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大学・研究所にある論文を検索できる 「熟度評価を利用したイチジク高品質果実の流通利用技術開発に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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熟度評価を利用したイチジク高品質果実の流通利用技術開発に関する研究

小河, 拓也 筑波大学

2022.11.22

概要

第1章緒論
 イチジク(Fig,Ficus carica L.)‘桝井ドーフィン’は日本における主力品種である。収穫期間が8月から10月までと長く、果実の成熟が急速に進むために、収穫適期を判別するのは難しい。また、鮮度保持期間は短く、輸出のような長距離輸送が難しい。さらに、規格外果実が発生しやすいが、加工適性はほとんど調査されておらず、加工品への利用も進んでいない。一方消費者は「完熟」した果実を好むが、産地や収穫者によりその度合は異なる場合が多く、基準が求められている。以上のような問題点から、イチジク‘桝井ドーフィン’の流通加工技術に関する研究を試みた。

第2章イチジクのカラーチャートを利用したイチジクの品質判別技術
 イチジクの最適な収穫時期を判定するため、現行のカラーチャート(NCC)と果実品質の関係を調査し、その後、実需者が利用しやすい新たなカラーチャートを開発した。2014年の8月から10月までの収穫期間に‘桝井ドーフィン’果実を、熟練者によってやや未熟から過熟までを熟度別(やや未熟、適期1,2,3、過熟)に5段階に分けた。判別した果実について、NCCを用いた外観、糖度等の成分、官能評価、および鮮度保持期間を調査したところ、収穫期間を通し、果皮の着色が進むにつれ、熟度が進み、糖度が高くなり、滴定酸度は低下し、軟化した。また、熟度が進んだ高糖度の果実は官能評価において総合評価が高くなったが、鮮度保持期間は短くなった。果皮の着色程度で果実品質や保存期間が評価できることから、果皮の複雑な変化や、熟度の進んだ果実も正確に評価できるように、果実赤道部の果皮写真を色票とし、新たにカラーチャート(HCC)を開発した。このHCCを生産圃場で検証したところ、収穫時期を通して、高品質の果実を判別することができたことから実用性があると認められた。

第3章イチジクの加工適性評価
 イチジク果実を有効に利用するために、HCCを用いて熟度別に収穫した果実の加工適性を評価した。収穫盛期である2018年9月初旬に収穫した果実を熟度別に加工適性評価を行ったところ、熟度が進んだ果実の糖度は高く、果実の破断応力は小さくなった。また、同一の果実において果皮には小果より多くアントシアニンが多く含まれ、熟度が進むほど果皮、小果とも含量が高くなったが、特に、果皮の含量の増加は大きかった。ペクチンは水溶性ペクチンの割合は全体の50%程度で4種類のペクチンの中で最も高かった。ペクチンの組成の割合は熟度による差はなかった。また、熟度が進むにつれ、総ペクチン量は減少した。果実の熟度別にジャムを調整したところ、収穫適期に比べ、やや未熟のジャムはゲル強度が強く、過熟の強度は弱く、流動性も高かった。また、熟度が進むにつれ、ジャムの赤色が濃くなる傾向がみられた。官能評価において、やや未熟および過熟の果実で製造したジャムの評価が低かった。ドライフルーツの乾燥温度を検討したところ70℃を超えると色素量が顕著に減少した。また、温度が低いと乾燥時間が長くかかるため40~60℃での乾燥が適当であった。過熟および適期3の果実は柔らかいため加工しにくく、また、過熟の果実で製造したドライフルーツは官能評価での評価が低いため、やや未熟から適期2までの熟度の果実でドライフルーツを製造するのが適当であった。熟度によって加工適性が異なることから、目的に応じた適切な熟度の果実を利用することにより、高品質の加工食品を製造することが可能であると考えられた。

第4章イチジク鮮度保持技術の開発
 イチジクについて鮮度保持技術開発を試みた。2016年8月収穫果実の鮮度保持(商品性の維持)期間は9、10月収穫果実より、室温で約1日、2℃で約3日短かった。また、低温ほど鮮度保持期間が長く、0℃で9日、2℃で7日、5℃日間であった。室温保存でも予冷をした場合、1日程度鮮度保持期間が延長した。熟度が進むと鮮度保持期間は短くなり、適期3は室温で1日、2℃で2日適期1および2より鮮度保持期間が短かった。これらの知見を用いて、リーファーコンテナを使用して、海上輸送で香港へイチジクを輸出したところ、輸送した果実の90%以上が商品性を維持していた。また、香港で市販されているトルコ産イチジクに比較して、官能評価も高く、市場競争力はあると考えられた。また、鮮度保持期間の延長を目的とし、過冷却で貯蔵したところ、一部の果実に凍結がみられたものの、-1℃で15日、-2℃で20日商品性を維持ししたことから、より長期に鮮度保持できる可能性が示唆された。

第5章総合考察
 本研究では、高品質果実を収穫し、安定流通させることや、果実の加工適性評価による高品質な加工食品開発さらに、鮮度保持技術を活用して安定して市場流通させるとともに、輸出など新たな市場を開拓できる可能性が得られた。近年、高品質果実が得られやすい、透湿性白色マルチ栽培や新樹形が開発されていることから、高品質果実を分別収穫することにより高級果実店への出荷等、有利販売が可能となる。また、イチジクは嗜好に偏りがあり、若年齢層への販売促進が課題となっているが、生果で出荷できない規格外品から、魅力的な加工食品が開発できれば、周年販売できることから、農家経営が安定するとともに、新たな消費も獲得できる可能性がある。鮮度保持においては、予冷の導入により、果実を販売できる期間が長くなるだけでなく、高温期に収穫時間を比較的温度の低い時間帯に変更できることで労働力の軽減につながる可能性がある。また0℃で10日程度の販売期間があることから、天候が不順な場合での安定出荷や輸送実証により、リーファーコンテナーを利用した香港輸出の可能性が示された。また、過冷却により20日程度商品性が維持できることから、東南アジア等さらに商圏が広がる可能性も示された。ただし、現在は、一部に凍結がみられることから、新たな技術開発が期待される。このような加工適性や鮮度保持には熟度より差があることから、HCCを活用し、さらに技術を発展させることにより、高品質果実の流通による市場の拡大および加工食品を製造、販売する6次産業化の推進や消費の拡大により、イチジク産地の活性化が期待できる。

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