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大学・研究所にある論文を検索できる 「細胞老化に着目したCOPD病態における活性イオウ分子種の役割の検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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細胞老化に着目したCOPD病態における活性イオウ分子種の役割の検討

山中 駿 東北大学

2020.03.25

概要

【背景と目的】
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease: COPD)は主にタバコ煙をはじめとした有害物質を長期に吸入曝露することなどにより生じる肺疾患であり、COPD の主要な病因の一つに細胞老化が知られている。細胞老化には主に 2 つの経路が知られており、細胞分裂に伴うテロメア長の短縮や DNA 複製エラーの蓄積が誘引となり引き起こされる複製老化(replicative senescence)と、過度な酸化ストレスやエネルギー枯渇などストレスに晒されることで引き起こされるストレス誘導性老化(premature senescence)である。タバコ煙などの有害物質への曝露により肺組織内ではこれらの 2 つの細胞老化が同時に起こるため、肺組織の老化が急速に進むと考えられている。活性イオウ分子種(reactive sulfur species: RSS)は近年注目を集めている新規抗酸化分子の総称であり、ミトコンドリアに局在するシステイン tRNA 合成酵素(cysteinyl-tRNA synthetase 2: CARS2)により産生される。本学では COPD 患者の気道被覆液や肺組織では健常者と比べて RSS 含有量が有意に低下していることを世界に先駆けて 2017 年に報告している。しかし RSS が COPD 病態において果たしている役割や、RSS 産生酵素である CARS2 との関係性については明らかになっていなかった。以上の背景より、本研究では細胞老化に着目し COPD 病態における RSS および CARS2 の役割を明らかにすることを目的とした。

【方法と結果】
はじめに in vitro の検討としてヒト胎児肺線維芽細胞(human fetal lung fibroblast: HFL-1)にタバコ抽出液(cigarette smoke extract: CSE)を曝露し細胞内 RSS および CARS2 の動態と細胞老化の関係性を調べたところ、CSE 曝露により細胞内の CARS2 発現量および RSS 含有量のいずれも減少しており、これらは細胞老化のマーカーと負の相関関係を認めた。次に siRNA を用いて CARS2 をノックダウンすることで CSE曝露による細胞老化や細胞機能の低下について検討を行ったところ、CARS2 のノックダウンにより細胞内 RSS は顕著に低下し、CSE による 細胞老化も増悪することが分かった。さらに CSE 曝露前に RSS 供与体であるグルタチオン・トライサルファイド(GSSSG)で前処理するこ とによる抗老化作用について検討を行ったところ、GSSSG の前処理により CSE 誘導性の細胞老化が抑制された。次に in vivo の検討として Cars2+/-マウスと野生型マウスの加齢個体における肺の気腫化の程度を比較したところ、Cars2+/-マウスでは肺組織の老化が進んでおり気腫化の増悪も認めた。さらに Cars2+/-マウスと野生型マウスに対して CSE 経鼻投与を行い、肺の気腫化や細胞老化、呼吸機能の測定を行ったところ Cars2+/-マウスはすべての項目で老化が促進していた。最後に外因性 GSSSG の補充による抗老化作用についても検討を行ったところ、CSE 投与による老化・気腫化が抑制される結果が得られた。

【結論】
以上の結果はタバコ煙による肺の老化および気腫形成に RSS とその産生酵素である CARS2 が関与している可能性を強く示唆している。さらに外因性の RSS 補充によりその影響が軽減されることも示した。CARS2-RSS 経路が COPD の病態に関与しており、新規治療標的にもなりうると考えられる。

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