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オンライン教育による学習効果の検証 - 技能・態度の習得 –

成井 浩二 山田 哲也 北垣 邦彦 益山 光一 富澤 明子 陳 惠一 東京薬科大学

2022.03.31

概要

1.はじめに
 新型コロナウイルス感染予防の観点から、本学薬学部は2020年度前期の対面講義や実習、演習をオンラインにより行った。薬学部では、オンラインによる教育経験が少なく、オンラインによる教育方法は標準化されていなかった。知識習得に関しては、以前より大学でもe-ラーニングの導入が進み、その有用性が広く認識されてきているが、技能や態度の習得に関しては不明瞭な部分が多い。また、オンライン教育に対し、学生の集中力維持や通信環境等が課題としてあげられている1,2)。医療人である薬剤師を育てる薬学部には、知識・技能・態度の育成が求められ3)、薬学教育においてどのような形でのオンライン教育の導入が最適か検討する必要がある。
 そこで、技能・態度を習得することが目的の演習におけるオンライン教育方法の標準化の一助とするために、技能・態度の習得効果向上、集中力維持、通信環境不良時対応等の方策を講じたオンライン教育を実施し、演習内で行った投票、自己評価、アンケート結果を報告する。

2.調査概要
2-1.アンケート回答者とオンライン教育内容
 2020年6月16日から7月3日に、薬学部4年生(在籍411名)の必修科目である「実務実習事前実習」内の「655服薬指導3(OTC)演習」をWeb会議システムであるZoomを用いてオンラインで実施した。学生を9グループに振り分け、それぞれのグループに対して実施した。この演習は5年次に実施される長期病院薬局実務実習の準備の一つとして、OTC医薬品の販売時相談対応について知識・技能・態度の習得を目的としている。
 演習に使用する資料(テキスト、ワークシート、評価票、ロールプレイに使用する医薬品の外箱画像)、課題(ロールプレイ学生自己評価票)、アンケート、演習補助動画、Zoomへのアクセス情報を、学習管理システム(LMS)に事前に提示し事前準備を促した。オンライン演習は、①実習説明と自己学習(70分)②OTC医薬品販売時対応のロールプレイ観察・解説・実践(120分)③まとめ(20分)の順に行われた(Fig.1)。①実習説明と自己学習では、演習のタイムスケジュールや手順を説明し、自己学習にて、OTC医薬品の販売時対応の手順やロールプレイに使用する医薬品の成分や特徴を整理し、ロールプレイの準備を行った。②OTC医薬品販売時対応のロールプレイ観察・解説・実践では、Zoomを用いて解説を挟みながら、テロップ付きの教員ロールプレイ動画3症例を複数回ずつ繰り返し視聴した。カメラ越しに来局者がいると想定したロールプレイの自己練習行った後、無作為に選出された代表者が来局者役の教員を相手にOTC販売時対応のロールプレイを行った。③まとめでは、演習のまとめと演習後に実施するロールプレイ学生自己評価とアンケートについての説明を行った。演習後に、演習の復習と確認を目的として、資料等の閲覧をせずに一人で行うロールプレイ及びロールプレイ自己評価を促した。また、演習に関するアンケートを実施した。

2-2.技能・態度の習得効果を向上させるための方策
 教育効果を維持・向上させるために、Wei Baoによる事例研究4)と最近のオンライン教育に関する研究で挙げられた課題1,2)を参考に3つの方策を講じた。第一の方策は技能・態度の習得を高める方策で、段階的に悪例から良例になる教員ロールプレイ動画の視聴と解説、カメラを見ながらのロールプレイの自己練習と代表者によるロールプレイの実施、Zoom投票の利用、双方向性を確保するための質問対応5)、演習後のロールプレイ実施と自己評価の5つからなる。第二の方策は真剣・集中度を高める方策で、対面に近い双方向性の演習5)、ビデオカメラを用いたロールプレイ自己練習、ロールプレイの複数回実施、こまめな休憩時間を設定の4つからなる。第三の方策は通信環境不良時の対応で、演習の録画と公開、電話対応、サポート教員配置の3つからなる。

