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大学・研究所にある論文を検索できる 「Systematic study of the order Elasipodida (Echinodermata, Holothuroidea) in Japanese waters」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Systematic study of the order Elasipodida (Echinodermata, Holothuroidea) in Japanese waters

小川, 晟人 東京大学 DOI:10.15083/0002006707

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨
氏名

小川

晟人

本論文は6章で構成される.第1章はイントロダクションであり,本研究で取
り扱った棘皮動物門ナマコ綱板足目に関する系統分類の研究の歴史と現状がま
とめられている.板足目は主に深海域に分布しており採集機会を得るのが比較
的困難であること,ゼラチン質の体をもつため標本が壊れやすく形態学的な研
究が難しいことなどから,研究が立ち後れている現状に触れている.しかしなが
ら,深海底生生物群集で優占的な動物群であるため,深海生物の生態や進化を理
解する上で鍵になる動物群であることや,ナマコ綱の中でも祖先的なグループ
であるためナマコ綱の進化を探る上では重要な系統的位置にあると考えられる
ことなどから,研究内容の重要性を明瞭に示している.
第 2 章は,日本産の種を中心とした板足目の分類についてまとめている.11
種のタイプ標本を含む約 500 点の標本を詳細に観察し,次章での分子系統解析
において示された新たな分類体系に従って,日本周辺の板足目の分類を再編し
た.日本周辺海域から 6 科 13 属 42 種の板足目の生息を確認することができた.
カンテンナマコ科は 1 初記録種を含む 2 属 7 種,ハゲナマコ科(新科)は 2 新
種,2 初記録種を含む 5 種,クラゲナマコ科は 1 属 1 種,エボシナマコ科は 2 初
記録種を含む 2 属 9 種,クマナマコ科は 1 新種を含む 5 属 15 種,ウシナマコ科
は 1 初記録種を含む 2 属 5 種で,新種や初記録種には詳細な記載を与えた.主
たる分類形質の 1 つである,体壁中に存在する微小な骨片については,骨片の
大まかな形状のみならず,走査型電子顕微鏡を用いて微細な形態を観察すると
ともに,多数の骨片を観察し定量的な記述をするという新たな手法を用いるこ
とにより,より明瞭に種の識別ができることを明らかにしていている.
第 3 章では,板足目の系統的な位置や,板足目内の科や属の分類体系を再検
討するために,従来にない長さの配列を用い多くの種を含んだ 2 つの分子系統
解析を行った.4 科 15 属 35 種の板足目種を含むナマコ綱 97 種のチトクローム
c オキシダーゼ1(COI)遺伝子,16S 及び 18S リボソーム DNA の 3 領域(合計
2485 bp)を用いた分子系統解析では,板足目の単系統性が強く支持され,現生
ナマコ綱の中では無足目に続いて板足目が 2 番目に分岐したことが確認された.
これまで 4 科に分類されていた板足目には 6 クレードが認められることが明ら

1

かにされ,カンテンナマコ科はこのうちの 3 クレードに属し多系統群となるこ
とが示唆された.属レベルでは,カンテンナマコ属,ハゲナマコ属,ユメナマコ
属およびエボシナマコ属の 4 属が単系統となることを確認し,Amperima 属とハ
ナガサナマコ属は多系統に,ワタゾコナマコ属とウシナマコ属は側系統となり,
今後の属の再検討の必要性が示された.
この系統樹で認められた 6 クレードのうち 2 クレードでは,その支持率が低
かったため,これらの 2 クレードについても明瞭な支持を確認することを目的
として,より保存的な配列である 18S および 28S リボソーム DNA(合計 5603
bp)を用いた系統解析も実施した.この板足目 15 種を用いた解析においても,
板足目は 6 つのクレードに分かれ,この系統樹ではすべてのクレードの単系統
性が強く支持された.これにより,クラゲナマコ科,エボシナマコ科の単系統性
が確立し,カンテンナマコ科は側系統となる 2 クレードに分かれ,クマナマコ
科は単系統群となったが,科内に遺伝距離が大きく離れた 2 クレードを包含す
ることを明らかにした.カンテンナマコ科の 2 クレードとクマナマコ科の 2 ク
レードを含む板足目の 6 クレードは,背側の疣足の配列,石灰環,および体壁骨
片の形態によって,形態によっても明瞭に区別することができた.6 クレード間
の遺伝距離は十分に大きいことから,各クレードを科とするべきであると判断
された.その結果,板足目を 6 科,カンテンナマコ科,ハゲナマコ科(新科),
クラゲナマコ科,エボシナマコ科,クマナマコ科,ウシナマコ科(亜科から昇格)
に再編し,各科に形態的定義を与えることに成功した.
第 4 章では,ハゲナマコ属の種の分類を見直すため,COI 遺伝子及び MIG-seq
法を用いて決定したゲノム全体の一塩基多型(SNP)情報を用いて,ハゲナマコ
属内の種多様性の評価を行った.太平洋,南インド洋,南極海から採集した 221
個体を用いて解析を行ったところ,COI および一塩基多型による系統樹のいず
れも同一の 10 クレードが確認され,各クレードは別種と判断するのに十分な遺
伝的距離で互いに分離されることが明らかとなった.本属は,これまで広く太平
洋に分布するムラサキハゲナマコと,Pannychia taylorae の 2 種のみが認められ
ていたが,10 種として扱うべきと結論づけた.これらの 10 種のうち,北西太平
洋には 5 種が,南西太平洋には 3 種が分布しているが,これらは地理的,深度
的に異なる分布範囲をもっていることを明らかにすることができた.
第 5 章では,第 2〜4 章の結果を踏まえ,日本周辺を含む北西太平洋海域にお
いて板足目の種多様性が高い要因,新たに構築した体壁骨片の形状によるタイ
プ分けの分類学的な有効性,ムラサキハゲナマコのように広域分布種とされて

