リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「腱板修復術における腱配列の不一致ならびに脱神経が腱治癒に与える影響―生体力学的並びに組織学的評価―」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

腱板修復術における腱配列の不一致ならびに脱神経が腱治癒に与える影響―生体力学的並びに組織学的評価―

鈴木 貴之 東北大学

2022.03.25

概要

1.1背景・目的
腱板断裂は、中高齢者で頻度が高い疾患であり、肩関節の痛みと機能障害を生じ、患者の日常生活に支障をきたす。手術療法として関節鏡視下腱板修復術が広く行われているが、腱板修復術後の再断裂率は、特に広範囲断裂において高く、大きな問題となっている。広範囲腱板断裂に対して行われるようになった腱板再建術では、必ずしも移植腱と残存腱の線維方向が一致せずに修復される。しかし、このような手術後、腱が組織学的及び生体力学的にどのように回復しているのかは明らかではない。近年広範囲腱板断裂に、腱板を構成する棘上筋や棘下筋の支配神経である肩甲上神経麻痺を合併することで、重度の筋萎縮や脂肪浸潤をもたらすことが指摘されている。最近の基礎研究から、腱の再構築において腱組織の線維構造のリモデリングには、腱細胞の力学応答が関与することが明らかになった。肩甲上神経麻痺による棘上筋や棘下筋の伸張負荷の消失は、腱線維再構築においても負の因子として働く可能性がある。しかしながら、肩甲上神経麻痺が腱板治癒に直接的に影響していると証明している報告はない。本研究の目的は、家兎腱板修復モデルを用いて1)線維配列を90°回転させ修復を行った術後の、腱板修復腱の生体力学的並びに組織学的評価を行うこと、及び、2)肩甲上神経を切離し、力学的負荷のかからなくなった状態の腱板修復腱の生体力学的並びに組織学的評価を行うこと、である。

1.2方法
日本白色家兎(オス)44羽を使用した。家兎は切離した腱の回転(0°:棘下筋を切離後、母床の棘下筋と同じ線維配列で縫合、90°:棘下筋を切離後、母床の棘下筋に直交する線維配列で縫合)と、肩甲上神経切離の有無で4群に分けた。術後6週、術後12週で、生体力学的試験による破断強度の計測と、腱線維構造の変化の組織学的評価(ヘマトキシリンエオジン(HE)染色と偏光顕微鏡での観察)を行った。

1.3結果
生体力学的試験を行なった53肩のうち、5肩に試験前にすでに腱板の再断裂が確認された。再断裂は、神経切離を行い0°修復を行った術後12週の群に1肩、神経切離を行い90°修復を行った術後12週の群に4肩に生じていた。腱板修復腱の破断強度は4群とも経時的に増加し、とくに神経切離を行わず0°修復を行った群では、術後12週の破断強度(127.3±29.5N)は術後6週(73.6±23.7N)よりも有意に高い値となった(P=0.009)。組織学的な評価ではHE染色の観察では、術後6週では神経切離の有無、修復方法に関わらず、炎症細胞と線維芽細胞の浸潤が多くみられ不規則でやや疎である未熟な腱の線維構造が観察された。術後12週では神経切離を行い90°修復を行った群では、腱の線維構造の密度は低く、線維配向の改善に乏しかった。偏光顕微鏡を用いた評価では、術後12週で、神経切離をしないと0°、90°修復群ともに線維構造の周囲組織との配向性が高まり明度が上昇した。一方、神経切離をすると0°修復群では比較的高い明度で線維構造を呈したが、90°修復群では明度の改善はみられなかった。

1.4考察
生体力学的試験では、12週経過した神経切離群の15肩中5肩(33%)に再断裂が生じた。神経切離を行わず0°修復を行った群の術後12週では、術後6週と比較して有意に高い破断強度であった。しかし、神経切離を行わず90°修復を行なった群では、術後6週と術後12週の間に差はなかった。組織学的な評価では、神経切離を行い90°修復を行った群では術後12週での線維配向の改善が極めて乏しかった。腱板修復の際に本来の線維方向に平行に縫合修復した群では移植腱内に適切な力学応答が働き、良好な生体力学的ならびに組織学的回復が得られる。また、肩甲上神経の切離を行なったものは、腱萎縮と脂肪浸潤の進行に加えて、力学的負荷の消失と神経制御による移植腱の修復反応の遷延が生じるため、術後の生体力学的特性や線維配向改善に遷延が生じたと考えられた。本研究より、腱板修復術の際には、腱の線維方向を本来の腱線維配列とできる限り一致させて修復するべきであり、術前に肩甲上神経麻痺の存在を評価することが術後の再断裂を予測するために重要であると考えられた。

1.5結論
肩関節の腱板修復腱において、縫合する腱の線維配向と肩甲上神経の有無が、修復腱の生体力学的ならびに組織学的回復に影響する。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る