2-3.評価項目2-3-1.Zoom
2-3-1.Zoom投票
 教員ロールプレイ動画の視聴と解説及びロールプレイ自己練習、代表者のロールプレイの実施という一連の流れを3症例行った(Fig.1)。1「この薬剤師の対応についてどう感じましたか」、2「コミュニケーションについてどうでしたか」、3「情報収集の部分の薬剤師の対応はどうでしたか」、4「情報提供の部分の薬剤師の対応はどうでしたか」、5「薬剤師の対応全体に対しどう感じましたか」、6「自分でも顧客に対し適切な対応ができると思いますか」の6項目に対し、Zoom投票を行った。回答は、「とても適切(な対応)である/とても適切な対応ができると思う」、「やや適切(な対応)である/やや適切な対応ができると思う」、「どちらともいえない」、「やや不適切(な対応)である/やや不適切な対応になると思う」、「とても不適切(な対応)である/とても不適切な対応になると思う」の5段階を設定した。Zoom投票結果は、その都度学生と共有した。全投票結果は、Zoomより投票レポートとしてダウンロードすることで収集した。

2-3-2.ロールプレイ学生自己評価
 挨拶に関する3項目、症状・健康状態などの情報収集と最適医薬品の選択に関する13項目、最適医薬品の推奨(提示)と情報提供に関する10項目、クロージングに関する4項目、コミュニケーションに関する4項目、合計34項目で構成した(Fig.2)。評価項目はコミュニケーションに関する4項目を態度項目、それ以外の30項目を技能項目と分類した。ロールプレイ学生自己評価はLMSにて収集した。

2-3-3.アンケート
 1.アンケート結果の研究への利用に対する同意の有無、2.オンライン演習中の不都合・不具合の有無、3.オンライン演習で用いた教員によるロールプレイ動画への技術的評価、4.3症例(動画)を用いた演習に対する評価、5.Zoom投票に対する評価、6.各症例でのカメラを利用したロールプレイ自己練習に対する評価、7.課題提出用にワークシートを見ないで行った一人でのロールプレイ及び自己評価に対する評価、8.演習全体に対する評価、9.今回のオンライン演習の良かった点、改善点があれば記入(記述)で構成した。アンケート回答はLMSにて収集した。

2-4.データ解析・評価と倫理的配慮
 オンライン演習中に複数回実施する「Zoom投票」の結果、演習後に実施される「ロールプレイ学生自己評価」及び演習に関する「アンケート」の結果をもとに、技能・態度の習得、学生の集中・真剣度、通信環境状況等について解析・評価した。2群間の差は、Z検定にて検定し、危険率(p)は0.05とし統計に解析した。
 収集したデータが教育目的以外に、匿名化された情報や統計情報として研究目的に用いられることがあること、結果の使用に対する同意の有無は成績に一切関係がないことを受講者に説明した。回答結果は、匿名化(ハッシュ化)したうえで、集計・解析した。なお、本研究は、東京薬科大学人を対象とする医学・薬学並びに生命科学系研究倫理審査委員会より承認を得て実施した(承認番号:人医-2020-007)。

3.結果と考察
3-1.回答者情報
 4年生在籍者411名のうち402名が本演習に参加した。通信環境不良で録画動画の利用を希望した学生は4名であった。演習はZoomを使用し、パソコン等のカメラをONの状態で行う予定であったが、演習中のアナウンス不足のためか、全9グループの演習中で、1グループは半数近くの学生がビデオOFF、1グループはほとんどの学生がビデオOFFの状態であった。アナウンスの徹底によりほかの7グループはほとんどすべての学生がビデオONの状態であった。

3-2.Zoom投票
 Zoom投票は6回行い、投票率は1回目98.8%、2回目99.0%、3回目99.5%、4回目99.8%、5回目99.3%、6回目99.0%であり、平均は99.2%であった。