2

きた種の実態について,総合的な議論をし,板足目が深海底で優占的な分類群と
なっている成因を追求することができた.この本研究における成果については,
第 6 章の結論で明瞭に述べられている.
なお,本論文の第 2 章の一部は,森田貴己・藤田敏彦との共同研究であるが,
論文提出者が主体と成って分析および検証を行ったもので,論文提出者の寄与
が十分であると判断する.
したがって,博士(理学)の学位を授与できると認める.

3

この論文で使われている画像

参考文献

This study

Hansen (1956, 1967,

1975); Belyaev (1971)

Belyaev (1971, 1975)

Belyaev (1971)

Belyaev (1971)

Belyaev (1971)

Belyaev (1975);

Rogacheva (2007)

Axis diameters (μm)

Additional ossicles in

dorsal body wall

Rods, Elpidia-type ossicles, of tentacles

Axis shape

Figures

Fig. 2-21 Fresh specimen of Elpidia soyoae sp. nov. (NSMT E-12635: paratype). A, dorsal view; B,

ventral view.

Fig. 2-22 Papillae arrangements of Elpidia soyoae sp. nov. A, left side view; B, right side view; C–F, dorsal

side. A–B, holotype; C, NSMT E-12635: paratype; D, NSMT E-12636: paratype; E, NSMT E-12637:

paratype; F, NSMT E-12639: paratype. Abbreviations: lp, paired papillae on dorsal left radius; lu, unpaired

papillae on dorsal left radius; rp, paired papillae on dorsal right radius; ru, unpaired papillae on dorsal right

radius.

Fig. 2-23 Calcareous ring of Elpidia soyoae sp. nov. (NSMT E-12638: holotype). A, entire ring in dorsal

view; B, variation of isolated pieces; C, branched inside posterior arm. Black arrowheads show five

pieces surrounding pharynx. Abbreviations: ba, branched arm of inside posterior arms; iaa, inside

anterior arms; ipa, inside posterior arms; oaa, outside anterior arms; opa, outside posterior arms.

Fig. 2-24 SEM images of ossicles from dorsal body wall of Elpidia soyoae sp. nov. (NSMT E-12635:

paratype). A, rods with straight axis, well developed horizontal arms, and vertical apophyses; B, wheel

from convex side and obliquely lateral side. Abbreviations: ax, axis; bt, brim teeth; ccp, central

Fig. 2-25 SEM images of ossicles from ventral body wall of Elpidia soyoae sp. nov. (NSMT E-12639:

holotype). Rods with straight axis, well developed horizontal arms, and vertical apophyses.

Abbreviations: ax, axis; ha, horizontal arms; va, vertical apophyses.

Fig. 2-26 SEM images of rods from tentacles of Elpidia soyoae sp. nov. (NSMT E-12635: paratype).

Rods with arched axis, especially shortened horizontal arms, and vertical apophyses. Abbreviations: ax,

axis; ha, horizontal arms; va, vertical apophyses.

...

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