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大学・研究所にある論文を検索できる 「テトロドトキシン修飾樹脂の開発研究とビシクロ[2.2.2]オクタン骨格構築から展開するテトロドトキシンの不斉合成研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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テトロドトキシン修飾樹脂の開発研究とビシクロ[2.2.2]オクタン骨格構築から展開するテトロドトキシンの不斉合成研究

小林, 和幹 名古屋大学

2022.05.26

概要

【研究の背景】テトロドトキシン(TTX, 1)は、動物の電位依存性ナトリウムチャネル( Na ) に低濃度で選択的に結合し、その機能を阻害することから、多様な応用化が見込まれる分子である。このため、多様な TTX 類縁体を合成可能な TTX の合成経路の確立への潜在的ニーズは高いといえる。筆者は既存の TTX の合成経路を活用して TTX の類縁体を合成し、それを樹脂表面に修飾するという考えのもと、Nav に対するアフィニティー樹脂の作製を検討した。また、筆者はこれまでの合成とは異なる合成コンセプトで、 TTX の類縁体を合成可能な TTX の新規合成研究に着手した。

【アフィニティー樹脂の設計】筆者は 1 の Nav に対する高い特異性、結合力と結合様式に着目し、1 で修飾された樹脂の作製を検討した.筆者は所属研究室で確立された 1の全合成経路を活用して、1 の C11 位にアルドオキシム結合を有する TTX 誘導体を作製し、全細胞パッチクランプ法で Nav に対する阻害活性を評価したところ、0.01–0.1 μM程度と、比較的高い阻害活性を示した。この結果から 1 とリンカーをアルドオキシム結合で繋ぐことで、Nav のアフィニティー精製を行う際に高い結合能を示すことが期待された。

【アフィニティー樹脂の作成】200 μL の Affi-Gel 10 Gel に対して別途合成したリンカーを縮合させた後に、アルコキシアミンの脱保護を行なった。樹脂へのリンカーの導入効率は、アルコキシアミンの脱保護の際に生成したフタルイミドとフタルアミドの生成量を NMR 定量分析法によりそれぞれ決定した。最後にアルコキシアミンと 240 μgの 11-oxo TTX を酢酸水溶液中で結合させることで、TTX 修飾樹脂を作製した。樹脂に対する 11-oxo TTX の担持量は、樹脂の洗浄後の上澄み溶液に含まれる 11-oxo TTXの量を NMR 定量分析法にて定量化することで決定した。本研究で作製した樹脂は、 Nav の精製に用いることが期待される。

【新規合成経路の確立に向けた合成計画】既存の 1 の合成経路は供給できる TTX 類縁体の種類が限られる上、その合成には多大な労力と合成技術が要求される点で改善の余地があった。そこで筆者は既存の合成法とは異なる、1 の合成経路の確立を目的に 1の合成研究に着手した。1 の効率的な全合成を達成するには、1 のシクロヘキサン骨格上の不斉点と官能基をいかに立体選択的に揃えるかが鍵となる。そこで筆者は、1 の合成に必要な官能基と立体中心を持った骨格 2 を得るために、ビシクロ[2.2.2]オクタン骨格 3 の酸化的開裂を考案した。3 は、4 のジアスレオ選択的な分子内 Diels-Alder反応で容易に構築できると考えた。また、1 の合成に必要な官能基の足掛かりを 4 に組み入れることで、1 の合成に必要な官能基を迅速に揃えることができると考えた。光学活性な 4 の調製は、Carreira らの研究グループが開発した不斉反応を用いることで、5 から容易に調製できると考えた。

【光学活性な Diels-Alder 反応前駆体の合成】6 を出発原料とし、2 段階の既知反応を経て 7 を調製した。7 に対して、グリニャール反応を行い、9 を得た。9 に対して、Carreiraらが開発した不斉反応の改良法を適用したところ、10 を 92% の収率で得た。10 の光学純度( 96% ee)は、12 の光学純度を測定することで決定した。10 に対して、オゾン分解と還元を行い、13 を得た。オゾン分解・還元反応を経ても基質の光学純度は保持された。13 に対して光延法により、プロピオール酸ユニットを導入し、15 を得た。 TBS 基を TBAF で除去した後に、PhI(OAc)2 を作用させることで、光学活性な Diels-Alder反応前駆体 16 の合成を達成した。

