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大学・研究所にある論文を検索できる 「接触皮膚炎モデルマウスにおけるIL-10産生制御性B細胞の機能解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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接触皮膚炎モデルマウスにおけるIL-10産生制御性B細胞の機能解析

松村, 裕 筑波大学

2023.01.19

概要

目 的:
B 細胞は抗体の産生やサイトカイン分泌、抗原提示などを通して、主に炎症を惹起、促進する役割を果たすと考えられてきた。一方で、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、コラーゲン誘導性関節炎などの疾患モデルマウスにおいて、抑制機能を持つ B 細胞の病態への関与が報告され、制御性 B 細胞(regulatory B cell: Breg)と名付けられた。
Breg の作用機序として、EAE では Breg のうち interleukin (IL)-10 産生 Breg が炎症反応の制御に重要であると報告されている。しかし、IL-10 産生 Breg は、 plasmablast(PB)、Transitional 2-Marginal zone precursor 細胞、marginal zone B 細胞をはじめ、多様な細胞分画から報告されており、Breg が B 細胞の様々な分化段階の多様な細胞分画を含むことが示唆される。しかしこれらの細胞分画の異同を含めた関連性、分化過程について統一した見解は得られていない。本研究では急性炎症性疾患であるアレルギー性接触皮膚炎(contact hypersensitivity: CHS)のマウスモデルにおけるBreg の同定とその機能解析を目的とした。

対象と方法:
野生型マウス(WT)、μMT マウス(μMT)、IL-10 欠損マウス(IL-10KO)、に対して、 dinitrofluorobenzene (DNFB)を用いて腹部で感作を成立させ、7 日後に DNFB を耳介に塗布しCHS を誘導した。炎症の程度は耳介厚で評価した。感作後鼠経リンパ節、誘導後頸部リンパ節細胞の表現型解析、共培養と細胞移入に用いるB 細胞分画の単離は flow cytometry により行った。IL-10 産生細胞の検出には IL-10 Venus 遺伝子導入マウス(IL-10Venus)を用いた。

結 果:
μMT とIL-10KO における CHS の相違μMT では WT と比較して 24 時間後での耳介腫脹が増強しており(μMT: 1.16±0.09 mm vs WT: 0.69±0.07 mm)、120 時間後以降も腫脹は遷延した(μMT: 0.79±0.13 mm vs WT: 0.29±0.05 mm)。IL-10KO では 24 時間後の反応は WT と同等であったが、120 時間後以降の腫脹は遷延した(IL-10KO: 0.74±0.07 mm vs WT: 0.24±0.10 mm)。
μMT におけるT 細胞の抗原応答性
μMT と WT の感作後鼠径リンパ節を、DNFB と同一抗原性を有する DNBS で刺激すると、μMT では WT と比較してIFNγ+ TNFα+ CD8+ T 細胞が増加していた(μ MT: 26.0±2.4 % vs WT: 17.1±0.4 %)。
PB 分画の評価
CHS 誘導後頸部リンパ節には、CD138+ CD44high であるPB が 96 時間後をピークに一過性に増加していた(0 時間 0.03±0.01 %, 96 時間 0.28±0.09 %)。IL-10Venusの検討では、PB の 35.0 %に Venus 発現があり、IL-10 発現が示された。
PB 機能の in vitro 評価
PB および対照のB 細胞分画(bulk B: BB)と脾臓細胞を共培養すると、PB との共培養では CD4+ T 細胞の IFNγの発現低下が見られた(PB: 4.2±0.4 % vs BB: 7.5±0.8 %)。
PB 機能の in vivo 評価
WT から単離した PB をμMT に移入後に CHS を誘導すると、24 時間後では未移入の対照群と比較して耳介厚が軽減した(0.60±0.06 mm vs 1.07±0.09 mm)。しかし、 120 時間後では対照群と同等であった。

考 察:
B 細胞を欠損したμMT では CHS 誘導 24 時間後から炎症反応の増悪が見られたのに対して、IL-10KO では 120 時間後以降での遷延のみが認められた。このことから、 B 細胞は CHS の急性期(24-96 時間後)および回復期(120 時間後以降)の両方に異なる機序で炎症抑制に働く可能性が考えられた。感作後リンパ節を抗原刺激すると、 μMT では CD8+ T 細胞の炎症性サイトカインの発現が亢進しており、CHS 早期の T細胞応答が B 細胞から IL-10 非依存性の制御を受けていることが示唆された。IL-10産生 Breg として同定した PB は急性期の後半に所属リンパ節で増加しており、in vitroでの共培養とマウスへの細胞移入の結果からも、IL-10 を介して炎症反応の収束に寄与していることが示唆された。

結 論:
CHS の病態にはB 細胞による抑制性の制御が働いており、急性期はIL-10 非依存的な、回復期は IL-10 依存的な制御機構が存在することが示唆された。所属リンパ節に出現する PB は IL-10 を産生しており、短時間ながらも炎症制御能を持つことから、 CHS 回復期に関わるBreg として機能していると考えられた。

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