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大学・研究所にある論文を検索できる 「Numerical study on the self-aggregation of moist convection in radiative-convective equilibrium」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Numerical study on the self-aggregation of moist convection in radiative-convective equilibrium

Yanase, Tomoro 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23712

2022.03.23

概要

雲は気候系において重要な役割を果たす。積雲対流の自己集合化(CSA) とは、放射対流平衡(RCE)という理想条件で見られる湿潤対流の自発的な組織化過程である。CSA の発生時には、大気は湿潤域(雲域)と乾燥域(晴天域)とに分離していき、大気の放射過程が影響を受け、それが対流活動に反映していく。しかし、CSA の発生条件や発生機構はいまだ十分に理解されていない。本研究では、RCE 条件での湿潤対流を対象として、非静力学気象モデルを用いて水平格子幅や計算領域の水平幅を系統的に変化させた数値実験を行い、どのような計算条件で CSA が発生するかを解析し、CSA の発生に至る物理機構を調べた。
 従来は水平格子幅が約 2 km よりも小さい場合には CSA は発生しないとされてきた。しかし本研究では、既往研究よりも高い水平解像度かつ広域の計算領域を設定した大規模数値実験を行うことで、水平格子幅が 1 km 以下であっても水平領域幅が十分に大きい場合には CSA が発生することを初めて示した。系統的な数値実験の結果から、水平格子幅と水平領域幅というパラメータ空間において、CSA の発生の有無を示したレジーム図を作成した。また、水平格子幅が小さくなるにつれて、CSA の発生を許容する臨界的な水平領域スケールが約 500 km に収束することを発見した。この結果は、CSA がメソ α スケール以上の雲の組織化において重要な過程であることを示唆している。同時に、本解析結果は、現実大気においても積雲対流と大規模場との相互作用の背後にメソ α スケール相当の特徴的な長さスケールが存在することを示唆している。また、CSA の発生は、乾燥域から湿潤域へ水蒸気を逆勾配の方向に水平輸送する下層の流れを伴うことを見出した。RCE 条件においては、2 つの相反する効果、すなわち、(1) 湿潤域における蒸発冷却により駆動される冷気プールによる水蒸気場の水平均一化効果、および、(2)乾燥域の放射冷却により駆動される冷気プールによる水平不均一化効果、が共存する。本研究で示した CSA の発生の有無は、これら相反する 2 つの効果の拮抗により決定される。
 次に、等可降水量線による水平領域分割に基づいて循環強度の新たな指標である準 3 次元流線関数を導入することにより、大規模な循環場の特徴を定量的に解析するための新しい手法を提案した。この解析手法を用いて、CSA が発生する場合には、乾燥域から湿潤域へと水蒸気を流入させる下層循環が卓越すること、その力学的な駆動源が乾燥域下層での放射冷却に伴う浮力の水平勾配であることを明らかにした。一方、CSA が発生しない場合には、湿潤域下層の蒸発冷却に伴う浮力水平勾配によって、湿潤域から乾燥域へと向かう下層循環が卓越する。さらに、これら下層循環の形成に先立つトリガー機構として、乾燥域における自由対流圏下降流の境界層への貫入が重要である。水平領域幅を大きくした場合に乾燥域の自由対流圏下降流を強化するのは対流加熱の弱化であり、乾燥域の対流加熱の弱化は水蒸気量の水平勾配の増大により生じる。水平領域幅が大きくなると、より大きなスケールでの循環や水蒸気量の水平変動が許容され、結果的に乾燥域における自由対流圏下降流の強化を通じて CSA が生じる原因となる。本研究は、水蒸気、放射・対流、下層循環の関係を統合することで湿潤対流の組織化機構の理解を深めることに貢献した。