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Trefoil factor family 1 inhibits the development of hepatocellular carcinoma by regulating β-catenin activation.

Ochiai, Yosuke 落合, 洋介 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
肝細胞癌は予後不良の疾患であり、世界で 5 番目に多い癌腫で、罹患率はアジア、アフリカ地域で約 80%を占める。いまだに再発率や致死率が高値であり、その発生のメカニズムの解明や新規治療法の開発は急務である。肝細胞癌患者は B 型肝炎や C 型肝炎、非アルコール性脂肪肝炎などの慢性炎症疾患を罹患し、硬変肝を呈していることが多い。慢性肝障害や硬変肝では慢性炎症による肝細胞の破壊・再生の反復が遺伝子異常を引き起こし、前癌病変、腫瘍形成へとつながると考えられる。Trefoil Factor Family 1(TFF1)は主に胃粘膜上皮で分泌される蛋白であり、粘膜上皮の修復・再生機能を持つとされている。近年、胃癌に対して腫瘍抑制効果を呈する報告が相次ぎ、当教室においては膵癌に対しても抗腫瘍効果があることを証明している。今回我々は、肝臓と膵臓が発生学的・解剖学的に類似している点に着目し、肝臓における TFF1 の癌抑制作用について検討したので報告する。

【対象および方法】
肝細胞癌に対する外科切除標本を用いて、免疫染色により正常肝、障害肝(HBV 肝炎、HCV 肝炎、アルコール性肝炎)、肝細胞癌における TFF1 の発現を確認した。また、Methylation-specific PCR(MS-PCR)により TFF1 の promotor 領域の methylation を評価することで、肝細胞癌における TFF1 発現制御を確認した。次に、ヒト培養肝細胞癌株(Huh-7, HepG2, HLE)に plasmid を導入して TFF1 を強制発現させ、その変化を観察した。評価には、Cell proliferation assay、Apoptosis assay、Western blotting(WB)、 qRT-PCR、Immunofluorescence assay を用いた。また、recombinant TFF1 を投与することで plasmid での強制発現と比較し TFF1 の作用機序について検討した。動物実験では、肝細胞特異的に KRAS(G12D)変異を誘導する肝細胞癌自然発癌モデル(KC: LSL- KRASG12D / Alb-Cre)に TFF1-knockout: TFF1-/-を交配し、KC/TFF1-/-を作成した。TFF1欠損による腫瘍の発生率、生存率への影響を観察し評価した。また、生じた肝腫瘍に免疫染色を施行し腫瘍の生物学的特徴を評価した。

【結果】
免疫染色では、ヒト正常肝細胞に TFF1 の発現はほぼ認められなかった。しかしながら、障害肝、肝細胞癌においてその発現は増加し、ヒト肝細胞癌の約 30%で TFF1強陽性を呈した。また、TFF1 強陽性の癌細胞では増殖の指標となる PCNA が陰性を示し、相補的な関係を呈していた。MS-PCR において TFF1 の promotor 領域の methylation は、正常肝に比べ障害肝、肝細胞癌で高頻度に認められた。vitro では plasmidによる TFF1 強制発現により、すべてのヒト培養肝細胞癌株で細胞増殖活性の低下を認め、apoptosis が誘導された。また、免疫染色で TFF1 発現群でのβ-catenin の核内移行が低下していることから、β-catenin の不活性化が示唆され、WB においても同様の所見が得られた。肝細胞癌における重要な発癌経路の一部である Wnt 経路の mRNA (AXIN2, EPHB3, ZCCHC12, TCF7 and CCND1)は、plasmid 群、recombinant 群ともに、TFF1 投与によって発現が低下していた。以上の結果から、TFF1 は Wnt 経路を介して β-catenin の活性化を阻害することで癌抑制作用を呈すると考えられた。次にマウスモデルにおいて、KC 群と KC/TFF-/- 群で肝腫瘍の発生率を比較した(Fig. A)。生後 6か月の KC 群では肝腫瘍は認められなかったが、KC/TFF-/- 群では約半数に肝腫瘍が認められた{KC 群 vs KC/TFF-/- 群:0% (0/4) vs 57% (4/7)}。生後 12 か月においても KC/TFF-/- 群で腫瘍の発生率が高値であり{KC 群 vs KC/TFF-/- 群:64% (9/14) vs 92% (11/12)}、さらに KC/TFF-/- 群で生存率が有意に低下していた(p = 0.046; Fig. B)。両群にできた肝腫瘍は被膜を有し腫瘍細胞には異型を認め、AFP 陽性、CK19 陰性であったため肝細胞癌と判断した。KC/TFF-/- 群に生じた肝細胞癌では核内β-catenin 陽性率が優位に高く、vitro の結果と合致していた。またヒト肝細胞癌においても、TFF1 陽性細胞とβ-catenin 核内陽性細胞は相補的な関係であることが確認された。

【考察】
本研究では、肝細胞癌の外科切除標本、ヒト培養肝細胞株、肝細胞癌自然発癌モデルマウスを用いて、TFF1 と肝細胞癌発生との関連性について検討した。TFF1 は Wnt経路を抑制しβ-catenin の活性化を制御することで、細胞増殖活性を低下させ apoptosisを誘導していた。ヒト肝細胞癌において確認された TFF1 陽性細胞とβ-catenin 核内陽性細胞の相補性は、同実験を裏付ける結果であった。一方で、TFF1 の欠損は、マウスモデルにおいて腫瘍形成を促進させ、その予後を低下させた。また TFF1 の promoter領域における methylation はヒト肝細胞癌症例に高頻度で認められ、TFF1 発現の抑制が癌化の一因となる可能性が示唆された。これらの結果から、TFF1 は肝細胞癌に対して癌抑制作用を呈すると考えられた。また、細胞外から TFF1 を投与しても plasmid によって強制発現させた場合と同様の効果が期待できることから、臨床応用が比較的容易であることが予想され、TFF1 は新規治療法の開発という点で大きな可能性を秘めていると考えられた。しかしながら、その作用機序について、いまだ解明できない点が多々あり、さらなる検討が必要である。

【結論】
TFF1 はβ-catenin の活性化を制御することで肝細胞癌に対して抗腫瘍効果を示す可能性が示唆された。

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