体外衝撃波による膝関節拘縮の予防効果ーラット拘縮モデルを用いた検討ー
概要
博士論文
体外衝撃波による膝関節拘縮の予防効果
―ラット拘縮モデルを用いた検討―
東北大学大学院医学系研究科医科学専攻
外科病態学講座整形外科学分野
岩津 潤
1
1
I.
要約
2
骨折、靭帯損傷、腱断裂などに対するギプスを用いた関節固定は局所治療とし
3
てよく用いられる。しかし長期間の関節固定は関節拘縮の原因となり、関節包が
4
その主要因をなすと考えられている。関節拘縮は関節の可動域制限を生じ、日常
5
生活に支障を来す。そのため関節拘縮に対する治療としてリハビリテーション
6
や手術が行われるが完全な可動域の改善はしばしば困難である。拘縮を予防す
7
ることが大切であるが、有効な予防法は未だないのが現状である。関節固定後の
8
関節包では線維化、炎症、低酸素、軟骨化生が起こることが報告されている。
9
体外衝撃波治療(Extracorporeal shockwave therapy:ESWT)は抗線維化、抗
10
炎症、血管新生、抗アポトーシス、組織修復効果があると報告されており、泌尿
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器科、循環器内科、整形外科領域で様々な疾患に使用されている。本研究の目的
12
はラット膝関節固定拘縮モデルを用い、関節固定によって起こる関節拘縮に対
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する ESWT の予防効果およびその機序を評価することである。
14
膝関節内に侵襲を加えることなく固定するラット膝関節固定拘縮モデルを使
15
用した。12 週齢 SD ラットの大腿骨と脛骨にスクリューホールを開け、膝関節
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屈曲 150°でプレート固定した。ESWT を行う群(ESWT 群)には固定後翌日
17
から固定期間終了まで吸入麻酔下に ESWT 治療(0.25 mJ/mm2, 3000 shot, 4 Hz,
18
3 日/週)を行った。コントロール群には吸入麻酔のみ行った。固定期間は 2 週、
2
19
4 週、6週とし、膝関節可動域、関節包の弾性、関節包の変化に関わる遺伝子発
20
現、タンパク発現を評価した。
21
膝関節可動域はコントロール群と比較して ESWT 群で固定4週と固定6週で
22
有意に大きく、ESWT によって膝関節拘縮の進行を妨げることができた。超音
23
波顕微鏡を用いて行った関節包の弾性評価では、コントロール群と比較して
24
ESWT 群で固定6週の後方関節包の弾性が有意に低かった。つまり ESWT によ
25
って関節包の硬化が抑制されていた。次に後方関節包の遺伝子発現を評価した。
26
ESWT 群では固定6週で I 型コラーゲン(Collagen type I (Col1))α1、結合組
27
織増殖因子(Connective tissue growth factor (CTGF))、α-平滑筋アクチン(α
28
-smooth muscle actin (α-SMA))の遺伝子発現が有意に低下していた。インタ
29
ーロイキン(Interleukin (IL))-6 と低酸素誘導因子(Hypoxia inducible factor
30
(HIF))-1αの遺伝子発現は増加していた。免疫染色では ESWT 群で固定4週
31
と6週で CTGF 陽性細胞数の割合が有意に低かった。関節癒着領域の分化抗原
32
群(Cluster of differentiation (CD))68 陽性細胞数は固定4週で ESWT 群で
33
有意に少なく、血管数は固定6週で ESWT 群で有意に増加していた。遺伝子発
34
現、タンパク発現の評価により ESWT には抗線維化、マクロファージ浸潤の抑
35
制、血管新生作用があることが示された。
36
本研究から ESWT は関節包の抗線維化、マクロファージの浸潤抑制、血管新
3
37
生の促進により関節包の弾性を低下させ、関節拘縮の進行を予防した。ESWT は
38
関節拘縮予防の新たな治療戦略となる可能性がある。ギプスやシーネ固定中の
39
患者に ESWT 治療を行うことで拘縮の進行を予防できる可能性がある。
40
41
II.
