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Genetic abnormalities in a large cohort of Coffin–Siris syndrome patients

関口 太 横浜市立大学

2020.03.25

概要

1. 序論
Coffin-Siris 症候群(CSS、MIM#135900)は、粗な顔貌、発達/知的障害、第 5 指および爪の形成不全を特徴とする先天性疾患である。(Coffin and Siris, 1970)CSS の病的バリアントはBAF(BRG1- associated factor)クロマチンリモデリング複合体をコードする遺伝子に同定されている。これまでにBAF 複合体に関連する9 つの遺伝子(ARID1A、ARID1B、 ARID2、SMARCA4、SMARCB1、SMARCE1、SOX11、PHF6、DPF2)が原因遺伝子として同定され、病的バリアントを持つ患者は 150 人以上が報告されている。(Bögershausen and Wollnik, 2018)当教室ではすでに 71 人の CSS 患者を対象とした遺伝学的解析において 39 人が病的バリアントを持っていたことを報告している。(Tsurusaki et al., 2014)それ以降、182 人のCSS 患者を追加募集し、これらの 182 人と以前の報告で病的バリアントをもっていないとされた 32 人の患者に対して、一塩基バリアント、短い挿入/欠失、コピー数異常を対象とした包括的な遺伝的解析を行った。

2. 実験材料と方法
臨床的に CSS と診断された CSS 患者をあらたに 182 例募集し、以前の報告で病的バリア ントが同定されなかった 32 例と合わせ 214 例を解析の対象とした。患者及び両親から末梢 血または唾液を回収し、標準的な手法で DNA を抽出し、全エクソーム解析を行った。全エ クソーム解析で得られたデータを用い、短い挿入/欠失を含む一塩基バリアント(Single Nucleotide Variant、SNV)とコピー数異常(Copy Number Variation、CNV)を包括的に 評価し、病的バリアントを検索した。SNV の確認は PCR を行いサンガー法で配列を確認 した。CNV の確認は定量PCR を行い該当箇所の重複/欠失を確認した。SMARCB1 のバリ アントのうち特異な変化を持つものは患者リンパ芽球様細胞株(Lymphoblastoid Cell Line、 LCL)を用いてmRNA を抽出し、逆転写PCR(RT-PCR)を行いサンガー法で配列の確認 を行った。また、公共の健常人集団データベースであるgnomAD から非病的バリアントを収集し、エクソンごと(または 100 塩基対ごと)にその集積率を計算した。

3. 結果
新規解析群 182 例中、他疾患の原因遺伝子を同定した 51 例を除いた 131 例中に、CSS の原因遺伝子に 73 個の病的バリアントを同定した。再解析群 32 例中、他疾患の原因遺伝子を同定した 6 例を除く 26 例中に、CSS の原因遺伝子に 5 個のバリアントを同定した。原因遺伝子別には ARID1B が最も多く 48 例に病的バリアントを同定し、以下多い順に SMARCB1 に 8 例、SMARCA4 に 7 例、ARID1A に 6 例、SOX11 に 4 例、SMARCE1 に 1 例、PHF6 に 1 例を同定した。さらに、SMARCA2 を含む領域の CNV を 3 つ同定した。 SNV は 71 例、CNV は 7 例に同定した。SMARCB1、SMARCA4、SMARCE1 の病的バリアントは機能ドメイン上に集中しており、特に SMARCB1 においては高度に集積を認めた。特異なバリアントとして SMARCB1 に truncating variant を 1 つ、部分的なゲノム欠失を 1 つ同定した。いずれの特異なバリアントも、RT-PCR 法で異常な mRNA がナンセンス変異依存mRNA 分解機構(nonsense mediated decay:NMD)を受けないことを確認した。

