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Trefoil factor family 2 inhibits cholangiocarcinogenesis by regulating the PTEN pathway in mice

長谷部, 圭史 名古屋大学

2022.07.04

概要

【緒言】
胆管癌は肝原発悪性腫瘍のうち2番目に頻度の高い疾患であり、世界的にも癌関連死亡の原因の約3%を占めている。その予後は不良であり、診断後の平均生存期間は2年未満とされている。遠隔転移がなく手術で切除し得た胆管癌でもその5年生存率は20-40%にとどまっており、また化学療法の効果も限定的である。胆管癌に代表的な遺伝子異常としては癌抑制遺伝子であるPTEN遺伝子の異常が指摘されているが、その詳細は未だ明らかではない。胆管癌の発癌メカニズムの解明および新規胆管癌治療薬の開発は喫緊の課題である。

【対象および方法】
名古屋大学医学部附属病院において肝切除を施行されたヒト胆管癌の標本23例、28領域を評価した。組織学的な内訳は高分化癌・乳頭癌が6例、中分化癌が16例、低分化癌・硬癌が6例であった。また肝発癌マウスモデルとして、遺伝子改変肝特異的活性化型KRASノックインマウス(Alb-Cre/LSL-KRASG12D;KC)とTFF2遺伝子ノックアウトマウス(TFF2KO)を用いた。両マウスを交配しKC/TFF2KOマウスを作成し、その肝臓および胆管を評価した。ヒトおよびマウスの組織標本はHE染色および免疫染色にて評価した。

また、ヒト胆管癌培養細胞株であるHuCCT1に対して、TFF2過剰発現プラスミドベクターを用いてTFF2の発現を導入し、TFF2の胆管癌細胞に対する影響を評価した。ベクター導入の方法はelectroporationとlipofectionを用いた。細胞は免疫染色、ウエスタンブロット法、real time PCR、WST-1アッセイ、細胞浸潤アッセイ(Boyden-chamber assay)、細胞遊走アッセイ(Scratch assay)、アポトーシスアッセイ(Muse TM Annexin V & Dead Cell Kit)を用いて評価した。結果はすべてSPSSを用いて解析した。

【結果】
ヒト胆管癌標本を用いて、腫瘍細胞のTFF2発現を免疫染色で評価した。発現の強さから、negative、weak、strongの3段階に分類した。結果、胆管癌の前癌病変であるBilIN (Biliary Intraepithelial Neoplasm)や胆管癌の一部にTFF2の発現を認めた(Fig.1A,B)。胆管癌においては特に高分化癌においてTFF2の発現が多くみられた(Fig.1C)。これらの結果から、TFF2は胆管癌発癌過程に関与していることが示唆された。

次に培養胆管癌細胞HuCCT1でのTFF2強制発現の効果を検討した。electroporationを用いて発現導入した細胞では、細胞免疫染色により濃度依存的なTFF2陽性細胞の増加を確認した(Fig.2AB)、またTFF2による細胞増殖能の低下が認められた(Fig.2C)。Lipofectionを用いて発現導入した細胞では、realtime PCRとウエスタンブロット法により濃度依存的なTFF2の発現増加を確認し(Fig.2D,E)、またTFF2によるアポトーシスの増加が認められた(Fig.2F,G)。また細胞浸潤アッセイではTFF2による浸潤能の低下を示し、細胞遊走アッセイでは遊走能も低下を示した(Fig.3)。これらの結果は、TFF2は胆管癌細胞の増殖・浸潤を抑制し、細胞死を誘導することを示している。

またPTENシグナル伝達経路が胆管癌において重要な役割を果たすことを考慮し、TFF2とPTENの関係についてウエスタンブロット法を用いて検討した(Fig.4)。結果、PTENの発現はTFF2プラスミド導入群と対照群の間で変化を認めなかったが、不活性型であるpPTENはTFF2プラスミド導入群で容量依存的に低下を示し、相対的にPTENが活性化されていると考えられた。またPTENシグナル伝達経路の下流にあるAKTのリン酸化を評価したところ、対照群と比較しTFF2導入群において、AKTの活性型であるpAKTの減少を示し、AKTもTFF2によって抑制されることが示唆された。これらの結果は、TFF2は癌抑制因子であるPTENを活性化することで癌抑制作用を発揮していることを示唆している。

次に、12か月齢のKCおよびKC/TFF2KOから肝臓と胆管を採取し、これを組織学的に評価した。結果、KC/TFF2KOマウスでは肝門部胆管にBilINの発生を12例中11例と高頻度に認めた(Fig.5A,B)。これらはKRAS活性化を背景としたTFF2の欠損が肝門部胆管に前癌病変を引き起こすことを示唆している。また免疫染色法で評価したところ、正常胆管上皮細胞では全例にPTENの発現が認められるのに対して、KC/TFF2KOマウスに発生したBilINにおいてはPTENの発現は13例中2例しか認められなかった(Fig.5C,D)。これはTFF2の欠損がPTEN発現の低下を介してBilINの発生につながったことを示唆している。さらにKC/TFF2KOマウスの一部ではBilINの発生に加え、その近傍から腫瘍の発生も認めた(Fig.6)。腫瘍細胞はCK19陽性、AFP陰性であり、胆管癌として矛盾しない形質を示した。またPTENは陰性であった。これらの結果は、TFF2はBilINおよび胆管癌の発生を抑制する作用を持つことを示唆している。

【考察】
今回我々は胆管上皮の癌化過程にTFF2の発現が関与していることを明らかとし、かつTFF2はPTENシグナル経路の抑制を介して、胆管癌に対して腫瘍抑制因子として機能していることを見出した。

これまでの報告で、PTENと胆管癌の関係は遺伝子改変マウスを用いて明確に示されている。これはPTEN欠損マウスに胆管癌が発生する事から明らかとされた現象であるが、一方で胆管癌におけるPTEN遺伝子の変異は頻度としては低く、実際にPTEN経路の異常が胆管癌発生に寄与する機序については明らかにされていない。しかしながらPTENの作用は遺伝子そのものの異常のみならず、転写後の修飾によっても制御されることが明らかとなりつつある。その点では、今回の研究でBilINおよび胆管癌が発生したKC/TFF2KOマウスでは理論的にはPTEN遺伝子は正常であり、TFF2によるPTEN経路への干渉は転写後修飾によるものと考えられる。実際、PTENのリン酸化はinvitroでのTFF2発現と関連しており、今後はTFF2によるPTEN修飾の詳細なメカニズムを明らかにすることが求められる。

今後の展望
胆管癌に対する治療は外科的切除が唯一の根治的治療法だが、発見された時点で転移が見つかって切除できないことも多いのが現状で、化学療法も効果が限定されている。今後TFF2の抗癌作用を利用する新たな治療法も期待される。

【結語】
TFF2は胆管癌に対して、抗腫瘍効果を呈する可能性が示唆された。

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