研究背景
42
骨折、靭帯損傷、腱断裂などに対するシーネやギプスを用いた関節固定は一般
43
によく用いられる治療法で、局所の安定化の他疼痛、腫脹を軽減する (1)。しか
44
し長期間の固定によりしばしば関節拘縮が生じる (2)。関節拘縮は自動・他動的
45
な可動域制限と定義され (3)、長期間の固定以外にも外傷、長期臥床による廃用、
46
凍結肩などで生じる (4―6)。肩の拘縮による着替えや洗髪動作の制限 (7)、膝
47
の拘縮による歩行や座位の制限など、関節拘縮は時に日常生活において大きな
48
支障をきたす (8、9)。関節拘縮の治療は理学療法や運動療法などのリハビリテ
49
ーションが中心であり、時に手術治療が行われるが完全な可動域の改善はしば
50
しば困難である (10)。そのため関節拘縮に対しては予防が大切である。関節拘
51
縮を予防するためにストレッチが重要とされるが (11)、その効果は限定的であ
52
る (12)。また関節固定をしながら拘縮を予防する方法はない。
53
関節拘縮の原因は筋肉等の関節外組織によるものと関節内組織によるものに
54
大きく分けられる (13、14)。その中でも関節内組織、特に関節包が重要な役割
4
55
を果たす (15)。ラットモデルを用いた研究では、関節包の硬化が関節拘縮の主
56
な原因であるとされる (13)。従って、関節包に焦点をあてれば、効果的な関節
57
拘縮予防の治療戦略が可能と考えられる。関節包は関節を包む柔軟性のある袋
58
状の組織であり、外側は線維性膜、内側は滑膜から構成される (16)。関節固定
59
によってこの関節包に線維化、炎症、低酸素、軟骨化生が生じる (6、17、18)。
60
また膝関節屈曲固定による後方関節包の肥厚、線維化と関節包内の筋線維芽細
61
胞の増加が報告されている (14)。ラットを用いた関節固定後の関節包の変化を
62
調べた研究では関節包の低酸素状態や炎症が関節固定1日後から観察され
63
(18)、線維化に関わる CTGF やトランスフォーミング増殖因子(Transforming
64
growth factor (TGF))-β などが増加する (17)。また Hagiwara らは凍結肩患者
65
でも、関節包で線維化や炎症に加えて軟骨化生が生じていることを報告してい
66
る (6)。
67
体外衝撃波治療(Extracorporeal shockwave therapy:ESWT)は 1980 年代に
68
尿路結石の治療として開発され、それ以降泌尿器科、循環器内科、整形外科領域
69
において様々な疾患に使用されてきた (19)。本邦では現在整形外科疾患では足
70
底腱膜炎のみが保険診療の適応である (20)。Lai らは足底腱膜炎患者に ESWT
71
を施行した群とステロイド注射をした群でランダム化比較試験を行い、ESWT
72
を施行した群で有意に疼痛の visual analogue scale(VAS)が改善したと報告し
5
73
ている (21)。その他にも海外ではアキレス腱炎、疲労骨折や偽関節など多くの
74
整形外科疾患の治療に使用されている (22―24)。ESWT は血管新生、損傷組織・
75
神経組織の修復、抗炎症や抗アポトーシス、抗線維化などの効果を有するとされ
76
る (25―29)。以上より、ESWT が関節固定による関節包の変化を抑制すること
77
で関節拘縮を予防できると仮説し、本研究を行った。
78
79
80
81
III.
研究目的
関節固定によって起こる関節拘縮に対する ESWT の予防効果を評価し、その
作用機序を解明することである。
82
83
84
85
IV.
研究方法
本研究は東北大学動物実験委員会から倫理承認を得て行われた(Approval No.
