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Mesenchymal stem/stromal cells generated from induced pluripotent stem cells are highly resistant to senescence

青井, 智典 名古屋大学

2023.07.05

概要

主論文の要旨

Mesenchymal stem/stromal cells generated from induced
pluripotent stem cells are highly resistant to senescence
人工多能性幹細胞から作成した間葉系幹細胞は老化の影響を受けにくい

名古屋大学大学院医学系研究科
病態内科学講座

総合医学専攻

腎臓内科学分野

(指導:丸山 彰一
青井 智典

教授)

【緒言】
間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell:MSC)は自己複製能と分化能をもつ幹細胞の一
種であり、その分化能や表面マーカーによって定義されている。MSC は生体において
骨髄や脂肪組織、臍帯などに存在する。また、MSC には抗炎症作用、血管新生促進作
用などがあり、再生医療の分野において注目されている。当研究室でも、これまでに
腎炎や急性腎障害に対する MSC の治療効果を示してきた。
MSC を臨床応用するにあたり、懸念すべき事項がある。1 つ目は細胞の老化である。
MSC は、継代を重ねることで細胞増殖速度が低下することが低下することが報告され
ている。細胞の老化は、治療に必要な十分量の細胞を確保するという面で、ネックと
なる。2 つ目は細胞の不均一性である。MSC はソースの違いにより、増殖能や分化能
が異なることが報告されている。
近年、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPSC)から MSC を分化誘導で
きることが報告されている。iPSC から誘導した MSC(induced MSC:iMSC)は均一性の
高い細胞を大量に得られる可能性があり、新たな細胞供給源として期待されている。
iMSC の老化を評価した報告はあまりない。今回我々は iMSC の老化について、骨髄由
来 MSC(BM-MSC)と比較して評価した。
【方法】
まず末梢血由来 iPSC から MSC を作成した。次に iMSC と BM-MSC をそれぞれ培
養し継代を続け、形態変化と細胞増殖を評価した。Passage number(PN)3, 5, 7, 9, 11,
13 の細胞を Fluorescein Di-β-D-Galactopyranoside(FDG)を用いて染色し、フローサイト
メーターで解析した。また、各 PN の培養上清を回収し、肝細胞増殖因子(Hepatocyte
Growth Factor:HGF)を測定した。
【結果】
iMSC は継代を続けても細胞形態が大きく変化しなかったのに対して、BM-MSC は
継代が進むにつれて細胞径が大きくなった(Fig 1A、1B)。また、BM-MSC は細胞増殖
が遅くなる傾向があり、継代に必要な十分な細胞数を得ることが難しかった(Fig 1C)。
iMSC の FDG 陽性細胞率は継代が進むにつれて増加しなかったが、MB-MSC では
FDG 陽性細胞率が上昇した(Fig 2A、2B)。
iMSC の培養上清中の HGF 濃度は、継代に伴い上昇し、PN 9 でプラトーに達した。
BM-MSC では多くが検出感度以下だった。(Fig 3)
【考察】
今回我々は、継代による iMSC の形態学的変化と FDG 陽性細胞の割合を調査し、
BM-MSC と比較した。iMSC は継代を重ねても、増殖限界に至ることはなく増殖を続
け、細胞形態は大きく変化しなかった。また、FDG 陽性率も大きく変化せず、iMSC は
老化の影響を受けにくいと考えられた。iMSC の培養上清中の HGF 濃度は、継代を重

