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大学・研究所にある論文を検索できる 「Development of d/π Electron-Proton-coupled Functionalities in Metal Dithiolene Complex Crystals」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Development of d/π Electron-Proton-coupled Functionalities in Metal Dithiolene Complex Crystals

横森, 創 東京大学 DOI:10.15083/0002006706

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名 横森



本論文は 5 章からなる。第 1 章では、本研究の背景として、電子とプロトンがカップ
ルした新機能について、その舞台である機能性分子性物質、および分子性結晶中の水素
結合、水素結合中のプロトンとカップルして電子状態の変化を起こす電子―プロトンカ
ップル型機能、電子―プロトンカップル型機能性物質としての金属ジチオレン錯体他に
ついて解説されている。さらに、本研究の目的として、金属ジチオレン錯体結晶におい
て、d/π電子とプロトンがカップルした新たな機能を開発することが述べられている。具
体的には、金属として、金、ニッケル、亜鉛を用いた新規金属ジチオンレン錯体結晶を
作製し、その結晶および電子構造と物性を調べ、d/π電子とプロトンがカップルした新た
な電子機能および光学機能を明らかにし、その機能の起源を解明することが目的である
と記述されている。
第 2 章では、水素結合能を有するカテコール基が縮環した金ジチオレン錯体を合成し
たところ、金属ジチオンレン錯体では初めて、三次元水素結合型アニオンフレームワー
ク構造を構築したことが述べられている。さらに、含まれる溶媒により、2 次元シートか
ら 3 次元フレームワーク構造まで作製できることが述べられている。そして、金属カテ
コール縮環型ジチオンレン錯体が、d/π電子と共に水素結合型分子性のフレームワーク構
造を構築する良い積み木単位となることが記述されている。
第 3 章では、新規に合成したカテコール縮環型ニッケルジチオンレン錯体で、合成時
の溶液におけるプロトン移動とカップルした電子移動を通して、得られた結晶で脱プロ
トン化とカップルした磁性機能の変化を見出したしたことが述べられている。再結晶溶
媒により、カテコール縮環型ニッケルジチオンレン錯体は、その溶媒を含む 2 次元シー
トあるいは 3 次元フレームワーク構造を持つ錯体構造を構築することが述べられている。
テトラヒドロフランを再結晶溶媒とした場合、脱プロトンと還元が起こり、ニッケル錯
体は非磁性であることが電子スピン共鳴(ESR)で明らかにされる一方、ジメチルスルホキ
シドの再結晶では、水素と電子の移動は起きず、磁性金属錯体となることが ESR で
調べられたと記述されている。
第 4 章では、合成した亜鉛ジチオレン錯体において、プロトンを介した水素結合形成
とカップルした電子移動により、新たなベイポクロミズムを発見したこと述べられてい
る。 溶媒を含まない亜鉛ジチオレン錯体をメタノール蒸気にさらしたところ、色がオレ
ンジから黄色へ、また発光色もオレンジから黄色へ変化したことが述べられている。さ
らに、真空中に置くと、黄色から元のオレンジと色及び発光色は戻ることが述べられて
いる。単結晶構造解析により、含溶媒化及び脱溶媒化により、色及び発光色変化を伴う
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固相―固相転移を起こすこと、さらに H2O 蒸気下でも同様の色変化が調べられたことが
記述されている。これらの溶媒蒸気下において、可視光吸収で 0.12-0.16eV、発光で0.
10-0.14eV のブルーシフトが起こっていることが定量的にも明らかになったことが述べ
られている。その起源を調べるために第一原理計算を行ったところ、プロトンを介した
水素結合形成で、亜鉛錯体と溶媒分子の分子軌道間の混成が起こり、亜鉛錯体から溶媒
分子へ電子移動が起こったためで、電子―プロトンカップル型のベイポクロミズムであ
ることが明らかになったことが記述されている。
第 5 章は、まとめが述べられている。
以上、論文提出者は、d/π電子とプロトンのカップルによる新たな機能を開発したこと
を述べている。つまり、2 章では、金ジチオレン錯体で d/π電子とプロトンのカップル
により 3 次元水素結合型フレームワークが構築しうることを明らかにし、3 章ではニッケ
ルジチオレン錯体で脱プロトンとカップルして磁性機能の変化が起こることについて述
べ、さらに 4 章では亜鉛ジチオレン錯体で、d/π電子とプロトンのカップルを起源とし
たベイポクロミズムを発見し、高性能金属錯体の物質開発設計に対する重要な指針を与
えたといえる。
なお、本論文第 2-4 章は、上田 顕、東野寿樹、熊井玲児、村上洋一、出倉 駿、藤
野智子、河村光晶、尾崎泰助、森 初果との共同研究であるが、論文提出者が主体とな
って合成、測定、及び検証を行ったもので、論文提出者の寄与が十分であると判断する。
したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。
以上

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