2019MdA-153-03)。
86
11 週齢 Sprague-Dawley rats ラット(CLEA Japan, Tokyo, Japan)を購入し、
87
1週間飼育環境に順応させた。飼育環境は電気消灯を 12 時間毎とし、飲水、食
88
事は自由に行わせた。12 週齢で膝関節の固定手術を行った。麻酔はイソフルラ
89
ンの吸入麻酔で入眠させた後に塩酸メデトミジン、ミダゾラム、酒石酸ブトルフ
90
ァノールの三種混合麻酔で維持した。手術は大腿骨上と脛骨上に 1 cm の小切開
6
91
を行い、大腿骨と脛骨を露出させそれぞれに電動ドリルを使用しスクリューホ
92
ールを作成した。図 1 のようなプラスチックプレートとスクリューを用いて、
93
膝関節自体には直接侵襲を加えずに膝関節 150 度屈曲位で、大腿骨と脛骨をプ
94
レートで固定した(図2)(30、31)。手術後に 108 匹を ESWT 治療を行う ESWT
95
群と、治療を行わないコントロール群の 2 群(各群 54 匹)にランダムに分け、
96
関節固定後 2 週、4 週、6 週で(各週、各群 18 匹ずつ)安楽死させ、それぞれ
97
可動域計測、遺伝子発現解析および組織学的分析(各群、各週、各分析 6 匹ず
98
つ)に使用した。
99
100
体外衝撃波(ESWT)治療
101
ラットを側臥位としイソフルランで吸入麻酔を行った。ESWT 群には focused
102
型の ESWT(Storz Medical AG, Tägerwilen, Switzerland)を固定した膝関節の
103
外側の皮膚上から行った(図 3 A)。期間は固定後1日から固定期間終了(2週、
104
4週、6週)までとした。照射エネルギーは 0.25 mJ/mm2、照射回数は 3000 shot、
105
4 Hz で、週3日行った。コントロール群は同様の麻酔のみ施行した(図 3 B)。
106
107
108
関節可動域計測
固定期間終了後ペントバルビタールナトリウムをラットの腹腔内に過量投与
7
109
し安楽死させた。その後固定した膝関節を含む下肢を図 4 のように股関節で離
110
断し、固定したプレートとスクリューを抜去し、膝関節を傷つけないように可能
111
な限り筋肉を除去した (13、31)。屈曲位で拘縮した下肢の大腿骨を可動域計測
112
装置に固定後、足関節に3種類の重錘(50 g、100 g、200 g)を紐でつるし、滑
113
車を用いることで下方牽引した (32)(図 5)。最大伸展位となったところで牽引
114
した状態を保持し、レントゲンを撮像した。関節可動域はレントゲンで撮影され
115
た大腿骨と脛骨の長軸のなす角度とし、分度器を用いて測定した (13)(図 6)。
116
117
サンプル採取と組織の準備
118
固定期間後安楽死させたラットの大動脈に 0.1 M のリン酸緩衝生理食塩水
119
(pH7.4)中に 4%パラホルムアルデヒドを 300 ml 灌流し灌流固定を行なった
120
(33)。灌流固定後、膝関節を取り出し、固定したプレートとスクリューを抜去し
121
4℃で 24 時間 4%パラホルムアルデヒドに浸漬した。その後 10%エチレンジア
122
ミン四酢酸に漬け、4℃で 2 か月間脱灰を行った。脱灰を確認後、50%、60%、
123
70%、80%、90%、95%、100%エタノールに1時間ずつ、キシレンに4時間浸
124
漬し脱水を行った。組織片をトレーに置き 2 時間毎にパラフィンを交換しキシ
125
レンと置換させパラフィン包埋を行なった。パラフィンブロックの膝関節内側
126
顆部を矢状面方向に外側から薄切していった。半月板は三日月の形をしており、
8
127
外側を薄切すると矢状面で半月板が前後で連続しているが、内側に薄切を進め
128
ると半月板が前後に分かれる。その半月板が前後に分離するところを基準とし
129
その内側を 5 μm で薄切し、組織切片を作成した (33)。
130
131
組織学的評価
132
それぞれの切片に対してヘマトキシリン・エオジン染色を行い、後方関節包周
133
囲の形態学的変化を観察した。関節固定によって関節包滑膜の長さが縮小し、関
134
節内に癒着が起こり、関節腔内面積の減少が起こることで関節拘縮となること
135
が報告されている (29)。そこで、関節包滑膜および関節腔内面積を測定するこ
136
とで関節包滑膜、関節内の癒着の変化に対する ESWT の効果を検討した。図 7
137
のように、大腿骨から半月板後方につながる関節包の表面の後上方関節包の滑
138
膜組織の長さと、脛骨から半月板後方につながる後下方関節包の滑膜組織の長
139
さを測定し、関節包滑膜の長さとした。また後上方関節包滑膜の間に線維性の構
