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エポキシアントラセンを経由した新規シクロパラフェニレン合成法の開発およびAcochlearineの合成研究

宮本 尚也 東北大学

2020.03.25

概要

第一部 エポキシアントラセンを経由した新規シクロパラフェニレン合成法の開発
【背景・目的】
シクロパラフェニレン(CPP) (1)は、ベンゼン環をパラ位で環状につなげた、特徴的な構造を有する分子である。近年 CPP は、カーボンナノチューブをDDS に応用するための、先駆的な研究として注目を集めているものの、その合成法Cycloparaphenylene (1)は限られていた 1。今回著者は、当研究室で開発した、エポキシアントラセン 3 を経由するジアリールアントラセン 4 の合成法 2 を応用し、直径の大きな CPP 誘導体の迅速合成法を確立した 3。

【方法・結果】
CPP の合成戦略として、エポキシアントラセン 5 の湾曲した分子構造を利用して環状分子 6 を構築し、6 を還元的に芳香環化することを計画した。まず、マグネシウムビスアミドを用いてトリフラート 8 から発生させたベンザインと、ジブロモイソベンゾフラン 9 との環化付加反応により、エポキシアントラセン 5 を合成した。X 線結晶構造解析の結果、5 は 126°の内角を有していることが明らかとなった。次に、5 を Ni(cod)2 を用いてホモカップリングさせると、環状 5,6,7 量体 6が生成し、GPC による精製の結果、これらを単離することに成功した。続いて、TFA 存在下、Et3SiH を用いる条件で、6 の芳香環化反応を試みたが、生成物は得られなかった。そこで、様々な条件を検討した結果、加熱条件下、酢酸と亜鉛を反応させた際に、収率良く芳香環化が進行することを見出した。最後に GPC と HPLC を用いた分離精製を行い、アントラセンユニットを有する CPP の 5,6,7 量体 7 の合成に成功した。なお、5 量体 7 については、その構造を X 線結晶構造解析により決定した。

【結論】
以上、エポキシアントラセンを単量体として用いた CPP の新規合成法を開発した。本法の特徴は、既存の方法では困難であった、環状 7 量体が形成できる点であり、これまで、多段階を要していた[21]CPP を、わずか三工程で合成することが可能になった。

第二部 Acochrearine の合成研究
【背景】
Acochlearine (8)は、2006 年に Meriçliらによって、トリカブト属の植物、Aconitum cochlear から単離・構造決定されたデヌダチン4アルカロイドである 。8 は、アザビシクロ[3.3.1]ノナン骨格(A/E 環)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環(B/F 環)、ビシクロ[2.2.2]オクタン骨格(C/D 環)の三つのビシクロ環が縮環した、Fsp3 係数の大きなカゴ状構造を有している。さらに、強力な生物活性を示すアコニチンアルカロイドの生合成中間体であると示唆されており、デヌダチンアルカロイドの生物活性にも興味がもたれている。しかしながら、lepenine (9)をはじめとする既存の全合成 5 では、多段階の工程数を要しているため、これらをリード化合物とする創薬研究は困難であった。そこで著者は、デヌダチンアルカロイドの中でも、未だ全合成の報告がない acochlearine (8)を標的とし、その短段階合成法の確立を目的に研究を行った。

【研究計画】
先行研究者は、文献既知の二環性エステル 10 (A/B 環)から、10 工程で E/F 環を構築し、四環性ケトン 11 を得ることに成功している 6。そこで、ケトン 11 からジエン 12 に導いた後、 Diels–Alder 反応により D 環を構築し、acochlearine (1)に導くこととした。

【D 環構築の検討】
まず、ケトン 11 のモデル基質として 2-norcampher (14)を用いて C/D 環の構築を試みた。はじめに、14 を文献既知の手法で三環性ジエン 15 に導いた後、超高圧条件下 Diels– Alder 反応を試みた。ジエノフィルとして、クロロアクリロニトリルを用い、6000 bar で反応を行なうと、ジエン 15 がアルデヒド 17 に異性化し、目的物 16 は得られなかった。この異性化は、2,6-lutidinの添加により抑制できたものの、望みの反応は進行せず、16 は得られなかった。
続いて、ジエン 15 のヒドロキシル基を足がかりに、トリエン 16 および 19 を合成し、分子内反応を試みた。しかしながら、トリエン 16 は反応性が低く、LUMO のエネルギーを下げる目的で Lewis酸を添加すると、16 の異性体 18 が観測された。一方、19 を用いた際には、加熱により Si-O 結合が切断され、アルデヒド 21 が得られた。熱に対する安定性を向上させるため、16 のメチル基をフェニル基に変更し、同様の反応を試みたが、その場合は全く反応が進行しなかった。

