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大学・研究所にある論文を検索できる 「Active voluntary contraction of the ruptured muscle tendon during the wide-awake tendon reconstruction」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Active voluntary contraction of the ruptured muscle tendon during the wide-awake tendon reconstruction

頭川 峰志 富山大学

2020.12.23

概要

〔目的〕
手の運動機能を果たす上で腱は必須な組織である。変形性関節症、関節リウマチ、感染などの疾患はしばしば腱断裂を引き起こし、これに対する治療として再建手術を要する。しかし、これらの疾患では腱断端の変性が著しく、筋肉も短縮している状態になっているため、完全な修復は不可能である。従って腱の再建には、断裂した筋腱を動力源として欠損部に移植腱を挟む橋渡し腱移植術と、動力源を別の筋腱に求める腱移行術が行われている。しかし、腱移植術には腱癒着や関節拘縮が高率に生じることや、腱移行術には運動様式の再教育が難しいという問題がある。このため、どちらの方法を選んでも再建後に獲得できる可動性は不明であり、断裂腱の再建は結果が予想しにくい難しい手術といえる。この理由として、全身麻酔や腕神経叢ブロックで筋弛緩が効いた状態においては、筋腱の状態を知る手がかりは引き出せる距離のみであり、手術法の決定や術式の詳細は術者の勘や経験に頼るしかないこと、さらに、手術後は創部の痛みや腱の癒着があるため、手術後数か月経過しないと実際に指がどの程度動くかの治療成績の評価ができないことが挙げられる。これらに対する解決の糸口は 2 点考えられる。1つは断裂して陳旧化した筋腱が動力源になりえるかの判断に役立つ知見を明らかにすることであり、他方は手術中に患者の自動運動を観察できるような麻酔の利用である。近年、高解像度の超音波機器の発達により末梢神経の描出が可能となり、これをターゲットにした選択的な知覚神経のブロックが行われるようになってきた。また、エピネフリン入り局所麻酔薬での手の手術の適応が拡大しており、これらを合わせてWide-awake surgery として報告されている。この方法は、手術中に患者自身が自動運動を行うことができ、術者も腱の滑走などが確認できるため、手術の即時的評価が可能となり、手の外科手術における有用性が大きいと考えられる。我々は、一般臨床に先駆けて Wide-awake surgery を利用し、手術中に患者の腱滑走状態と手の動きを確認しつつ腱再建を行ってきた。これにより今まで報告のない断裂腱の自動収縮距離の測定や指運動の即時的評価が可能となった。本研究では術中に得られた自動収縮距離と、従来の麻酔でも評価可能な他動伸長距離や断裂期間との関係を調査した。さらに本法を利用した腱再建術の治療成績を調査し本法の有用性を検討することとした。

〔方法並びに成績〕
Wide-awake surgeryにより自動運動を温存した状態で前腕部の腱移行術もしくは腱移植術を行った22例36腱を対象とした。術中に断裂筋腱の他動伸長距離(passive distraction distance、以下PDD)と自動収縮距離(active contraction distance、以下ACD)を測定し、これら2つの距離の相関と断裂から再建までの期間の関係を調査した。断裂筋腱の平均PDDは17.9 ± 5.2 mm, 平均ACDは18.6 ± 7.4 mmであり、PDDとACDは正の相関を示し(r = 0.60, P < 0.05)、ほぼ同様の距離であった。これにより、PDDを測定することでACDの予測が可能であることがわかった。断裂から再建までの期間は1~48か月(中央値3か月)であり、PDD、ACDともに断裂から再建までの期間とは相関しなかった。続いて、長母指屈筋腱陳旧性腱断裂の11例11腱に対し、これらの距離を測定し、動力源を評価した上で腱移植術あるいは腱移行術の術式選択を行い、臨床成績を評価した。PDDとACDの合計(滑走距離)が30mm以上の場合には十分な動力源であると判断し、断裂した筋腱を動力源とした腱移植術を行い、30mm未満の場合には環指浅指屈筋腱を用いた腱移行術を行った。術前、術中、最終時の自動可動域健側比(% of total active m ovevent、以下%TAM)、術前と最終時の上肢の患者立脚型機能評価簡易質問票(quick score of the Disability of the Arm, Shoulder and Hand、以下q-DASH score)にて成績を評価し、二群を比較した。長母指屈筋腱陳旧性腱断裂例では、断裂した長母指屈筋腱はPDD 15.4 ± 5.1 mm、ACD 15.2 ± 9.9 mmであり、腱移行のドナーである浅指屈筋腱はPDD 21.5 ± 5.6 mm、ACD 22.6 ± 6.8 mmであり、ともにPDDとACD はほぼ同じ長さであった。動力源が十分であると判断し腱移植術を行った症例は4例であり、腱移行術を行った症例は7例であった。術前、術中、および、最終の健常側に対する母指関節可動域の比率(%TAM)は腱移植術でそれぞれ40.4 ± 14.3%、86.7 ± 15.4%、80.8 ± 10.3%であり、腱移行術で43.2 ± 13.1%、93.2 ± 12.4%、84.3 ±12.7%であった。自動収縮距離を評価して行った2つの術式の最終可動域に有意差は見られず(p= 0.65) 、両群ともに過去の腱移植術・腱移行術の成績の報告と比較し遜色のない良好な成績であった。また、最終%TAMは平均 86%でありWide-awake surgeryでのみ測定できる術中%TA Mの平均 90%より低下していることが明らかとなった。q-DASH scoreの術前術後の変化は腱移行術が32.2から16.3、腱移植術が 16.2 から6.0 であり、二群間に有意差は見られなかった(p = 0.10)。

〔総括〕
Wide-awake surgeryでは、これまでに報告のない手術中の自動運動の即時的評価と、筋腱の自動収縮距離の測定が可能であった。ヒトの随意で測定した筋腱の自動収縮距離は、筋腱の他動伸長距離と正の相関を示し、ほぼ同様の距離であった。一方で、自動収縮距離と断裂期間とは相関しなかった。従って、筋腱の自動収縮距離は断裂して時間の経過した筋腱を再建する際に筋の変性や拘縮、新鮮なドナーの筋腱の機能を評価しうる最も重要な指標になりうると考えられた。この筋腱の自動収縮距離を評価して術式を選択した腱移行術と腱移植術の臨床成績はともに良好であった。このことから術中にこれらの測定値を術式選択の指標とすることで適切な動力源を得ることができたものと考えられる。また、手術中に手の動きを即時的に評価できるため、患者と術者の双方にとって安心な方法であった。以上よりWide-awake surgeryは臨床上の一手技として有用であり、さらに、ヒトにおいて生体で筋腱を評価できる研究手法としても有用であると考えられた。

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