140
造物が見られた場合これを癒着と定義し、その領域を癒着領域とした。後上方関
141
節包に囲まれた領域で癒着していない領域を後方関節腔とし、この面積を測定
142
した。
143
144
9
145
免疫染色
146
切片を段階的に脱パラフィンし 3.0%過酸化水素溶液に浸して内因性ペルオキ
147
シダーゼを阻害した。0.1%トリプシン(富士フィルム和光純役株式会社、大阪
148
市、日本)と 0.1% CaCl2/Tris buffer で賦活化を行った。非特異的免疫グロブリ
149
ンを室温で 30 分間、10%正常ヤギ血清(ニチレイバイオサイエンス、東京、日
150
本)を用いて除去した。一次抗体としてウサギポリクローナル α-SMA 抗体
151
(ab5694, Abcam, Cambridge, UK:希釈、1:1000)、マウス抗ラット CD68 抗
152
体(MCA341 R、Bio-Rad Antibodies, Hercules, CA:希釈、1:400)、ウサギポ
153
リ ク ロ ー ナ ル CTGF 抗 体 (ab6992, Abcam : 希 釈 、 1 : 200) 、 ウ サ ギ
154
type I collagen 抗体(LSL-LB-1102、コスモ・バイオ株式会社、東京、日本:希
155
釈、1:800)を使用し 4℃、24 時間でインキュベートした。
156
二次抗体として、α-SMA、CTGF、Col1α1 にはホースラディッシュペルオ
157
キシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン(IgG)(Dako, Glostrup,
158
Denmark)、CD68 にはヤギ抗マウス免疫グロブリン(ニチレイバイオサイエン
159
ス)を使用し室温で 30 分間インキュベートした。最後に 3,3’-ジアミノベンジジ
160
ン四塩酸塩(Sigma-Aldrich Co. LLC, St. Louis, MO)に 0.03%過酸化水素水を
161
加え、0.1 M イミダゾールを加えて暗所で 10 分間発色させた。すべてのスライ
162
ドは同時に染色を行った。
10
163
α-SMA は血管壁の平滑筋細胞だけでなく筋線維芽細胞のマーカーでもあり、
164
血管数と筋線維芽細胞を評価するために用いられる (34、35)。α-SMA で染色
165
される管腔構造を血管として同定し (36)、後方関節包内の全血管数を測定した。
166
さらに血管径が 20μm 未満の血管を小血管、20 μm 以上の血管を大血管と定
167
義し、小血管数、大血管数を数えた。また筋線維芽細胞は線維芽細胞から分化し
168
線維化に関与する。管腔構造を持たないα-SMA 陽性細胞を筋線維芽細胞と定義
169
したが、本研究ではそのような細胞は観察できなかった。
170
関節固定によって固定早期からマクロファージが関節内に遊走してくること
171
が報告されている (37)。CD68 はマクロファージに発現する膜糖タンパク質で
172
あり、マクロファージ様 A 型滑膜細胞を CD68 で免疫染色し (38)、後上方関節
173
包の滑膜の長さと CD68 陽性細胞数を測定し、滑膜 1 mm あたりの CD68 陽性
174
細胞数を算出した。また癒着領域の面積と癒着領域内の CD68 陽性細胞数を測
175
定した。固定2週のコントロール群の癒着領域面積が 104 μm2 から 8×104 μm2
176
であったため 104 μm2 を基準として癒着領域の 104 μm2 あたりの CD68 陽性細
177
胞数を算出した。
178
CTGF は線維芽細胞の増殖、コラーゲンなどの細胞外基質タンパクの産生促
179
進作用を有する (39)。関節包においても関節固定によって CTGF 陽性細胞が発
180
現、増加することが報告されている (17)。後方関節包内を 400 倍の倍率で観察
11
181
し 1 視野あたりの全細胞数に占める CTGF 陽性細胞数を測定し線維化に対する
182
ESWT の作用を評価した。関節包の 80%はI型コラーゲンで構成されており、
183
関節拘縮によってI型コラーゲンが増加し線維化が起こる (40)。Col1α1 を用
184
いて関節包内の I 型コラーゲンの基質染色強度の免疫組織化学的スコアを評価
185
することで ESWT による関節包の線維化に対する効果を調べた (41)。免疫組織
186
化学的スコアは 1 から 3 までの 3 段階とし、固定 2 週の関節包滑膜と同等の強
187
陽性を 3、周囲の骨梁と同程度の弱陽性の領域があれば 1 とし、その中間の染色
188
