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大学・研究所にある論文を検索できる 「Significance of the Alfvén waves in the thermospheric dynamics in the cusp region」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Significance of the Alfvén waves in the thermospheric dynamics in the cusp region

Oigawa, Tomokazu 京都大学 DOI:10.14989/doctor.k23709

2022.03.23

概要

本論文では,高緯度熱圏のカスプ域周辺に特徴的に見られる中性大気の質量密度上昇について,静的な過程とアルフベン波による時間変動する過程の双方によって引き起こされるジュール加熱がどのように関わっているのかを,高い空間分解能をもつ2次元の局所モデルを構築することにより明らかにすることを目的としている.

 まず,第1章では,カスプ域の中性大気質量密度上昇について,これまで理解されている特性を整理するとともに,その現象と関連する沿磁力線電流や中性・イオンドラッグ,電子降下,電離圏アルフベン波共鳴等の性質を解説している.また,大気質量密度上昇現象の未解決課題を説明し,それをふまえて本研究の目的を述べている.

 第2章では,高緯度の熱圏・電離圏のダイナミクスをモデル化するための方法論を記述している.中性,イオン,電子のそれぞれのダイナミクスを支配する方程式系を示し,アルフベン波の伝搬に関わる理論を整理している.また,アルフベン波を数値計算するための詳しい方法も記述している.

 第3章では,静的な過程だけを考えた場合に,実際にカスプ域周辺で人工衛星観測から得られている大気質量密度上昇の大きさを,どの程度まで説明できるのかを調べている.カスプに典型的な水平電場分布と低エネルギーの降下電子分布を静的な過程として精度良く取り込める高い空間分解能をもつ2次元の局所モデルを構築し,その詳細を記述している.このモデルを通して,中性・イオンドラッグ過程と酸素イオンの生成に関わるF層高度の化学反応過程のそれぞれの時間変化に焦点をおいて,大気質量密度上昇の形成に対する両者の役割を明確にしている.そのうえで,静的な過程だけを考えた場合,カスプの400kmの高度における大気質量密度上昇分としては,典型的な観測量の3分の1程度しか説明できないことを明らかにしている.

 第4章では,アルフベン波による時間変動する過程によって,ジュール加熱とその結果としての大気質量密度上昇がどのように生成されるのかを明らかにしようとしている.第3章で示したモデルを発展させ,アルフベン波による時間変動する過程をも取り込めるようにしている.アルフベン波の数値計算においては,フーリエ変換を用いてアルフベン波を周波数領域の境界値問題として解いている.実際のモデリングでは,電離圏アルフベン波共鳴を表現できる沿磁力線電流密度を与えられるようにしている.このモデリングを通して,アルフベン波共鳴に伴うジュール加熱が高度300km付近で中性大気の大きな上昇流を生み出し,それが原因となって,高度400km付近を中心に大気質量密度上昇の塊が形成されることを示している.具体的には,この塊は,電離圏アルフベン波共鳴が始まって約1時間で顕著になり,さらに2時間以上安定して存在する.開始から3時間後の400kmの高度での大気質量密度上昇分は,20μA/m²の沿磁力線電流密度を与えた計算において33%に達することが示されている.

 これにより,構築したモデルが先行研究の観測結果を定量的に説明できることを示している.この時の入射ポインティングフラックスは約8mW/m²であり,この量もまた過去の衛星観測と矛盾のないことを示している.

 最後の第5章では,この研究から得られた結果をまとめ,全体的な結論を述べている.