3-2-1.ロールプレイ動画における薬剤師のOTC医薬品販売対応に対する学生の評価
 薬剤師の対応(コミュニケーション・情報収集・情報提供)に対する学生の評価は、「コミュニケーションについて」に対して適切(とても適切とやや適切の合計)であると回答した割合は、投票2回目55.5%、投票3回目97.8%、投票5回目97.7%であった(Fig.3-A)。「情報収集の部分の薬剤師の対応について」に対して適切(とても適切とやや適切の合計)であると回答した割合は、投票2回目76.9%、投票3回目99.3%、投票5回目98.5%であった(Fig.3-B)。「情報提供の部分の薬剤師の対応について」に対して適切(とても適切とやや適切の合計)であると回答した割合は、投票2回目12.6%、投票3回目97.0%、投票5回目98.0%であった(Fig.3-C)。Fig.1で示したように投票2回目は1症例目、投票3回目は2症例目、投票5回目は3症例目に対する評価である。動画視聴・解説・ロールプレイの反復において使用する動画内容であえて悪例を視聴してもらうことで学生に気づきを促した。実際、悪例として作成をした1症例目の動画での薬剤師のOTC医薬品販売時対応に対し、解説・ロールプレイ自己練習の前後で適切な対応であると感じる割合が低かったことにより、解説・ロールプレイ自己練習により不適切な部分に対する気づきがあったことが推測される。さらに、あえて悪例から良例に段階的になるように作成した複数症例の動画を用意することにより、難易度を上げながら気づきを反復することとなり、技能・態度の定着がより効果的に可能になると考える。
 薬剤師の対応(全体)に対する学生の評価では、適切(とても適切とやや適切の合計)であると回答した割合は、投票1回目46.3%で、投票2回目27.6%、投票3回目98.0%、投票5回目98.7%であった(Fig.4)。投票1回目、投票3回目、投票5回目は各症例の解説・ロールプレイ自己練習前に実施した投票であり、投票2回目は各症例の解説・ロールプレイ自己練習後に実施した投票である(Fig.1)。同じタイミングで実施した投票で比較すると、適切であると回答した割合は投票1回目では低く、投票3回目と投票5回目では高かった。また、投票1回目と投票2回目は同じ症例に対する解説・ロールプレイ自己練習の前後に取った投票の結果であり、解説・ロールプレイ自己練習前後で適切であると答えた割合が減少していた。
 OTC医薬品販売時対応について「自分でも顧客に対し適切な対応ができると思う」と答えた割合は1症例目のロールプレイ動画視聴・解説・ロールプレイ自己練習が終わった時点の21.1%(投票2回目)から2症例目のロールプレイ動画視聴・解説・ロールプレイ自己練習が終わった時点で51.6%(投票4回目)、3症例目のロールプレイ動画視聴・解説・ロールプレイ自己練習が終わった時点で78.9%(投票6回目)に増加し、動画視聴・解説・ロールプレイ自己練習の反復によって、技能・態度習得認識が有意に増加した(p<0.05)。
 投票6回目で「自分でも顧客に対し適切な対応ができると思う(とても適切とやや適切の合計)」答えた割合はZoomビデオカメラONの演習グループでは82.6%、ZoomビデオカメラOFFの演習グループでは55.1%であり、ZoomビデオカメラON時のほうがZoomビデオカメラOFF時に比べ、技能・態度習得認識が有意に高かった(p<0.05)。
 Zoom投票は簡単に回答でき、その都度結果を共有したことで、自分以外の学生全体の回答状況が把握できるため、一人でパソコン等に向かって行っているオンライン授業において、情報を共有し、授業に参加しているという実感が授業に対する能動的な参加につながると考えられる。

3-3.ロールプレイ学生自己評価
 ロールプレイ学生自己評価の提出者400名で提出率は99.5%、そのうち有効回答者は393名であり、提出者に対する有効回答率は98.3%であった。無効回答とした7名のうち、5名は研究の対するロールプレイ学生自己評価結果使用に同意しないと回答したものであり、残りの2名は適正な提出ではない(1件は無記入での提出、1名は演習終了前に提出)と判断したため無効回答とした。
 ロールプレイ学生自己評価の技能項目(30項目)で、「できた」と回答した学生の割合の平均は93.2%、態度項目(コミュニケーションに関する4項目)は89.5%であり、全体(34項目)では92.7%であった。前年のロールプレイ評価において同じ項目では、技能項目83.7%、態度項目79.6%、全体が83.2%であったが、前年までは模擬患者を相手に時間制限のある中行ったロールプレイに対して他の学生が評価を行っていた。今回のように、一人で時間制限のない中行ったロールプレイに対する自己評価とはロールプレイ方法や評価方法が異なるため、単純に比較をすることはできないものの、対面で実施した去年と同程度の技能・態度の習得があったことが示唆された。

3-4.アンケート結果
 アンケートは提出者399名で提出率は99.3%、そのうち有効回答者は394名であり、提出者に対する有効回答率は98.7%であった。無効回答とした5名は研究に対するアンケート結果使用に同意しないと回答したものである。

