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大学・研究所にある論文を検索できる 「レイシ果実の種子形質多様性に関する基礎ならびに応用研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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レイシ果実の種子形質多様性に関する基礎ならびに応用研究

大迫, 祐太朗 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23245

2021.03.23

概要

レイシ(Litchi chinensis Sonn.)の果実はその種子形質から4タイプ(無種子果実,小種子果実,チキンタン種子果実および正常種子果実)に分類できる.レイシ果実の商品価値は種子サイズと関連していることから,このレイシにおける多様な種子形成機構の理解および制御は,園芸学的に重要な課題である.本研究では,レイシの種子形質に着目し,生産性向上に貢献し得る基礎知見を獲得した.

 第1章では,チキンタン種子を有する果実割合が高いとされるレイシ品種の‘Yu Her Pau’(YHP)および‘No Mai Tsz’(NMT)の果実形質の特性調査を行った.その結果,正常種子果実割合が高い品種では,果実サイズと種子サイズおよび果実密度の間に弱程度から中程度の正の相関が認められた.一方,チキンタン種子果実割合が高いYHPやNMTでは,このような相関が認められないか,あるいは非常に弱い相関しか認められず,種子サイズは果実サイズや密度に依存しなかった.すなわち,果実の価値が高い小種子やチキンタン種子を有する果実を,果実サイズや果実密度から識別することは容易ではないことが示された.

 第2章では,画像解析技術を活用したレイシ果実形の評価を行い,種子形質の非破壊評価技術を開発した.具体的には,楕円フーリエ記述子および主成分分析に基づいたレイシ果実形の評価法を確立し,果実外観の客観的評価法を確立した.次いでレイシ果実画像を用いて,深層学習技術を応用した画像認識を試みた.VGG16を独自に微調整した多群分類によって,主要4品種について正答率98%の識別精度の高い品種分類モデルを構築し,果実画像解析における深層学習の応用可能性を示した.さらにNMTの果実形解析から種子サイズと果実形との間に有意な相関を認めた.このことは果実画像中に種子形質と関連する情報が存在することを示すものである.深層学習によるチキンタン種子と正常種子の二群分類においても,精度72.8%で識別可能なモデルを構築することに成功し,生産上重要な小種子果実やチキンタン種子果実の非破壊選別に貢献し得る知見を得た.

 第3章ではチキンタン種子形成要因の解明に貢献する情報の獲得を目的に,チキンタン種子品種の‘Salathiel’および正常種子品種,小種子品種を供試し,開花時点における子房形状の品種間差を解剖学的手法により調査した.子房縦断切片を作製し品種比較を行ったところ,すべての品種で子房内器官の分化に差異は認められなかった.一方で,チキンタン種子品種では閉塞組織が他の品種と比べて小型であることを発見した.閉塞組織は胚珠における花粉管伸長や受精に重要な器官であり,この閉塞組織の発達程度の差異が,チキンタン種子の形成に関与している可能性が推察された.

 第4章では,チキンタン種子品種の‘Salathiel’および正常種子品種,小種子品種を供試し,子房におけるインドール酢酸(IAA)類の測定およびオーキシン関連遺伝子群の発現解析を行った.その結果,チキンタン種子品種の子房では,オーキシン活性を有するIAA含量が有意に高いことが明らかになった.またオーキシン関連遺伝子群の調査から,ATP-BINDING CASSETTE TRANSPORTER B,PIN-FORMED およびAUXIN1/LIKE-AUX1等のIAA輸送に関わる遺伝子群の発現がIAA内生量の品種間差と同調的であることが明らかになった.IAAは着果促進に寄与し,その一方で高いIAA内生量は正常な胚発達を妨げる場合もある.チキンタン種子品種の‘Salathiel’では,高いIAAの輸送活性によってもたらされるIAAの高い内生量がチキンタン種子の形成ならびにチキンタン種子果実の着果維持を促進している可能性が推察された.

 以上の通り,本研究により,レイシ果実の種子形質差異に関する新たな知見が獲得された.本研究結果は,レイシをはじめ多くの果樹生産への画像解析および深層学習技術の応用可能性を示すとともに,植物ホルモンと種子形質に関する研究の進展に貢献するものである.

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