【オルトキノンジメチルアセタールを経由した D 環構築法の確立】
そこで、オルトキノンジメチルアセタール 27 との Diels–Alder 反応により、D 環を構築することにした。はじめに、14 から、3 工程でヨードジエン 22 を合成した後、アルデヒド 23 に酸化した。次に、23 を Dakin 反応でフェノール 24 に変換後、生じたフェノール性ヒドロキシル基をメチル化し、25 に導いた。続いて、25 のヨード基を足がかりに発生させたリチウム種を、ボロン酸トリメチルで捕捉し、フェノール26 に導いた。最後に 26 を、メタノール溶媒中、ヨードベンゼンジアセテートで酸化し、目的のオルトキノンジメチルアセタール 27 に変換した。合成した 27 を、エチレンとの Diels–Alder 反応に付した結果、目的の環化付加体 28 を得ることに成功した。

【四環性ケトンを用いた検討】
確立した合成経路を、四環性ケトン 11 に適用した。はじめに、11 から、2 工程で導いたエンイン化合物 29 に対し、ビニルグリニャール試薬の付加と、電子環状反応により生じるマグネシオ中間体 30 を、ヨウ素で捕捉しヨードジエン 31 に変換した。続いて、 DDQ や二酸化マンガンを用いて、31 の酸化的な芳香環化を試みたが、反応は進行せず、32 は得られなかった。また、31 をアルデヒド 33 に変換し、Rubottom 酸化による芳香環化も試みたが、シリルエノールエーテル 34 が得られず、本合成経路を断念した。

【シロキシジエンを経由した C 環構築法の検討】
そこで、フェノール 39 を直接的に合成する合成経路を立案した。モデル検討として、シロキシジエン 35 とエチニル-p-トリルスルホンをトルエン溶媒中加熱したところ、分子間 Diels–Alder 反応が進行し、C 環の構築に成功した。なお、生成物 36 は分離困難な副生成物を含んでいたため、TBS 基を除去した結果、2 工程収率 35%でケトン 37 が得られた。続いて、37 に対し、t-BuOK を作用させたところ、オレフィンの異性化の後に、スルフィン酸の脱離が進行し、フェノール 39 が得られた。
続いて、確立した条件を四環性ケトンに適用した。検討の結果、TIPS 基を有するジエン 40 を用いると、目的の環化付加体 41 が得られることがわかった。その後、モデル検討と同様に変換を行った結果、ESI-MS でフェノール 42 を示唆するシグナルが得られ、さらなる構造解析を行っている。

【結論】
以上著者は、ケトン 14 から様々なジエンを合成し、Diels–Alder 反応の詳細な検討を行った。その結果、オルトキノンジメチルアセタールを経由する、C/D 環の構築法を確立した。本研究で得られた成果は、デヌダチンアルカロイドが有する Fsp3 係数の高いカゴ状構造の迅速合成に有用な知見である。

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参考文献

1) Lewis, S. E. Chem. Soc. Rev., 2015, 44, 2221.

2) Miyamoto, N.; Nakazawa, Y.; Nakamura, T.; Okano, K.; Sato, S.; Sun, Z.; Isobe, H. Tokuyama, H.; Synlett, 2018, 29, 513.

3) Sun, Z.; Miyamoto, N.; Sato, S.; Tokuyama, H.; Isobe, H. Chem. Asian J. 2017, 12, 271.

4) Meriçli, A. H. et al. Pharmazie 2006, 61, 483.

5a) Fukuyama, T. et al. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 6598.

5b) Sarpong, R. et al. J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 10830.

5c) Qin, Y. et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 15667.

6) Fujioka, K.; Miyamoto, N.; Toya, H.; Okano, K.; Tokuyama, H. Synlett 2016, 27, 621.

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