Reagents and Conditions: (a) TBSCl, iPr2NEt, THF, rt, 99%; (b) MeI, K2CO3, DMF, rt, 89%; (c) 7, THF, 0 °C, 61%; (d) [{Ir(cod)Cl}2] (2.5 mol%), 11 (10 mol%), Zn(OTf)2 (20 mol%), BnOH, DCE, rt, 92%; (e) TBAF, AcOH, THF, 0 °C, 55%, 96% ee (f) O3, CH2Cl2-MeOH, –78 °C then NaBH4, –78 to 0 °C, 88%, 96% ee; (g) 14, DMEAD, PPh3, toluene-THF, 0 to 40 °C,77%; (h) TBAF, AcOH, THF, 0 °C, 84%.; (i) PhI(OAc)2, MeOH, rt, 91%.

【分子内 Diels-Alder 反応とビシクロ骨格の立体選択的官能基化】
16 を Ph2 O 中 170-185 °C で加熱することで、環化体 19 を高収率で得ることに成功した。16 のベンジルオキシ基とジメチルケタール部の立体反発のため、反応は高い立体選択性で進行したものと思われる( 17 vs. 18) 。19 に対して TBHP を用いたエポキシ化反応により、20 を得た後に、ケトンを立体選択的に還元することで、21 を得た。21をアセテート 22 へ変換した後、SmI2 を用いてエポキシドの還元的開環を行なった。エノラート 23 のプロトン化が立体選択的に進行することを利用し、4a 位の立体制御を達成した。生じた 24 の水酸基は、TES 基で保護して 25 を得た。

Reagents and Conditions: (a) BHT (20 mol%), Ph2O, 170 to 185 °C, 98%; (b) TBHP, triton B, THF-CH2Cl2, 0 °C, 82%; (c) NaBH(OMe)3, MeOH-CH2Cl2. –40 to 0 °C, 87%; (d) Ac2O, pyridine, DMAP, CH2Cl2, rt, 99%; (e) SmI2, MeOH, THF, –78 °C, 99%; (f) TESCl, imidazole, DMAP, CH2Cl2, rt, 99%.

【ビシクロ骨格の開裂反応とアミン体の合成】25 に対するオゾン分解はきれいに進行し、26 が生じた。26 を DBU と NaBH4 で連続的に処理することで、アリルアルコール 27 を得た。27 は 3 工程の反応により、ニトリル 28 へと変換した。28 のラクトンを LiBH4 でジオール 29 まで還元した後に、TEMPO 酸化により、ラクトン 30 を主生成物と し て 得 た 。 30 を 含 水 TFA で 処 理 し た 後 に 、 ケ ト ン 部 位 に 対 す る Meerwein-Ponndorf-Verley 還元を行うことで、8 位の立体制御に成功した。還元で得られた 31 と 32 の異性体混合物はアセトナイド化の条件に付すことで収束的に 33 を得た。最後に、33 のニトリル基の水和反応と続くアミドに対する Hofmann 転位を行うことで、TTX および TTX 類縁体の合成に必要な官能基と立体中心、基本骨格を持ったアミン 34 の合成を達成した。以上、ビシクロ[2.2.2]オクタン骨格構築を基軸とした合成戦略により、TTX およびその類縁体を簡便に合成するための礎を築いた。

Reagents and Conditions: (a) O3, CH2Cl2-MeOH, –78 °C then PPh3, –78 °C to rt; (b) DBU, CH2Cl2, 0 °C to rt then NaBH4, i-PrOH, 0 °C, 83% (from 25).(c) PMPOH, DIAD, PPh3, toluene, rt, 93%; (d) NH2OH·HCl, pyridine, rt ,86%; (d) MsCl, Et3N, MeCN, 0 °C to rt, 99%; (e) LiBH4, THF, 40 to 50 °Cthen MeOH, rt to 50 °C; (f) TEMPO, PhI(OAc)2, NaHCO3, MeCN, rt to 75 °C, 75%; (g) 95% TFA aq, THF, 0 °C to rt then toluene then evaporation then Al(Oi-Pr)3,i-PrOH, 95 to 105 °C, 51% (31:32=4~7:1); (h) 2,2-DMP, TsOH·H2O, CH2Cl2, rt, 93%; (i) acetaldoxime, [Rh(COD)Cl]2, toluene, reflux, 94%; (j) PhI(OAc)2, MeCN, H2O, rt then NaHCO3, 40 to 50 °C, 62%.

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