-1-

ねるにつれ上昇する傾向があり、継代を重ねても治療効果が落ちにくい、あるいは治
療効果が増す可能性が示唆された。
MSC は生体において、骨髄・脂肪組織・臍帯をはじめ、広範な組織に存在する。中
でも骨髄由来の MSC が広く利用されているが、臨床応用するにあたり、必要な細胞
数を確保することの困難さ、細胞採取のため全身麻酔を必要とする処置の侵襲性など
の問題があらわになってきた。iPSC を MSC のソースとして用いることで、これらの
問題が解決できる可能性がある。iPSC 自体も無限に増殖が可能であり、iPS 細胞の時
点で多くの細胞数を得ることが可能である。さらに、iMSC の段階でも、同一のロット
の細胞を安定して大量に得ることができる。そのため、BM-MSC のように、侵襲を伴
う処置を繰り返し行う必要がない。臨床応用を考えた場合、BM-MSC では、細胞を採
取するごとに、ドナーや得られた細胞の感染症の有無を確認する必要がある。また、
得られた細胞の品質を確認することも必要となる。これらの労力・コストは、臨床応
用を考えた場合、高い水準で行う必要があり、極めて大きくなる。一方、iMSC では、
同一ロットの細胞を大量に得ることができれば、これらは均質な細胞群であり、品質
や感染症のチェック等も一度で済ますことが可能である。その労力・コストの削減は、
臨床応用を見据えた場合、非常に大きなメリットとなる可能性がある。また、細胞の
品質、ひいては治療に用いた場合の治療効果のばらつきも解消されている可能性が高
いと考えられ、品質管理の意味でも意義は大きいと考えられる。
加えて、iMSC を用いるメリットとして、iMSC を大量に増殖させることで、同一患
者に同一ドナー由来の iMSC を使用し続けることが可能である点も挙げられる。MSC
は免疫原性が小さく、もともと他家あるいは異種移植においても排除されにくいとさ
れている。一方で、MSC の HLA に対する抗体が出現するという報告もある。慢性的に
進行する腎疾患に対して様々なドナー由来の MSC を使用し続けることで、最終的に
末期腎不全に至った時点で、腎移植の選択肢を狭める危険がある。HLA 抗体が産生さ
れるまでは、同一ドナー由来の MSC を使用可能となる点でも、iMSC には利点がある。
MSC は採取臓器により、増殖能、成長因子分泌能、分化能などに違いがあり、培養
環境の違いによっても大きく性格が変化する。我々は、これまでの研究で、MSC の治
療効果に関する因子として HGF に注目してきた。HGF は成長因子の一種で、その分
泌量が多い MSC は、虚血関連の組織修復作用や免疫制御作用が高いことを報告した。
さらに、HGF 濃度が上昇する条件などについても検討してきた。今回我々が用いた
iMSC では、継代を続けても HGF の分泌量が減少することはなく、むしろ増加してい
た。そのため、組織修復作用や免疫制御作用などの治療効果に関わる働きも、継代に
伴って減少しない、むしろ高くなる可能性すらあると考えられる。ひいては、腎炎に
対する治療効果についても、継代に伴って減少しないことが期待できる。
【結語】
人工多能性幹細胞から誘導した間葉系幹細胞は老化の影響を受けにくく、腎疾患へ
の治療効果も大いに期待できる。

-2-

Fig. 1. Cell proliferation of MSCs along with passaging. (A) Morphology of iMSCs after passaging. Changes in iMSC
and BM-MSC morphology with passaging from P3 to P13. The upper lane shows iMSCs and the lower lane shows
BM-MSCs. Scale bar = 100 μm. (B) The largest diameter of the cells. The mean and standard error of the largest
diameter of 20 cells at each passaging number is shown. (C) Mean and standard error of the numbers of cells of iMSCs
(n = 2) and BM-MSCs (n = 2) after passaging are shown. PN, passage number; iMSCs, induced mesenchymal stem
cells; BM-MSCs, bone marrow-derived MSCs.

-3-

Fig. 2. Senescence of MSCs along with passaging. (A) Change in population of FDG-positive cells along with
passaging. Flow cytometry results are shown for FDG from P3 to P13 of iMSCs and BM-MSCs. (B) Rate of transition
of FDG-positive cells along with passaging. Mean and standard error of the FDG positivity of iMSCs (n = 5) and BMMSCs (n = 4), using P3 as a reference, and how it changed as passaging progressed from P3. PN, passage number;
iMSCs, induced mesenchymal stem cells; BM-MSCs, bone marrow-derived MSCs; FDG, fluorescein di-β-Dgalactopyranoside.

-4-

Fig. 3. Change in concentration of HGF with passaging. Mean and standard error of HGF concentrations in culture
supernatants of iMSCs (n = 7) and BM-MSCs (n = 2-3). PN, passage number; iMSCs, induced mesenchymal stem
cells; BM-MSCs, bone marrow-derived MSCs; HGF, hepatocyte growth factor.

-5-

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