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大学・研究所にある論文を検索できる 「日本産ヒゲナガキバガ科(チョウ目・キバガ上科)の分類学的再検討」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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日本産ヒゲナガキバガ科(チョウ目・キバガ上科)の分類学的再検討

奥, 尉平 OKU, Johei オク, ジョウヘイ 九州大学

2022.09.22

概要

ヒゲナガキバガ科Lecithcoeridaeは、成虫の触角が前翅より長く、幼虫が枯葉を採餌する腐植食性の小蛾類である。本科はキバガ上科に属し4亜科85属1300種以上が知られ、東洋区を中心とした世界中に分布する。しかし、害虫種を含まないため経済発展に寄与しづらいこと、成虫の斑紋が類似して同定が困難であることから、日本において本科に着目した分類学的研究は行われていなかった。近隣国である中国からは45属206種以上の種が確認されていることから、日本においても種数はさらに増えることが予測される。さらに近年、セルロース系バイオマスから工業用エタノールを生成するためのプロセスが注目されている。腐植食性小蛾類の中で、野外で比較的多く存在するヒゲナガキバガの幼虫は、セルラーゼ活性を持つことが示唆されその応用が期待されているが、本科についての基礎情報が圧倒的に不足しており、生活史の解明はされていない。そこで本研究は、日本産ヒゲナガキバガ科の基礎情報を整理するために、種多様性を解明するとともに、飼育体系を確立し、幼生期の形態を含む生活史を解明することを目的として研究を行った。

研究材料は、日本各地で採集した成虫に加えて、全国の研究機関からの借用標本および個人研究者のコレクションを用いた。得られた標本について、翅の斑紋、翅脈、交尾器などの形態を詳細に検鏡し比較を行った。加えて成虫標本からDNAの抽出を行い、ミトコンドリア遺伝子COI領域の塩基配列を決定し、最尤法とベイズ法を用いて系統解析を行った。さらに7属10種について、本科では初めてとなる累代飼育を試み、得られた幼虫・蛹の標本に基づいて形態を比較した。

本研究の結果、新たに7未記載種、2日本初記録種、3未同定種を確認し、日本産の本科の種数は2亜科9属15種から2亜科11属27種となった。また、COI領域の塩基配列を利用することにより、成虫の外見による識別が困難な本科各種について、正確な同定ならびに雌雄の対応を確認することができた。さらに、5属8種について累代飼育方法を確立することに成功し、幼虫・蛹の標本を得ることができた。これらの形態を比較した結果、蛹の形態については、亜科間で、Lecithcoerinaeでは蛹の尾突起(cremaster)が二叉しないがTorodorinaeでは二叉するという差異が確認できた。また属間でも、Lecitholaxa属では気門が突出する、Deltoplastis属では触角が腹部末端節まで到達するなど差異が見出された。幼虫の形態については、特にSD1刺毛基板に差異が見出された。亜科間において、LecithocerinaeではSD1刺毛の周りがリング状の構造物で囲まれるが、TorodorinaeではSD1刺毛の周りに多数の刺毛が生じ、その周囲を囲むように基板が生じることを確認した。また属間においても、Homaloxestis属では腹部第3–8節にかけてSD2刺毛が生じるが、Athymoris属では腹部第1、2、8節において、SD1刺毛の周りをリング状の構造物で囲み、その周りを多数の刺毛を含んだ基板が生じるなどの差異を見出した。

本研究は北海道から琉球列島にかけて網羅的に調査を行ったため、日本産本科の主要なファウナは明らかになったと考えられる。また本研究で新たに確認された12種のうち、半数以上の7種が南西諸島に分布することから、本科の多くはこの地域で島嶼ごとに多様化していると考えられた。種間関係を把握するために、COI領域を用いて行った系統解析から、キイロホソバヒゲナガキバガLecithocera fascimaculata Oku, 2021を含む5種が単系統群であることが確認された。これら5種について、オス腹部7節腹板形状に対のlobe状の構造物を持ち、オス交尾器形状もcucullusが細くなる類似点があることから、オス腹部末端節形状や交尾器形状を用いて、今後種群が設立される可能性があることも示唆された。クロカクバネヒゲナガキバガAthymoris martialis Meyrick, 1935とオビカクバネヒゲナガキバガDeltoplastis apostatis(Meyrick, 1932)について、両者の成虫外見、幼虫及び蛹の形態に顕著に差異が見られる。しかし、別種同士ではCOI領域の遺伝距離が3%以上となる場合が多い蛾類において、これらの遺伝距離は0.5%未満となり、外部形態による判別とDNA分析による判別に不一致が生じた。両者については浸透性交雑や急速な形態の分化が生じていることも考えられるため、核DNAを対象とした遺伝情報を蓄積する必要がある。さらに、累代飼育法を確立したことにより、本科の生活史を解明すること、幼生期サンプルを確保することが可能となった。また、蛹の気門の突出程度、幼虫の腹部各節に存在するSD1を含む刺毛基板の形状が異なることが確認されたことから、これらの形質は、各属の再定義や亜科の高次分類体系を再検討する際に有用であることが示唆された。

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