リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

リケラボ 全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索するならリケラボ論文検索大学・研究所にある論文を検索できる

大学・研究所にある論文を検索できる 「地域高齢者における貧血と主観的健康感の関連についての研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

コピーが完了しました

URLをコピーしました

論文の公開元へ論文の公開元へ
書き出し

地域高齢者における貧血と主観的健康感の関連についての研究

野間, 智子 大阪大学

2021.03.24

概要

【目的】
高齢者の健康寿命に関与する因子を抽出するために、高齢者の食生活の実態を調査し、食育(栄養教育)介入を行った(研究1)。さらに、地域在住高齢者の貧血の実態と生命予後の指標とされる主観的健康感との関連性を明らかにし、食育介入の意義を検討することを目的とした(研究2)。

【方法】
研究1では、F市に145ある地域高齢者サロンの中から無作為に3サロンを抽出し、55名を対象に、食育介入を実施した。各サロンで3回ずつ同じ内容の食育プログラムを実施し、その効果は介入前後のアンケート調査で評価した。評価項目は、年齢、性別、BMI、居住人数、睡眠時間、服薬・食事作りの有無、食事内容などとし、介入前後のアウトカム指標を一日の各食品摂取回数、一日のバランスの取れた食事摂取回数および適正な食事バランスの理解度とした。研究2では、高齢者を対象にした長期疫学 Septuagenarians, Octogenarians, Nonagenarians Investigation with Centenarians(SONIC)研究に参加した69~91歳の高齢者(2083人)を対象に、問診、身体計測、および血液検査を行い貧血の実態を性別および年代別で調査した。次いで、得られた調査結果を貧血の有無で2群に分け、年代別に主観的健康感との関連の有無について多変量解析した。

【結果と考察】
研究1では、地域在住高齢者55人(平均年齢78.6±7.2歳、男性割合7%)の食生活の実態を調査し た。低栄養傾向者(BMI≦20㎏/m2)の割合は26.5%であった。食品別の一日の摂取回数では、主菜に属する魚介類の摂取が0.85回/日に対し、肉類の摂取は0.59回/日と少なかった。食育介入後では、一日における肉類の摂取回数が増加し、1サロンであるが「食事バランスの理解度」に有意な上昇が見られたことから、食育介入の効果が示唆された。研究2では、まず高齢者の性別および年代別における貧血の実態調査を行い、次いで、貧血と主観的健康感との関連の有無を年代別に調べた。その結果、79歳以上の高齢者の低栄養傾向者の割合は、男性で21.0%、女性で24.8%であった。高齢者全体の貧血の有病率は22.3%であり、69~71歳で、男性7.2%、女性11.6%、79~81歳で、男性27.4%、女性26.3%、89~91歳で、男性55.8%、女性44.9%と年齢間で差が見られた。また、男性の加齢に伴う急激な貧血有病率の増加が認められ、基礎疾患(がんと腎臓病)が貧血有病率の高さに影響を与えていることが推測された。さらに、栄養不良に伴う貧血の割合は約1/4であり、食育介入の必要性が示唆された。多変量解析の結果、年齢および基礎疾患等の影響を調整後も69~71歳で貧血有と低い主観的健康感との間に相関(オッズ比odds ratio 0.47, 95%Cl 0.25–0.86)が認められた。

本研究において、日本人の地域在住高齢者の疫学調査から、加齢に伴い貧血有病率の上昇が認められ、69~71歳で貧血が有ることと低い主観的健康感との間に関連性が見出された。この知見は、地域在住高齢者の貧血の早期発見と早期介入が主観的健康感の低下を防ぐことに繋がる可能性が示された。高齢者の貧血は、慢性の経過で出現し、貧血の自覚症状が乏しいとされる。今後は縦断研究を行い、貧血の有無と健康寿命の算出指標の一つである主観的健康感との関係性を解析するとともに、健康長寿を推進するためには高齢者を対象とした早期からの食育介入により、QOLを高め、より多くの高齢者の日常生活に制限のない状態につながる活動を展開する必要性が考えられた。

【結論】
日本人の地域在住高齢者の疫学調査から、年代別の貧血の有病率が明らかになり、高齢者の貧血は様々な要因(加齢、栄養不良、基礎疾患等)で引き起こされていることが考えられた。さらに、「69~71歳で貧血が有ること」と「低い主観的健康感」との間に関連性が見出された。これらの知見から、地域在住高齢者の貧血の早期発見と早期食育介入が、生命予後の指標とされ、心身の健康を自身の感覚で判断する主観的健康感の低下を予防することに繋がる可能性が示唆された。今後、縦断的研究をさらに進めるとともに、栄養教育の視点から、健康寿命の延伸と高齢者のQOLの向上を目指し、要介護の予防や先送りに繋がる貧血の予防、早期発見と改善に向けた取り組みの企画と実施に向けて貢献していきたい。

全国の大学の
卒論・修論・学位論文

一発検索!

この論文の関連論文を見る