Identification of novel senescence markers by proteomic analysis of small extracellular vesicles secreted from senescent cells

概要

（書式１８）

学
（

位 論 文 要 約
A b s t r a c t ）

博士論文題目 Title of dissertation
Identification of novel senescence markers by proteomic analysis of small extracellular vesicles
secreted from senescent cells
（老化細胞から分泌される細胞外小胞のプロテオミクス解析による新規細胞老化マーカーの同定）
東北大学大学院医学系研究科 医科学専攻
発生・発達医学

講座

氏名 Name

婦人科学
三澤

分野

知香

細胞老化は、放射線や抗がん剤投与などの外的ストレス、がん遺伝子の活性化や肥満などの内的ストレスに
より DNA に修復不可能な損傷が生じたときに不可逆的に細胞周期が停止することで引き起こされる。細胞老
化を起こした細胞は加齢とともに生体内に蓄積し、炎症性蛋白質やエクソソームなどの細胞外小胞
（Extracellular vesicles, EVs）の分泌を亢進する SASP (Senescence-associated secretory phenotype)
という現象を引き起こすことが知られている。微小環境においては、老化細胞が分泌する SASP 因子が線維化
や慢性炎症を引き起こし、がんを含む加齢性疾患の発症や病態の悪化へ関与する。また、抗がん剤による化学
療法や放射線療法などのがん治療の過程で生じる老化細胞が、がんの根治を妨げている可能性も報告されてい
る。そのため、近年、生体内から老化細胞のみを選択的に除去する Senolysis という治療法が注目を集めてお
り、がん治療との併用療法が期待されている。しかし、正確に Senolytic drug を投与する時期を判断する方
法や、体内の老化細胞除去効果を評価する方法は未だ確立されていない。そこで本研究では老化線維芽細胞由
来 EVs を用いて細胞老化マーカーを同定することを目的として行った。ヒト線維芽細胞である TIG-3 細胞株
を用いて正常な細胞と２種類の老化誘導法により作成した老化細胞からサイズ排除クロマトグラフィー、ホス
ファチジルセリンに対するアフィニティー法、免疫沈降法の３種類の方法を用いて EVs を回収し、プロテオミ
クス解析を行った。さらに早老症で知られているウェルナー症候群患者と健常者由来細胞の培養上清から EVs
を回収し、プロテオミクス解析を行った。主成分分析により、老化細胞由来 EVs と若い細胞由来 EVs では主成
分が大きく異なることが示された。プロテオミクス解析の結果から若い細胞由来 EVs よりも老化細胞由来 EVs
に多く含まれる 13 種類のタンパク質と、健常者由来 EVs よりもウェルナー症候群患者細胞由来 EVs に多く含
まれる 156 種類のタンパク質の共通項を調べた結果、EVs の細胞老化マーカーとして 2 つの候補タンパク質が
同定された。さらに、これら 2 つのタンパク質は、老化マウスの血清由来の EVs に有意に濃縮されていた。本
研究により、EVs に含まれる老化マーカータンパク質を解析することで、生体内の老化細胞の存在を検出でき
る可能性が示唆された。 ...