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大学・研究所にある論文を検索できる 「Effect of Plasma-Activated Lactated Ringer’s Solution on Pancreatic Cancer Cells In Vitro and In Vivo」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Effect of Plasma-Activated Lactated Ringer’s Solution on Pancreatic Cancer Cells In Vitro and In Vivo

Sato, Yusuke 佐藤, 雄介 名古屋大学

2020.04.02

概要

【緒言】
膵癌の腹膜播種は重大な予後規定因子であるだけでなく、消化管閉塞や腹水などにより、患者の quality of life を著しく低下させる。全身化学療法や抗癌剤の腹腔内投与など各種治療が試みられているが、効果的な治療戦略は確立されておらず、新たな治療法が求められている。

近年、種々の癌細胞に対するプラズマの抗腫瘍効果が報告され、新たな癌治療法として注目されている。プラズマを癌細胞に照射することによりアポトーシスが誘導されることが各種の癌腫において報告され、プラズマの直接照射として知られる。さらに、プラズマを照射した培養液(plasma-activated medium; PAM)にも抗腫瘍効果があることが示され、プラズマの間接照射として注目されている。プラズマの間接照射は体腔内の病変に対してもプラズマの作用を及ぼすことが可能となり、液体であれば腹膜播種のような多発病変に対しても、広く暴露させることが可能であるため、腹膜播種治療への応用が期待される。当教室ではこれまでプラズマの間接照射として、プラズマ照射培養液の抗腫瘍効果を報告してきた。しかしながら、培養液は臨床での使用には適さず、人に投与可能なプラズマ活性溶液の作成が求められる。今回、乳酸リンゲル液にプラズマ照射した plasma activated lactated Ringer’s solution(PAL)を作成し、in vitro 及び in vivo にてその有効性につき検討した。

【対象および方法】
4 種の膵癌細胞株(Capan-2、BxPC-3、AsPC-1/CMV-Luc、MIA PaCa-2)を用い、in vitroの実験を行った。60 mm dish に乳酸リンゲル液または培養液を 6 ml を加え、プラズマを 3 分間照射して PAL 及び PAM を作成した。まず PAL の抗腫瘍効果を MTS assay にて評価した。PAL、PAM を段階的に希釈して強度を変化させ、24 時間培養した細胞に PAL、PAM をそれぞれ 2 時間曝露させて 24 時間後に MTS assay にて細胞障害性を評価した。つづいて細胞障害メカニズム について検討するために TUNEL assay を行った。PAL の抗腫瘍効果の要因と想定される、ROS の関与について検証するため、細胞内ROS の検出薬であるCM-H2DCFDA を用いてROS の細胞内への取り込みを評価し、さらに ROS の scavenger である N-acetyl cysteine(NAC)を PAL と併用し、抗腫瘍効果への影響を MTS assay にて評価した。続いて、PAL は接着能に及ぼす影響評価するため、浮遊状態にした膵癌細胞に PAL を短時間曝露させ、コラーゲンコーティングしたプレートへの接着率を MTS assay にて評価た。最後に、ルシフェラーゼ発現膵癌細胞株(AsPC-1/CMV-Luc)を PAL と共にヌードマウスの腹腔内へ播種し、PAL の腹腔内への反復投与を行い、in vivo イメージングにて経時的に播種の形成状況を評価した。コントロール群ではプラズマ未照射の乳酸リンゲル液を腹腔内投与した。さらに投与開始 15 日目に開腹して腹膜播種の形成状況、有害事象の有無について評価を行った。

【結果】
MTS assay では全ての細胞株において、PAM と同様、PAL の強度依存性の抗腫瘍効果を認めた。PAL の感受性は細胞株によって差異を認めたものの、8 倍以下の希釈においてはほとんど全ての細胞が死滅した。TUNEL assay では PAL 暴露群では TUNEL陽性となり、PAL による apoptosis の誘導が示された。ROS の検出試験では、プラズマ未照射の乳酸リンゲル液でも一部の細胞で ROS の産生を認めたが、PAL を投与した場合にはより多くの細胞で ROS の取り込みを認めた。また、ROS の scavenger である NAC 併用下では、全ての細胞株において PAL の抗腫瘍効果は阻害された。adhesion assay では強度の弱い PAL は接着能に影響しなかったが、強度の強い PAL では短時間の暴露でもコラーゲンコーティングプレートへの接着率が著明に低下した。

マウス腹膜播種モデルにおいては、control 群では経時的に腹膜播種の増大を認めたのに対し、PAL の腹腔内投与群では腹膜播種形成が抑制された(Fig. 1)。開腹所見でも PAL 投与群で腹膜播種結節の個数が有意に少なかった。また、実験期間中、両群とも体重減少や食事摂取量の低下はなく、開腹所見でも有害事象は特に認めなかった。

【考察】
PAL に膵癌細胞株に対する強度依存性の抗腫瘍効果があることが示された。その作用機序として PAM と同様に apoptosis の誘導が一因であると考えられ、NAC により抗腫瘍効果は阻害されており、ROS の産生が関与していると考えられた。

腹膜播種形成の初期過程において、細胞の接着能が関与するとされる。プラズマの直接照射が細胞表面のカドヘリンやインテグリンの発言に影響を及ぼし、脂肪の剥離現象をきたすことは従来から指摘されていた。本研究では、プラズマの間接照射でも接着能に影響を及ぼすことが示された。このメカニズムがより詳細に解明されれば、より効率的なプラズマ活性溶液の開発につながると考えられる。

本研究ではこれらの in vitro の結果を元に、マウスへの PAL の腹腔内投与を行った。癌細胞の腹腔内投与と同時に PAL の投与を開始するという条件のもとではあるが、 PAL の腹腔内投与により播種形成抑制効果が得られ、大きな有害事象も認めなかった。腹膜播種の完全な抑制にまでは至っていないが、膵癌手術において、PAL を用いた術中腹腔内洗浄を行うことで、腹膜播種形成の予防へつながるのではないかと期待している。今回、臨床で使用可能なシンプルな組成からなる溶液である乳酸リンゲル液を用いプラズマ活性溶液である PAL に、膵癌に対する抗腫瘍効果があることが示され、臨床応用に一歩近づいたといえる。今後さらに強力な PAL の作成が可能となれば、 PAL が膵癌治療における、新たな治療選択肢となる可能性がある。

【結語】
膵癌細胞株において PAL の抗腫瘍効果を認め、作用機序として ROS が関与した apoptosis の誘導が一因であると考えられた。動物実験では、PAL の腹腔内投与により腹膜播種の形成が抑制され、PAL の腹腔内投与が膵癌腹膜播種に対する新たな治療戦略の一つとなる可能性が示唆された。

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