3-4-1.オンライン演習中の不都合・不具合の有無
 「オンライン演習中で何か困ったことや不都合はありましたか(複数回答可)」に対し、56.4%が「特に何も感じたこと/気になることはなかった」と回答した。一方、不都合・不具合として回答が多かったものから「通信環境(つながらない、途中で切れる、フリーズ、カクつき)が悪かった」24.9%、「周囲の騒音が気になった」と「音量の調整ができず、聞きにくかった」10.2%、「画面が小さい/見にくかった」5.1%、「Zoomの設定や操作が難しかった」4.3%、「チャットや手を挙げるなど、質問がしにくかった」1.3%、「事前の資料の準備が出来ておらず演習で困った」0.8%、「チャットや手を挙げても、気が付かれなかった」0.5%の順であった。また、今回選択肢として挙げた点以外で不都合・不具合を感じていた割合は6.1%であった。通信環境不良で録画動画の利用を希望した学生は4名に留まった。

3-4-2.オンライン演習で用いた教員によるロールプレイ動画への技術的評価
 「オンライン演習では、教員によるロールプレイ動画を用いましたが、いかがでしたか(複数回答可)」に対する回答は、「画面が明瞭であった」65.0%、「テロップ(項目や会話)は見やすかった」56.9%、「音声は明瞭であった」50.0%、「特に何も気になることはなかった」34.8%の順であった。

3-4-3.症例(動画)を用いた演習に対する評価
 「3症例(動画)を通した演習について、あてはまるもの全てを選んで下さい(複数回答可)」に対する回答は、「ワークシートに沿って項目をチェックしながら学ぶことが重要だと思った」62.2%、「ワークシートでの項目が多く、漏れなくやるのは難しいと思った」43.7%、「3症例を進めるにつれて、自分も出来るようになった」41.1%、「動画を見ながら、ワークシートを記入するのは難しいと思った」34.3%、「もっと動画を繰り返して見たかった」33.5%、「特に何も感じたこと/気になることはなかった」6.1%、「その他に感じたこと/気になることがあった」3.6%の順であった。

3-4-4.Zoom投票に対する評価
 「各症例の前後で実施されたZoom投票について、あてはまるもの全てを選んで下さい(複数回答可)」に対する回答は、「投票機能は簡単に使えた」86.6%、「集計結果の共有は、学生全体の状況もわかるのでよかった」66.2%、「投票によって、自分の状況を教員にフィードバックできるのでよかった」37.1%、「特に何も感じたこと/気になることはなかった」4.6%、「投票はなくてもよかった」3.3%、「その他に感じたこと/気になることがあった」0.5%の順であった。

3-4-5.各症例でのカメラを利用したロールプレイ自己練習に対する評価
 「各症例での学生の練習は、カメラを見ながら、自身でロールプレイの練習をして頂きましたが、どう感じましたか(複数回答可)」に対する回答は、「みんなの前でロールプレイを行う可能性があると思うと、真剣に練習することができた」49.8%、「相手がいないのでやりにくかった」34.8%、「集中して練習することができた」30,7%、「自分のロールプレイに対する評価をしてもらえないので適切なロールプレイができているかが不安だった」28.4%、「見られていると思うと、真剣に練習することができた」24.6%、「特に何も感じたこと/気になることはなかった」8.4%、「その他に感じたこと/気になることがあった」4.1%の順であった。
 また、集中・真剣度については、276名(69.2%)の学生は真剣に又は集中して自己練習していた。また、196名(49.1%)の学生は、「みんなの前でロールプレイを行う可能性があると思うと、真剣に練習することができた」、97名(24.3%)の学生は、「見られていると思うと、真剣に練習することができた」と回答した。

3-4-6.課題提出用にワークシートを見ないで行った一人でのロールプレイ及び自己評価に対する評価
 「課題提出用にワークシートを見ないで行った一人でのロールプレイ及び自己評価はいがかでしたか」に対する回答は、「相手がいないのでやりにくかった」55.8%、「出来ない項目が把握できてよかった」52.5%、「自分が行ったロールプレイを全ては覚えていないので、自己評価は難しかった」22.6%、「特に何も感じたこと/気になることはなかった」9.6%、「その他に感じたこと/気になることがあった」2.3%、「その他の理由で、適切に自己評価ができなかった」1.8%の順であった。