4. 考察
本研究では全体として 78 例に病的バリアントを同定した。新規解析群 131 例に対する同定 率は 55.7%であり、これは他グループも含めたこれまでの報告(54.9~71%)と同様になっ た。(Santen et al., 2013; Tsurusaki et al., 2014; Wieczorek et al., 2013)これまでの複数の 報告と同様、最も多く病的バリアントが同定されたのは ARID1B 遺伝子であり、同定され たバリアントに対する割合は約 61.5%(48/78)であった。病的バリアントの特徴としては ARID1B や ARID1A にみられたものがミスセンス変異やナンセンス変異、スプライスサイ トの変異や小さな塩基挿入/欠失および大きなコピー数多型など多様であったことに比して、 SMARCA4、SMARCB1 そして SMARCE1 にみられた病的バリアントはそのタンパク質の 全長が保持されたままのものが多かった。1 アミノ酸の欠失のほかはすべて機能ドメイン内 に存在するミスセンスバリアントであり、タンパク質内での機能ドメインの機能変化が表 現型に起こしうる影響の大きさを際立たせた。SMARCB1 に見られた特異な 2 つのバリア ントは RT-PCR において NMD を回避することが確認されたが、野生型とは長さの異なる タンパク質となり、機能変化につながることが予測された。SMARCB1 におけるtruncating variant と遺伝子の一部を含む variant としては初めての報告となった。今後は RNA シー クエンスや全ゲノムシークエンスなどの他の方法を導入することで未だ遺伝的に解決して いないCSS 患者の解決に貢献する可能性がある。

参考文献

Bögershausen, N., and Wollnik, B. (2018). Mutational Landscapes and Phenotypic Spectrum of SWI/SNF-Related Intellectual Disability Disorders. Frontiers in Molecular Neuroscience 11.

Coffin, G.S., and Siris, E. (1970). Mental retardation with absent fifth fingernail and terminal phalanx. Am J Dis Child 119, 433-439.

Santen, G.W., Aten, E., Vulto-van Silfhout, A.T., Pottinger, C., van Bon, B.W., van Minderhout, I.J., Snowdowne, R., van der Lans, C.A., Boogaard, M., Linssen, M.M., Vijfhuizen, L., van der Wielen, M.J., Vollebregt, M.J., Breuning, M.H., Kriek, M., van Haeringen, A., den Dunnen, J.T., Hoischen, A., Clayton-Smith, J., de Vries, B.B., Hennekam, R.C., and van Belzen, M.J. (2013). Coffin-Siris syndrome and the BAF complex: genotype-phenotype study in 63 patients. Hum Mutat 34, 1519-1528.

Tsurusaki, Y., Okamoto, N., Ohashi, H., Mizuno, S., Matsumoto, N., Makita, Y., Fukuda, M., Isidor, B., Perrier, J., Aggarwal, S., Dalal, A.B., Al-Kindy, A., Liebelt, J., Mowat, D., Nakashima, M., Saitsu, H., Miyake, N., and Matsumoto, N. (2014). Coffin-Siris syndrome is a SWI/SNF complex disorder. Clin Genet 85, 548-554.

Wieczorek, D., Bogershausen, N., Beleggia, F., Steiner-Haldenstatt, S., Pohl, E., Li, Y., Milz, E., Martin, M., Thiele, H., Altmuller, J., Alanay, Y., Kayserili, H., Klein-Hitpass, L., Bohringer, S., Wollstein, A., Albrecht, B., Boduroglu, K., Caliebe, A., Chrzanowska, K., Cogulu, O., Cristofoli, F., Czeschik, J.C., Devriendt, K., Dotti, M.T., Elcioglu, N., Gener, B., Goecke, T.O., Krajewska-Walasek, M., Guillen-Navarro, E., Hayek, J., Houge, G., Kilic, E., Simsek-Kiper, P.O., Lopez-Gonzalez, V., Kuechler, A., Lyonnet, S., Mari, F., Marozza, A., Mathieu Dramard, M., Mikat, B., Morin, G., Morice-Picard, F., Ozkinay, F., Rauch, A., Renieri, A., Tinschert, S., Utine, G.E., Vilain, C., Vivarelli, R., Zweier, C., Nurnberg, P., Rahmann, S., Vermeesch, J., Ludecke, H.J., Zeschnigk, M., and Wollnik, B. (2013). A comprehensive molecular study on Coffin-Siris and Nicolaides-Baraitser syndromes identifies a broad molecular and clinical spectrum converging on altered chromatin remodeling. Hum Mol Genet 22, 5121-5135.

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