
二尖弁を内装させた e
PTFE導管を作成し使用してきた。本研究では、その導管の臨床成
績を後方的に検討し、流体力学的な機能評価を行った。
【方法】
2022年に本導管を移植した連続症例を対象とした。導管は
兵庫県立 こど も病院で 2010ePTFE人工血管に弁内挿用の窓を切り開いた後 、ePTFE心膜シートからトリミングした
a
s
a
ledgeを縫着し、 f
r
e
eedge中央を導管後壁に一点固定する ことで前
一枚もの弁尖の b
後に開閉する二尖弁を作成した。開窓部を一回り大きな人工血管壁にて閉鎖することで導
管を湾曲させ、開口時の弁尖と導管内壁との間にスペースを設けた。主要評価項目をカプ
ランマ イヤー法による生存率、導管狭窄へのカテ ーテル治療介入率、導管置換率とした。
副次評価項目を 心エコー検査による肺動脈弁機能とし 、
対象が 1
0例以上となる導管径では
線形混合モデルを用いて近似を行った。
16mm径の本導管を 3つの角度 (
1
3
0,140,150
°
)に屈曲させた状態で模擬回路に接続し 、
4
,0
.
7,1
.0m2の心拍 出量に相当する 1
.5
,2
.
7,3
.
6L/m
i
nの脈動流量下に計 9条
体表面積 0.
件で 3導管を試験した。差圧計と流星計による測定に加え、弁下流の粒子画像流速測定法

(
P
I
V
) による解析を行った。評価項目は最大弁圧較差、逆流率、収縮中期の最大レイノル
ズ剪断応力とした。

結果 】
0例で、 1
0
,1
2,1
4
,1
6m m径の本導管がそれぞれ 1
,4,6,3
9例の患者に移植さ
対象は 5
.
7年であった。 主要評価項目として 、 1例の早期死亡
れ、フォローアップ期間中央値は 3
と 2例の遠隔死亡 (
いずれも非導管関連)を認め 、8年生存率は 89土 6
.
9%であった .10例
4
%および 45
にカテーテル治療介入を要し 、その 5年および 8年回避率はそれぞれ 87士 6.
士1
3%であった。
副次評価項目として、患者の成長および術後経過とともに肺動脈弁狭窄が進行する 一方

、 1
4m m径導管が移植された 2例を除いて中等度以上の肺動脈弁閉鎖不全を全経過中で
1
.
5・
2
5
.
5mmHg、逆流率は 8
.
0

1
4.4%、最大レイノルズ剪
認めなかった。最大弁圧較差は 1
断応力は 2
9
・318Paであった。 PIVにて収縮早期に導管後側から血流が生じ、管全体で層
流となるが収縮中期に乱流が発生し 、拡張期に入ると弁閉鎖血流後には逆流をほぼ認めな
い様子が確認された。 最大弁圧較差および最大レイノルズ剪断応力は流量増加に伴い上昇
した。いずれの評価項目でも導管屈曲角度による明らかな差は認めなかった。

【考察】
右室流出路再建において半月弁形態の導管を使用することは生理的であるが 、多くの心
奇形に移植される右室・
肺動脈導管は、胸壁近くの経路や変則的な吻合部にて導管は変形し
屈曲する 。導管の変形は弁尖の接合を不良にし、過度の乱流が誘発され,早期に弁尖が劣
化する。本導管の 二尖弁は多様な右室流出路後壁と柔軟に接合し、かつ十分に開口する 。
さらに弁尖と人工血管前壁とが接触せず弁尖の開口位固定が予防される 。 これら特徴が良
好な臨床成績につながっていると考えられる 。
さらに本導管の弁機能を実証するため模擬回路上で流体力学的に評価した。流量 1
.5
L/
mi
nにおける弁圧較差や、どの流量でも閉鎖不全が制御されている点は 16m m径導管
の臨床結果と一致していた。そして PIVによる血流可視化は想定以上の乱流を生じた。従
って、本導管を次回導管置換までの姑息手段とし、患者が成長した後、生理的で乱流が少
ないと期待できる半月弁形態の導管へ置換することが望ましいと考えられた。
【結論】
本研究者は、湾曲形かつ手作りの 二尖弁を内挿した導管を開発し、閉鎖不全を制御する
ことで良好な臨床成績を示した価値ある結果であると認める 。 よって、本研究者は、博士
(医学)を得る資格があると認める 。

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