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大学・研究所にある論文を検索できる 「Research toward Functionalization of Triphenylmethyl Radical by Chemical Modification」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Research toward Functionalization of Triphenylmethyl Radical by Chemical Modification

長町, 伸宏 大阪大学

2021.03.24

概要

有機ラジカルは不対電子に由来する特異な反応性や電子物性を示す。その中でも、トリフェニルメチルラジカル(TPM)は最初に発見された安定な炭素中心ラジカルとして知られ、古くから盛んに研究が行われている。置換基の存在しないTPMにおいては、ラジカル単量体は酸素の存在しない溶液中でσダイマーとの平衡で存在するが、固体状態ではσダイマーとしてのみ単離され、そのσダイマーも酸素雰囲気中では徐々に過酸化物へと分解してしまう。このように依然として不対電子に由来した高い反応性を有するTPMであるが、適切な化学修飾を施すことによって、閉殻化合物に匹敵する安定性を付与し、さらに不対電子に由来した電子物性を材料化学へ応用することが可能となってきた。しかしそのような報告例はいまだごく少数に限られている。そこで本論文では、将来の材料化学分野への応用を目指し、閉殻化合物に匹敵する安定性と開殻化合物に由来する機能性を両立した新たなTPM誘導体の創出を行うこととした。本研究を通じて得られた知見は、TPMに限らない新たな機能性開殻分子の設計指針となり得る。
 第一章では研究背景や本論文の目的、論文の構成について述べる。
 第二章および第三章では、ハロゲン結合によるTPMの結晶構造の制御を目指して多ハロゲン置換型TPM誘導体2-CI・2-Br・2-Iを設計し、それらの合成と物性測定について述べる。これらの誘導体においては、①『不対電子の反応性の低下』および②『ハロゲン結合能の向上』を目的として電子求引性の高いフッ素原子を導入した。実際に酸素溶存溶液中において、いずれも1週間程度の半減期を示し、炭素中心ラジカルとしては高い安定性を示した。また X線結晶構造解析からは、固相状態で2-CIは塩素原子3つが正三角形を描くように3分子が配列していたのに対し、2-Iは分子が反転しつつヨウ素原子どうしが接近し、一次元的に配列していた。なお、2-Brからは、双方の集積化構造が確認された。このような集積化構造の差異は塩素・臭素・ヨウ素原子のサイズに起因した立体的要因に加えて、ハロゲン結合とそれ以外の分子間相互作用(CF-πおよびF-F相互作用)のどちらが支配的であるかに起因することが量子化学計算の結果から示唆された。さらにこれらの単結晶を用いてSQUID測定を行ったところ、観測された磁化率の温度依存性が2-CIではCurie-Weiss則(θp = -1.3 K)に従うのに対して、2-Brと2-Iでは一次元ハイゼンベルグ型反強磁性モデル(J/kB = -13~19 K)に従うことが分かった。以上の結果から、有機ラジカルの集積化構造、ひいてはスピン間に生じる交換相互作用の大きさを制御する手段として、ハロゲン結合が有用であることが実証された。
 第四章および第五章では、外部刺激に応じて電子物性のチューニングが可能な有機ラジカルの実現を目指し、窒素導入型TPM誘導体4.1・4.2・4.3を設計し、それらの合成と物性測定について述べる。これらの誘導体において窒素原子は、①『二量化反応の抑制』および②『プロトン受容体』という2つの役割を担っている。実際に酸素溶存溶液中において、いずれも1ヵ月を越える半減期を示すとともに、低温条件においても二量化挙動を全く示さなかった。またBrønsted酸に対する応答を調べたところ、4.1および4.2はアクリジン窒素のプロトン化に起因して吸収スペクトルおよび還元電位が変化し、さらに塩基添加によって可逆的に脱プロトン化が生じることを見出した。一方、4.3も Brønsted酸の滴下によって吸収スペクトルを変化させたものの、塩基添加による可逆性は示さず、4.3に水素原子が付加した閉殻化合物の存在が確認された。この結果は4.3に対してプロトンが付加した化学種の高い酸化電位を有しており、溶媒分子の一電子酸化が生じたと考察している。これらの結果から、プロトン付加によって生じた正電荷は分子内に広く非局在化していることが示唆された。

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