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大学・研究所にある論文を検索できる 「Risk factors for intraocular pressure elevation following Descemet membrane endothelial keratoplasty in Asian patients」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Risk factors for intraocular pressure elevation following Descemet membrane endothelial keratoplasty in Asian patients

井田 泰嗣 横浜市立大学

2023.02.28

概要

1.序論
角膜内皮疾患に対する角膜移植手術は,侵襲の大きい全層角膜移植術から,侵襲の少ない角膜パーツ移植へ,近年変遷してきている.角膜パーツ移植の中でも,デスメ膜角膜内皮移植術(Descemet membrane endothelial keratoplasty: DMEK)は,角膜内皮細胞とデスメ膜を移植する手術方法である.DMEK は,他の角膜移植術と比べて視力回復において優れており,移植後の眼圧上昇や拒絶反応が起こりにくいなどの術後合併症が少なく,長期的な予後が良好である(Woo et al., 2019).角膜移植術の術後合併症のうち,眼圧上昇は DMEK においても視野障害を進行させて失明に繋がる重要な合併症の一つである(Borderie et al., 2016).
DMEK 術後の眼圧上昇には以下のような2つのタイプがある.
①早期タイプ:術後急性期において,前房へ注入した気泡が後房へ移動することで生じる眼圧上昇.
②後期タイプ:術後,前房内の気泡が消失してから生じる眼圧上昇.
眼圧上昇の早期タイプの原因については,特定されており,対処方法もあり臨床上大きな問題にはならない.一方,後期タイプの眼圧上昇の原因については,術後のステロイド点眼や術前における緑内障の診断(既往の緑内障)といった要因が,一部特定されている が,報告はわずかである.後期タイプの眼圧上昇の要因についての詳細な分析は,臨床上の研究課題であった(Naveiras et al., 2012,Maier et al., 2014).本研究では,アジア人患者におけるDMEK 術後の眼圧上昇に関するリスク因子について解析した.

2.対象と方法
2015 年 1 月から 2021 年 2 月までに横浜南共済病院において,DMEK を施行された患者に関する後向きコホート研究である.本研究は横浜南共済病院倫理委員会により承認された(承認番号 YKH_1_19_11_11).最短 6 か月の観察期間を満たした患者について,最長で術後 36 か月までの術後データを収集した.
DMEK 術後の「眼圧上昇」を,①術後眼圧が 22mmHg 以上になる,もしくは,②術前眼圧より 10mmHg 以上上昇する,以上のどちらかを満たすものと定義した.眼圧上昇に関するリスク因子に関して,まずは単変量ロジスティック回帰分析を行い,その結果に基づいて P<0.05 を満たした因子について,多変量ロジスティック回帰分析(変数減少法)を行う計画とした.
また,DMEK 術後の「最大眼圧」を,手術後 1 か月から 36 か月までに測定された眼圧値の中での最大眼圧値として定義した.術後最大眼圧に関する予測因子に関しても,まずは単変量線形回帰分析を行い,その結果に基づいて P<0.05 を満たした因子について,多変量線形回帰分析(変数減少法)を行う計画とした.
眼圧測定は,iCare(ic200; Icare Finland, Vantaa, Finland)を使用して測定した.眼圧は, DMEK の 1,2,3,6 か月後,そしてその後は 6 か月毎に,術後 36 か月まで測定した.

3.結果
90 眼が登録され,平均年齢:74.9 ± 7.5 歳,平均観察期間:25.6 ± 9.9 ヶ月であった.
眼圧上昇は 19 眼(21%)に観察された.平均眼圧は術前 12.6 ± 3.9 mmHg から,DMEK術後 36 か月までの最大眼圧において 17.0 ± 5.5 mmHg まで有意に上昇した(P < 0.0001).
眼圧上昇に関する単変量ロジスティック回帰分析において,「偽落屑症候群と既往の緑内障」が有意なリスク因子として特定された(P <0.05).「偽落屑症候群も既往の緑内障もない群」と比較して,「偽落屑症候群のない既往の緑内障群」(オッズ比:19.33;95%CI,4.75–93.46),「緑内障を発症していない偽落屑症候群」(オッズ比:7.25;95%CI, 1.20–41.63),「落屑緑内障群」(オッズ比:58.00;95%CI,6.78–1298.29)は,それぞれ眼圧上昇に関する有意なリスク因子であった.
また,最大眼圧に関する単変量線形回帰分析により,「偽落屑症候群と既往の緑内障」,「術前眼圧(連続変数)」,「術前眼圧(12mmHg で区切ったカテゴリー型変数)」「最大眼圧時におけるステロイド点眼の種類」の 4 つの因子が P<0.05 を満たした.さらに,多変量線形回帰分析のステップワイズ法(変数減少法)により「偽落屑症候群と既往の緑内障」,「術前眼圧(12mmHg で区切ったカテゴリー型変数)」の二つの要因が,最大眼圧に対する有意な予測因子として特定された.「術前眼圧(12mmHg で区切ったカテゴリー型変数)」に関して,「術前眼圧 12mmHg 未満の群」と比較して,「術前眼圧 12mmHg 以上の群」では,最大眼圧が 3.90mmHg 高かった.さらに「偽落屑症候群と既往の緑内障」に関して,「偽落屑症候群も既往の緑内障もない群」と比較して,「偽落屑症候群のない既往の緑内障のある群」,「落屑緑内障群」では,それぞれ 4.50mmHg(95% CI,1.86–7.15), 9.08mmHg(95% CI,4.94–13.21),最大眼圧がより高かった.

4.考察
本コホート研究において,「偽落屑症候群と既往の緑内障 」が DMEK 術後の眼圧上昇のリスク因子として特定された.また「偽落屑症候群と既往の緑内障 」と「術前眼圧」は, DMEK 術後の最大眼圧の予測因子であった.今後,眼圧上昇のリスク因子および最大眼圧の予測因子を有する患者については,DMEK の術後眼圧管理を厳密に行う必要がある.また術後のステロイド点眼薬については,本研究では DMEK 術後の眼圧上昇のリスク因子として特定されなかったが,術後眼圧上昇のリスク因子であるとの報告もあり(Maier et al., 2021),臨床上注意が必要であり,今後のさらなる症例蓄積と研究が必要である.

参考文献

An open-label, prospective, single-arm study of switching from infliximab to cyclosporine for refractory uveitis in patients with Behçet's disease in long-term remission

Ida, Y., Takeuchi, M., Ishihara M., Shibuya, E., Yamane, T., Hasumi, Y., Kawano, S., Kimura, I., Mizuki, N:雑誌名 Japanese Journal of Ophthalmology, Vol. 65, No. 6, Page843-848(2021)

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