3-4-7.演習全体に対する評価
 「今回の演習を振り返って、全体としてどう感じましたか」に対する回答は、「OTC販売の対応が理解できた」83.3%、「OTC販売の対応に役に立った」61.2%、「OTC販売の対応が出来るようになった」20.6%、「OTC販売の対応に不安が残った」11.2%、「特に何も感じたこと/気になることはなかった」2.5%、「その他に感じたこと/気になることがあった」1.3%の順であった。

3-4-8.自由記述(今回のオンライン演習の良かった点、改善点)
 自由記述を記入した学生は有効回答者394名中313名で記入率は79.4%であった。記述内容を類似の意味を持つ項目に分類した。良い点として、「ロールプレイ動画を用いた演習が良かった(テロップ利用、動画後解説等がよかった)」(76名)、「緊張感が持てて、よかった」(26名)、「他学生のロールプレイ観察出来てよかった」(23名)、「集中して取り組めて、よかった」(18名)の順であった。悪かった点として、「スモールグループディスカッション(SGD)・相手がいる実践、演習を望む」(54名)、「通信・音声の不具合(カクカク、音量・環境音)」(45名)、「ZoomのビデオカメラONに対する否定的意見」(22名)、「画面注視による疲労・体調不良・休憩の要望」(21名)の順であった。

3-5.通信環境の不具合とZoomビデオカメラON/OFFとの関連性
 アンケートで「オンライン演習中で何か困ったことや不都合はありましたか(複数回答可)」に対し、「通信環境(つながらない、途中で切れる、フリーズ、カクつき)が悪かった」と回答した割合は、ほとんどの学生がビデオOFFの日が25.5%、約半分の学生がビデオOFFの日が37.8%、ほとんどの学生がビデオONの日(7日間)は実習を行った日順にそれぞれ25.0%、19.1%、25.7%、15.7%、12.8%、28.6%、38.3%で、平均23.2%であった。演習中にビデオカメラをONにすることによりは通信環境の不具合が増えること危惧されたが、今回の演習においては、通信環境の不具合とZoomビデオカメラON/OFFとの関連性は見られなかった。

4. 結論
 今回の調査で、オンライン演習でも、方策次第で集中・真剣度は高められ、結果として対面と同等の技能・態度の習得効果が得られることが示唆された。ただし、本演習は技能領域の中の手技の習得ではなく、患者応対方法の習得であり、一部オンライン服薬指導が行われていることを考慮すると6,7)、本演習はオンライン演習には比較的適していたのかもしれない。薬学の教育には手技の習得が目的となる演習・実習も多く存在するため、そのような手技中心の授業に関しては別途検証する必要がある。
 新型コロナウイルス感染拡大により、学ぶ機会を奪われたり、制限されたりした状況が、学生にとって学びに対して改めて向き合うきかっけとなったとも考えられる。そのような状況下で、授業を行う教員側も学生と同じように、新たな授業形態も含め、授業に対し模索する良いきかっけとなった。同期型のオンライン授業は遠隔地居住や傷病などで長期欠席している場合の学生に対面と同等な学びの機会を担保できる。また、非同期型のオンライン授業は受講開始時間にとらわれず、かつ、繰り返し閲覧できる点で利便性が高い。どちらのタイプにおいても、オンライン授業は、在学生の教育ばかりでなく、卒業生や社会人のリカレント教育の手段としても大いに期待でき、学びの裾野を広げることができる。オンライン授業は「対面授業の代替」としてではなく、大学が、教育機関として学びの機会を担保することや社会に対する大学の役割果たすための期待される教育手段になるであろう。

参考文献

1) 春田淳志,川上ちひろ,早川佳穂,医学教育修士課程における多職種連携教育オンラインプログラムの実践報告―オンラインに適したインタラクションの工夫―,医学教育,51(3):344–7,2020.

2) 柿崎真沙子,名古屋市立大学医学部におけるオンライン講義,医学教育,51(3):270–1,2020.

3) 文部科学省薬学教育モデル・コアカリキュラム(平成25年度改訂版).

4) Bao W., COVID-19 and online teaching in higher education: A case study of Peking University., Human Behavior and Emerging Technologies, 2(2), 113–5, 2020.

5) 文部科学省,制度・教育改革ワーキンググループ(第18回)配布資料.

6) 厚生労働省「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部改正する法律の一部の施行について(オンライン服薬指導関係)」(令和2年3月31日薬生発0331第36号)

7) 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月10日事務連絡)

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