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大学・研究所にある論文を検索できる 「肥満小児の凝固線溶系指標および心血管疾患危険因子に関する研究」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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肥満小児の凝固線溶系指標および心血管疾患危険因子に関する研究

菊池, 敏弘 筑波大学

2021.12.02

概要

背 景:本邦における⼩児期の標準体重+20%以上の肥満の発⽣率は、昭和 40 年代において頻度は 2〜3%前後であったが、近年では 2006 年をピークに 8〜10%程度と 3〜4 倍程度の増加がみられる。成⼈および⼩児を問わず、肥満に伴う健康障害発⽣は、過剰な内臓脂肪蓄積が深く関与している。2000 年には⽇本⼈成⼈を対象とした肥満症診断基準が、2002 年には⼩児肥満症判定基準が策定され、⼩児は 20107 年版が最新版となっている。⼩児の肥満は、摂取エネルギーが消費エネルギー及び成⻑のためのエネルギーの和を上回ることで余分なエネルギーを脂肪へ貯蓄することで⽣じる。したがって、正常な発育を妨げないように消費エネルギーを増⼤させることが重要である。⼩児期の肥満及びメタボリックシンドローム(MetS)への各病態や体⼒に応じた運動療法、⾷事療法の実施は、内臓脂肪の減少に寄与し、糖脂質代謝の改善やアディポカインの適正化、⾎管内⽪機能の改善をもたらし、将来の⽣活習慣病予防に有効である可能性があり、実臨床でも実施可能な⽅法を開発していく必要がある。⼩児期の肥満及び MetS において⽇常的な検査としては推奨されていないため、⾎管内⽪機能の指標としての可溶性トロンボモジュリン(sTM)に関する研究は⾮常に少ない。しかし、⼩児期における⾎管内⽪のバイオマーカーに関する研究では、慢性腎臓病患者の sTM は腎機能パラメーター、収縮期⾎圧との相関があると報告され、慢性腎臓病患者における⾎管内⽪マーカーとしての有⽤性も⽰唆されている。また、⼩児の⾮アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)における sTM はBody Mass Index(BMI)と相関があり、NAFLD のバイオマーカーとしての有⽤性を⽰唆している。本研究では、肥満⼩児の凝固線溶系指標および⼼⾎管疾患危険因⼦との関連性を明らかにし、肥満⼩児の改善にむけて実臨床で可能な⽅法を検討することが⽬的である。

(研究1)
⽬ 的:思春期前の健常学童を対象として sTM を計測し、その標準値を確⽴するとともに、⼩児の肥満やメタボリックシンドローム関連指標、他の⾎管内⽪障害のマーカーとの関係性を検討すること。

対象と⽅法:茨城県常総市の⼩学校 4 年⽣(9〜10 歳、男児 315 ⼈、⼥児 267 ⼈)で、本研究への参加に本⼈及び保護者の同意が得られた健常な学童 582 ⼈を対象とした。⾝体測定(⾝⻑、体重、腹囲)、⾎圧測定、sTM、レプチン、フィブリノーゲン(Fbg)および⼀般的な⽣化学マーカーの⾎液検査を⾏い、これらのマーカーの平均、10、50、および 90 パーセンタイル値を調査した。腹囲が 75cm以上および未満の2群に分け、すべてのパラメーターを⽐較検討した。さらに⼼⾎管疾患リスク因⼦の数に基づくサブグループ間でも同様に⽐較検討した。

結 果:腹囲が 75cm 以上の群で総コレステロール、ALT、尿酸、sTM、Fbg、leptin は有意に⾼値を⽰し、HDL コレステロールは有意に低下していた。また、sTMは⼼⾎管疾患リスク因⼦の蓄積とともに上昇した。

考 察:⼩児期の肥満及びMetS において⽇常的な検査としては推奨されていないため、⾎管内⽪機能の指標としての sTM に関する研究は⾮常に少ないが、腹囲肥満であると s T M が⾼値であることを⽰した。このことから⼩児期の肥満は脂肪組織の増加および MetS の進⾏は sTM を上昇させ、⾎管内⽪の状態を評価するために有⽤なバイオマーカーとなる可能性がある。
本研究では、思春期前の健常な⼩児集団における⾎管内⽪機能のバイオマーカーとしての sTM の標準値を確⽴するとともに、⼩児肥満や MetS との関連を⽰すことができた。今後、他の内⽪障害のバイオマーカや炎症バイオマーカとの相関、⽣活習慣との関連性を検討することにより、⼩児肥満における sTM の病的意義が解明されるものと思われる。

結 論:本研究では思春期前の⼩児の sTM の標準値を⽰すことができた。また、sTMは⼩児 MetS に関連するパラメーターと有意な関連を⽰し、⼩児期からの動脈硬化の潜在的な進⾏に関与していることが⽰唆された。

(研究2)
⽬ 的:肥満⼩児を対象に⾷事・⽣活指導に運動療法を加えたプログラムがアディポカイン、慢性炎症および凝固線溶系指標に及ぼす影響を検討することである。

対象と⽅法
対 象:茨城県⽔⼾市近郊に在住し、選択基準を満たし、かつ除外基準に該当しない学童本⼈および保護者に本研究の⽬的と⽅法を説明し、同意が得られたものを対象者とした。

⽅ 法:対象に⾷事・⽣活指導を⾏った後、週 1 回、60 分の運動療法を 12 回(12 週間)⾏った。開始前と 12 週間終了後に⾝体計測及び凝固線溶系マーカーおよび⼀般的な⽣化学マーカーの⾎液検査、ライフスタイル調査を⾏った。介入前後の各評価項目の平均値を paired t-test、各連続変数との相関は Pearson の相関係数を用いて比較検討した。

結 果:対象者は計 19 人(男 11、女 18)、年齢の中央値 9 歳(8〜12 歳)であった。12週間後に BMI、腹囲身長比、肥満度が有意に低下した。血液指標ではアディポネクチンが有意に上昇、中性脂肪、高感度 C 反応性タンパク質(高感度CRP)が有意に低下した。また、CVD リスク因子も有意に低下し、運動時間は有意に増加した。介入前後の変化量における相関では、アディポネクチン値と hs-CRP に強い相関を認めた。

考 察:⾷事指導及び⽣活指導に運動療法を加えたことにより、活動量が増加し、内臓脂肪の減少により、アディポネクチンが上昇、CRP が低下した考えられる。アディポネクチンと⾼感度 CRP には負の相関があった。これは運動によって、脂肪細胞の代謝が改善した結果として、CRP の低下が認められたと考えられる。運動療法は⽐較的少ない運動であったが、⾷事や⽣活習慣と組み合わせることで、効果的に体格の改善や内臓脂肪の減少が得られ、さらにアディポネクチンの増加により、脂肪細胞の代謝が改善され、慢性炎症の抑制に繋がった可能性が⽰唆される。

結 論:運動療法を加えた⾷事指導及び⽣活指導のプログラムは、肥満に伴う内臓脂肪、慢性炎症を改善させ、運動習慣への影響に寄与した可能性があることが⽰され た。小児肥満の管理における非薬理学的に有効な方策としての運動の役割に関する新しい知見が提供できたと考えられる。

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