強度を 2 とした。上記の染色抗体と標識する細胞を表1に示した。
189
190
組織の弾性評価
191
組織の硬さは変形のしにくさととらえることができるが、均一な組織の場合
192
にはこれを弾性と表現する。組織の弾性を調べる方法として超音波顕微鏡や超
193
音波エラストグラフィを用いる方法がある。超音波エラストグラフィはエコー
194
を用いて組織の硬さを評価することができるが (42)、細胞レベルでのより細か
195
い解析は困難である。音波の速度は物質の種類、状態などに影響される。組織の
196
硬さと音速は正の相関を示し、組織が硬いと音速は速くなる。超音波顕微鏡は観
197
察対象に超音波を放射し、サンプルからの反射波または透過波を解析し画像に
198
変換することで組織の硬さや厚さを評価する。顕微鏡下に細胞レベルで組織の
12
199
硬さを評価することができ、周波数 100 MHz 以上の超音波により解像度が光学
200
顕微鏡の 40 倍に相当する解像度で生体組織の観察が可能である。
201
脱パラフィン後に超音波顕微鏡(Scanning acoustic microscope (SAM))を用
202
いて後方関節包領域の音速を測定することで関節固定によって硬くなる後方関
203
節包に対する ESWT の効果を評価した (32)。ヤング率の二重ルートに比例する
204
音速は波形のフーリエ変換によって計算した。超音波顕微鏡によって算出され
205
た画像は Photoshop CC 2021(Adobe Systems, San Jose, CA)を用いてグレース
206
ケールに変換した。半月板や大腿骨、脛骨、軟骨を除いた後方関節包の領域の平
207
均音速を測定した (32)。
208
209
遺伝子発現解析
210
安楽死後、後方関節包を切離しすぐに 1 ml の QIAzol(Qiagen, Venlo,
211
Netherland)に浸漬し、液体窒素で凍結した。サンプルを Polytron homogenizer
212
(Kinematica AG, Malters, Switzerland)を用いて粉砕し、RNeasy Lipid Tissue
213
Mini Kit(Qiagen)を使用し RNA を抽出した。抽出した RNA から Cloned AMV
214
First-strand cDNA Synthesis Kit(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用し相補的
215
DNA を合成した (43)。Quantitative reverse transcription polymerase chain
216
reaction (qRT-PCR)を使用し EF1α1 を標準とした。線維化に関与する遺伝子
13
217
として col1α1、III 型コラーゲン(Collagen type III(Col3))α1、TGF-β、
218
CTGF、α-SMA を評価した。関節拘縮によって線維芽細胞がα-SMA 陽性の筋
219
線維芽細胞に分化することで I 型コラーゲンが増加し (14)、III 型コラーゲンが
220
減少する (44)。また TGF-βと CTGF の遺伝子発現が増加する (17)。ESWT
221
の線維化に対する効果を検証する目的で上記を用いた。炎症に関与する遺伝子
222
として IL-1β、IL-6、腫瘍壊死因子(Tumor necrosis factor (TNF))-α、TNF-
223
β を評価した。IL-1β、IL-6、TNF-α はマクロファージなどで産生・分泌され
224
炎症の初期応答に関わっている。関節固定された関節包においても炎症が誘発
225
され炎症性サイトカインの発現が増加する (18)。ESWT の炎症に対する効果を
226
検証する目的で上記を用いた。血管新生に関与する遺伝子として HIF-1α、血管
227
内皮細胞増殖因子(Vascular endothelial growth factor (VEGF))、細胞増殖核抗
228
原(Proliferating cell nuclear antigen (PCNA))、内皮型一酸化窒素合成酵素
229
(Endothelial nitric oxide synthase (eNOS))を評価した。HIF-1αはエリスロポ
230
エチンや VEGF など多数の血管新生に関わる発現を誘導し毛細血管の増加に関
231
与している (45)。VEGF は血管内皮細胞に作用し細胞の分裂、分化を誘導し新
232
たな血管の形成に関わる (46)。eNOS は血管内皮で NO の産生を担い、NO は
233
血管拡張や血管新生に関わっている (47)。 ...