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大学・研究所にある論文を検索できる 「新型コロナウイルスmRNAワクチン(BNT162b2)2回および3回接種後の新型コロナウイルス変異株に対する中和抗体反応の評価」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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新型コロナウイルスmRNAワクチン(BNT162b2)2回および3回接種後の新型コロナウイルス変異株に対する中和抗体反応の評価

古川, 皓一 神戸大学

2022.09.25

概要

はじめに
重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染症
(coronavirus disease 2019, COVID-19)が中国の武漢で報告され、2020年3月11日にWHOによりパンデミック(国際的大流行)と認定された。感染終息にむけて開発された新型コロナウイルスmRNAワクチンは、その高い感染予防効果により2020年12月にFDAによって緊急使用許可が承認され、日本でも約9割が2回接種済みとされている。

一方、これまで様々な新型コロナウイルス変異株が出現し、感染拡大に拍車をかけている。懸念すべき変異株としてアルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、オミクロン株などが報告されており、特に2021年末に出現したオミクロン株はスパイクタンパク質に30カ所以上の変異を有し、ワクチン接種により誘導される中和抗体や抗体ベースの治療から強く回避し効果が大きく減弱することが示されている。さらにワクチン接種の効果自体も時間の経過とともに低下することが示されている。

これらに対抗すべくワクチンの追加接種(3回目=ブースター接種)が開始され、中和抗体を強く誘導することが報告されているが、オミクロン株にも有効であるかどうか、被接種者の年齢により効果が異なるのかどうか、また接種時の副反応と効果に関連があるかどうかなど、不明な点は多い。今回我々はワクチン2回接種済の82人の健常者の血清に含まれる様々な変異株に対する中和抗体を経時的に評価し、接種時の副反応と参加者の年齢や誘導された中和抗体価との関連を検討した。

方法
参加者:新型コロナウイルスBNT162b2mRNAワクチンの2回接種を終えている神戸大学病院の医師82人の血清を2回採取した(1回目:2021年6月~7月(接種後約2ヶ月)、2回目:2021年10月~11月(接種後約7ヶ月))。その後、2022年1月にブースター接種を行った72人を対象として3回目の血清採取を行った。データ解析は倫理委員会にて承認され(承認番号:B200200)、全ての参加者から同意を得た。

質問票:血清の回収時に質問票を用いて参加者の年齢、性別、各ワクチンの接種日時、および接種後1週間以内に生じた副反応(発熱・全身倦怠感の有無、注射部位の疼痛の程度)を調べた。中和アッセイ:参加者の血清を非動化および段階希釈した後、100TCID50のSARS-CoV-2と混合し37℃で1時間インキュベートした。その後、混合液をVeroE6(TMPRSS2)細胞に添加し、6日間培養した。細胞を観察し、細胞変性効果を認めない最大希釈倍率を中和抗体価とした。最小希釈倍率(検出限界)である2倍希釈でも細胞変性効果を認めた場合、中和抗体陰性と判定した。

SARS-CoV-2変異株:D614G変異株(標準株)を大阪大学微生物研究所から、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、カッパ株、オミクロン株を国立感染症研究所から分与頂いた。

統計解析:Graph Pad Prism version8.4.3とSTAT Aversion14.2を使用した。中和抗体価が2未満(検出限界未満)のサンプルは解析のため抗体価を1として解析した。中和抗体価の比較ではFriedman検定、Kruskal-Wallis検定、Mann-Whitney検定を、参加者の年齢の比較ではKruskal Wallis検定、Mann-Whitney検定を適宜用いて解析を行い、Friedman検定もしくはKruskal-Wallis検定で有意差を認めた場合Dunn multiple comparison検定を行った。すべてのp値は両側検定を行い、0.05未満を有意とした。

結果
計82人(男性71人、年齢中央値44歳)が参加し、31人が38歳以下、32人が39歳から58歳、19人が59歳以上であった。副反応は接種ごとに頻度が増加し、ブースター接種時は発熱が33%、倦怠感が63%、接種部位の疼痛が90%に認められた。

ワクチン接種後2ヶ月の時点では、標準株、アルファ株に対しては全員が、その他の変異株(ベータ、ガンマ、デルタ、カッパ株)には90%前後の参加者が中和抗体を保有していたが、オミクロン株に対しては28%しか中和抗体を持たず、その抗体価は標準株の11.8倍(95%CI,9.9-13.9)低下しており、評価した変異株の中で最も低値であった。年齢別にみると、59歳以上では中和抗体価が低下する傾向があり、デルタ株、カッパ株では有意に低下した。一方オミクロン株では年齢によらず抗体価は低く38歳以下の群でも32%しか中和抗体を保有しておらず、有意差も認めなかった。

ワクチン接種後7ヶ月の時点ではさらに中和抗体は低下し、標準株に対して93%、デルタ株では67%の参加者が中和抗体を保有していた一方、オミクロン株に対してはわずか6%しか保有していなかった。

しかしその後に3回目のブースター接種を行った72人の解析では、全員がオミクロン株を含めた全ての変異株に対する中和抗体を持ち、オミクロン株への中和抗体価はブースター接種前の39倍と大きく上昇した。さらに年齢別の解析では、全ての年齢群において標準株、デルタ株、オミクロン株に対する中和抗体価の有意な上昇が見られ(38歳以下:28-41倍、39-58歳:28-43倍、59歳以上:27-47倍)、ブースター接種は年齢によらず有効であることが示唆された。

2回目および3回目接種時の副反応の検討では、発熱、倦怠感の有無、および接種部位の疼痛の有無と誘導された中和抗体価との相関は認めなかった。一方、2回目接種時の発熱のみ若年者で有意に多く認められた(p=0.02)。

考察
本研究にて、ワクチンの2回接種ではオミクロン株に対して十分な中和抗体は誘導されず、特に高齢者では感染のリスクが高いこと、一方でブースター接種は年齢によらずオミクロン株に対する中和抗体を強く誘導することが示された。

これまでの研究で、オミクロン株に対する中和活性は他のどの変異株よりも低値であることが報告されている。特にスパイクタンパク質のK417N、N440K、G446S、S477N、T478K、E484A、Q493R、G496S、Q498R、N501Y、Y505H変異が低い抗体産生誘導に大きく寄与している可能性が示唆されており、本研究でもオミクロン株への中和活性は全ての年齢層で低値であった。

一方、ブースター接種後はオミクロン株を含め全ての変異株に対する中和抗体が年齢によらず大きく上昇していた。現在のmRNAワクチンは初期に流行した武漢株を元に作成されており、この結果はブースター接種がSARS-CoV-2の変異株ごとに共通するエピトープを認識する中和抗体を強く誘導することを示唆している。さらに同様の機序により、今後出現しうる新たな変異株に対しても十分な免疫獲得を誘導する可能性が高いと考えられる。

また本研究では副反応と中和抗体価との相関は認めなかったが、別の研究では接種時の発熱の程度と誘導された抗体価に相関があると報告されており、今後の更なる症例の蓄積および検討が必要と考えられた。

本研究より、mRNAワクチンのブースター接種はオミクロン株や今後出現しうる新規変異株による感染拡大を防止するにあたり、年齢によらず推奨されると考えられた。

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