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大学・研究所にある論文を検索できる 「ヒト腫瘍環境内に見られる抗硫酸化グリコサミノグリカン抗体の機能解析」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

ヒト腫瘍環境内に見られる抗硫酸化グリコサミノグリカン抗体の機能解析

古谷, 弦太 東京大学 DOI:10.15083/0002006950

2023.03.24

概要

[課程-2]
審査の結果の要旨
氏名 古谷 弦太
本研究は、ヒト胃癌検体を用いた免疫グロブリンレパトアシークエンスによって得られ
たデータから、腫瘍浸潤ドミナントクローンとして同定されたクローンを抗体として再構
築し、様々な生化学的アッセイを用いることによって、その抗原のエピトープの同定、そ
の組織中・細胞上の分布、そのクローンの機能、物性、発生メカニズムを検討し、腫瘍液
性免疫の全体像の解明を試みたものであり、以下の結果を得ている。
1. 胃癌臨床検体 102 例より抽出した RNA を用いて、免疫グロブリンレパトアシーク
エンスを行った。正常部に比べて腫瘍部で、レパトアの多様性が低下する傾向が見
られ、複数症例で腫瘍に浸潤するドミナントクローンを、合計 26 クローン同定し
た。得られた配列から抗体を再構築して、免疫沈降と質量分析、及び種々の硫酸化
修飾からなるグリコサミノグリカンとその類似糖鎖からなる ELISA を行った。そ
の結果、9 つの種々のタンパクに対する抗体と、9 つの抗硫酸化グリコサミノグリ
カン抗体を同定し、その抗硫酸化グリコサミノグリカン抗体の抗原エピトープは、
ヘパリンの主な構成要素である Tri-sulfate motif (IdoA2S-GlcNS6S) に代表される硫
酸基が密なもの (densely sulfated glycosaminoglycan, dsGAG) であることが明らかに
なった。
2. 腫瘍環境における dsGAG エピトープの分布を、免疫組織化学により検索したとこ
ろ、このシグナルは主に腫瘍細胞に認められた。また、免疫細胞化学上は、腫瘍細
胞の表面に点状に分布していた。ヘパラン硫酸プロテオグリカンとの関係性を検討
したところ、腫瘍細胞表面の Syndecan-1 や Glypican-1 の一部に集中していた。
3. 一方、免疫組織化学上は、細胞膜や細胞質のみならず、腫瘍細胞の核に陽性所見が
見られた。核の構成要素である二本鎖 DNA (dsDNA) は、硫酸化グリコサミノグ
リカンと同じく、negatively charged polymer (polyanion) であり、両者とも、溶
液中では螺旋様の構造をとることが知られている。そこで、dsDNA に対するαdsGAG clone の反応性を ELISA で検討したところ、これらのα-dsGAG clone は、
dsDNA にも結合することが明らかになった。一方、他のタンパク抗原を認識する
腫瘍浸潤ドミナントクローンの抗原タンパクのほとんどが、RNA や DNA といっ
た核酸への結合が知られているものであった。一方で、α-dsGAG clone は、dsDNA
ELISA において、ヘパリンにより、その結合が阻害されており、negative charge に
強く依拠した結合様式をとっていることが認められた。

4. 腫瘍細胞に対するα-dsGAG clone の機能を検討した。α-dsGAG clone を腫瘍細胞株
に添加して、MTT アッセイおける増殖抑制の有無や、receptor tyrosine kinase のリン
酸化の阻害を検討したが、目立った抗腫瘍効果は認められなかった。一方で、flow
cytometry と免疫細胞化学での検討により、α-dsGAG clone は、腫瘍細胞の表面に結
合後、30 分程度と比較的速やかに、取り込まれることが確認された。
5. 腫瘍及び領域リンパ節における RNA-in situ hybridization を行ったところ、陽性形質
細胞は腫瘍内のある領域を中心に密に、そこからより疎に分布していることが見ら
れ、一症例のみであるが、最も密に存在する組織標本中の tertiary lymphoid structure
(TLS) 周囲への分布も確認された。一方でリンパ節には、陽性細胞はごく少ない、
ないし分布に領域性が見られなかった。以上から α-dsGAG は腫瘍の特定の領域か
ら発生したと考えられた。一方で、α-dsGAG clone の V 遺伝子内には比較的多く
の変異が見られること、及び、その中でも dsGAG や dsDNA への結合能が高いク
ローンの方が、低いクローンに比べて、complementary determining region における
non-synonymous mutation と framework region の non-synonymous mutation の比率が高
い傾向が見られており、α-dsGAG clone は affinity maturation を経ていること、胚中
心を介したものであることが示唆された。以上を併せ、腫瘍内 TLS がα-dsGAG
clone の発生起源であると強く示唆された。
以上、本論文は、ヒト胃癌内でドミナントになっている免疫グロブリンクローンの半数
が、腫瘍細胞に認められる高密度に硫酸化されたグリコサミノグリカンと二本鎖 DNA に
結合するクローンであることを明らかにし、これらのクローンは腫瘍細胞に比較的速やか
に取り込まれるという結果を得た。また、これらのクローンを産生する形質細胞は腫瘍局
所に集中して存在しており、腫瘍内から発生したものであることが強く示唆された。本研
究は、腫瘍免疫の中でも、細胞性免疫に比べ、研究が遅れていた液性免疫の解明に重要な
貢献をなすと考えられる。
よって本論文は博士( 医 学 )の学位請求論文として合格と認められる。

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