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大学・研究所にある論文を検索できる 「間葉系幹細胞由来のCXCL16は胃癌細胞においてSTAT3を介してRor1の発現を誘導し癌の進展を促進する」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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間葉系幹細胞由来のCXCL16は胃癌細胞においてSTAT3を介してRor1の発現を誘導し癌の進展を促進する

Ikeda, Taro 神戸大学

2020.03.25

概要

癌微小環境において骨髄由来間葉系幹細胞または間質細胞(MSC)は腫瘍組織に存 在し、腫瘍細胞と相互作用することで増殖、浸潤、および転移を促進することが報告 されている。 また受容体型チロシンキナーゼである Ror1 および Ror2 は様々な腫瘍 組織において発現し、腫瘍の増殖、浸潤などに関わることがこれまでに知られている。我々は Ror2 とそのリガンドである Wnt5a が MSC で発現し、MSC で活性化された Wnt5a-Ror2 シグナルがケモカインの一つである CXCL16 の発現を誘導すること、ま た MSC 由来の CXCL16 が低分化型胃癌細胞株であり、Ror1、Ror2 の発現がほとん ど認められない MKN45 細胞に作用することにより、MSC との共培養下での胃癌細 胞の増殖を制御することを以前に報告した(Takiguchi G et al. Cancer Science. 2016)。しかし、MSC 由来の CXCL16 がどのように MKN45 細胞の増殖を制御するかは明ら かになっていないため、今回私はこの機構を明らかにするために研究を行った。胃癌 細胞株は MKN45 細胞、MSC は不死化間葉系幹細胞株である UE6E7T-12 細胞を主 に用いて実験を行った。共培養は Transwell®を用いた間接共培養系で実験を行った。

まずsiRNA を用いて CXCL16 をノックダウンしたUE6E7T-12 細胞を MKN45 細胞と共培養させると、MKN45 細胞の増殖および移動(運動能)も抑制されることが示された。また UE6E7T-12 細胞由来の CXCL16 および遺伝子組換えヒト CXCL16を添加することにより、MKN45 細胞において転写因子の一つである STAT3 の活性化が示された。次に siRNA により MKN45 細胞における STAT3 の発現をノックダウンにより阻害すると UE6E7T-12 細胞との共培養下での増殖、移動の亢進が抑制された。これらの結果より UE6E7T-12 細胞由来の CXCL16 は MKN45 細胞での STAT3を活性化しその増殖、移動を亢進させることが示された。先行研究において STAT3 が Ror1 のプロモータ領域に結合し発現を制御するという報告があるため(Li et al. PLos One. 2010)、まず UE6E7T-12 細胞との共培養下における MKN45 細胞の Ror1 の発現の変化について解析を行ったところ、MKN45 細胞と UE6E7T-12 細胞との共培養により MKN45 細胞における Ror1 の発現が mRNA、タンパク質レベルで誘導されること、また siRNA を用いて UE6E7T-12 細胞における CXCL16 の発現を阻害することにより共培養下での MKN45 細胞における Ror1 の発現誘導が抑制されることが示された。さらに、遺伝子組換えヒト CXCL16 の添加によって MKN45 細胞において Ror1 の発現が誘導されることが見出された。そこで、次に UE6E7T-12 細胞との共培養下での MKN45 細胞での Ror1 の発現誘導における STAT3 の関与について検討した。MKN45 細胞における siRNA を用いた STAT3 の発現阻害または STAT3 阻害剤の添加により、遺伝子組換えヒト CXCL16 刺激による MKN45 細胞での Ror1 の発現誘導が抑制されることが示された。また、MKN45 細胞において CXCL16 の受容体である CXCR6 の発現をsiRNA によりノックダウンすると、遺伝子組換えヒト CXCL16添加による MKN45 細胞での Ror1 の発現誘導が抑制されることが見出された。これらの結果より、UE6E7T-12 細胞由来の CXCL16 は、MKN45 細胞において STAT3 の活性化を介して Ror1 の発現を誘導することが示唆された。

続いて、UE6E7T-12 細胞との共培養により MKN45 細胞において発現誘導される Ror1 が細胞増殖や移動の亢進における担う役割について解析を行った。siRNA を用いて MKN45 細胞での Ror1 の発現を阻害することにより、UE6E7T-12 細胞との共培養下で亢進した MKN45 細胞の増殖と移動が抑制されることが示された。以上の結果から、in vitro の実験系において、UE6E7T-12 細胞由来の CXCL16 は MKN45 細胞で STAT3 の活性化を介して Ror1 の発現を誘導し、それにより増殖、移動を亢進させることが明らかとなった。また、印環細胞癌細胞株である KATOIII 細胞を用いた解析でも同様の結果が得られた。さらに、UE6E7T-12 細胞の代わりに初代培養間葉系幹細胞を用いた実験においても、UE6E7T-12 細胞と同様の結果が得られることが確認された。

最後に、in vivoにおいて、shRNAを用いてRor1の発現を安定的にノックダウンしたMKN45細胞をUE6E7T-12細胞の存在下・非存在下でヌードマウスの皮下へ移植実験し腫瘍の進展を解析した。MKN45細胞をUE6E7T-12細胞とともに移植することにより、MKN45細胞単独の場合に比べて腫瘍形成が促進されることが示された。また、MKN45細胞でのRor1の発現を抑制すると、UE6E7T-12細胞存在下での皮下移植においてMKN45細胞の腫瘍形成促進が阻害されることが見出された。さらに、ヌードマウスでの皮下腫瘍モデルにおいてCXCL16中和抗体を投与することによりUE6E7T-12細胞とともに移植されたMKN45細胞の腫瘍形成促進が阻害されることが示された。

以上、本研究により、癌微小環境の構成細胞の一つである MSC から産生・分泌される CXCL16 がその受容体である CXCR6 を発現する未分化型胃癌細胞に作用し、 STAT3 の活性化を介して Ror1 の発現を誘導すること、そして発現誘導された Ror1が胃癌細胞の増殖、移動を亢進させることが初めて明らかになった。今後、胃癌細胞における Ror1 の発現誘導機構のさらなる詳細が解明されることにより、将来 Ror1 の発現誘導機構を標的とした新たな治療法の開発に繋がることが期待される。

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