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大学・研究所にある論文を検索できる 「Genome-wide CRISPR screen for HSV-1 host factors reveals PAPSS1 contributes to heparan sulfate synthesis」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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Genome-wide CRISPR screen for HSV-1 host factors reveals PAPSS1 contributes to heparan sulfate synthesis

鈴木, 健史 名古屋大学

2023.01.24

概要

【緒言】
単純ヘルペスウイルス 1 型(HSV-1)は、口唇ヘルペスや性器ヘルペスから重篤な脳炎などの多彩な疾患の原因となり、免疫状態に関わらず臨床で問題となるウイルスである。HSV-1 の感染は、ウイルスエンベロープ上の糖タンパク質が、標的細胞表面に発現しているヘパラン硫酸と相互作用し、ウイルスが細胞に吸着することで始まる。ヘパラン硫酸を介した吸着は、NECTIN1 などの受容体とウイルス糖タンパク質との効率的な結合に関わり、その後の膜融合やエンドサイトーシスを惹起するため、ウイルスが細胞内に侵入ための重要なステップである。本研究では、全ゲノム領域を対象とした CRISPR スクリーニングにより、HSV-1 宿主因子の網羅的探索を試みた。

【方法・結果】
ヒト一倍体細胞株である HAP1 細胞は、HSV-1 感染により細胞死が誘導される。HAP1 細胞と CRISPR/Cas9 システムを用いて、約 19,000 個の遺伝子と 2,000 個の miRNAを網羅するノックアウトライブラリーを樹立した。樹立したライブラリーに HSV-1 を感染させ、感染に抵抗性を示した細胞を回収し、sgRNA を次世代シーケンスにて解析することで、HSV-1 宿主因子のスクリーニングを実施した。このスクリーニングでは、HSV-1 の感染に必須とされるウイルス受容体をコードする遺伝子 NECTIN1 を含む、11 個の遺伝子と 1 つの miRNA を、HSV-1 宿主因子として単離した。スクリーニング結果の検証のため、ゲノム編集により候補遺伝子をノックアウト(KO)した変異 HAP1細胞を作成し、HSV-1 感染への抵抗性を評価した。NECTIN1 の他、ヘパラン硫酸の生合成を担う XYLT2 および EXT2 の KO が HSV-1 感染に対して高い抵抗性を与えることを確認した。さらに、哺乳類で唯一の硫酸基供与体となる 3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)の合成酵素をコードする遺伝子 3'-Phosphoadenosine 5'-PhosphosulfateSynthase 1(PAPSS1)の KO により、HSV-1 感染への高い抵抗性を示すこと確認し、PAPSS1 を新規の HSV-1 宿主因子として見出した(Figure 1)。本スクリーニングにより単離した遺伝子の多くがヘパラン硫酸の生合成に関わっており、ヘパラン硫酸の生合成では硫酸転移酵素による糖の硫化プロセスがあるため、新に単離した PAPSS1 もヘパラン硫酸の生合成に関わると考えた。実際に、XYLT2-および EXT2-KO 細胞ではヘパラン硫酸の発現量がバックグラウンドレベルまで低下し、HSV-1 の細胞への吸着もコントロールと比較して 30-200 倍と、ウイルス吸着が著しく低下していた(Figure 2)。細胞表面のヘパラン硫酸の定量では、PAPSS1 の KO でヘパラン硫酸の顕著な発現量の低下を認めた。ヘパラン硫酸糖鎖の二糖解析を高速クロマトグラフィーにて行 い、PAPSS1-KO 細胞はコントロール細胞と比較して、硫酸化度が 1/20 程度まで低下していることがわかった。このことから、PAPSS1 が糖鎖の硫酸化に関与し、ヘパラン硫酸の生合成に重要な因子であることが示された。また、HSV-1 の細胞表面への吸着もPAPSS1-KO 細胞では 100-1,000 倍ほど低下しており、PAPSS1 がヘパラン硫酸の生合成に寄与することでウイルスの効率的な細胞への吸着を補助していると考える(Figure 3)。PAPSS1 の機能をさらに検討するため、ヒト網膜細胞由来の RPE-1 細胞、胃腺癌由来の AGS 細胞、肺腺癌由来の A549 細胞を用いて PAPSS1-KO 細胞を作成した。AGS細胞においては HAP1 細胞と同様に、PAPSS1-KO によりヘパラン硫酸の発現がバックグラウンドレベルまで低下したが、RPE-1 細胞と A549 細胞においてはヘパラン硫酸の発現低下は限定的であった。PAPSS1 遺伝子には、PAPSS2 遺伝子という側系遺伝子(パラログ)が存在する。抗 PAPSS2 抗体を使用したウェスタンブロットを行うと、PAPSS1-KO によるヘパラン硫酸発現の低下が限定的であった RPE-1 細胞と A549 細胞では、PAPSS2 の発現を認めた。しかし、PAPSS1-KO でヘパラン硫酸発現の低下が著しい HAP1 細胞と AGS 細胞では、PAPSS2 の発現はみられなかった。さらに、RPE-1細胞を用いて PAPSS2-KO 細胞と PAPSS1 と PAPSS2 のダブルノックアウト(DKO)細胞を作成し、ヘパラン硫酸の発現を評価すると、PAPSS2-KO 細胞は PAPSS1-KO 細胞と同様にヘパラン硫酸の発現低下は限定的であったが、DKO 細胞ではヘパラン硫酸発現が大きく低下していた。これらの結果から、ヘパラン硫酸生合成における PAPSS1 遺伝子への依存度は、PAPSS2 遺伝子の発現の有無によって異なること、並びに、ヘパラン硫酸生合成においては PAPSS1 と PAPSS2 が機能的に補完し得ることが示唆された(Figure 4)。

【考察】
本研究では、ヘパラン硫酸は HSV-1 粒子の細胞への吸着を補助するため、XYLT2、EXT2 や PAPSS1 遺伝子などのヘパラン硫酸の生合成に関与する遺伝子群が HSV-1 感染に関わる宿主因子であることを示した。HSV-1 の感染は標的細胞への吸着から始まり、侵入、核への移行、ウイルスゲノムの複製、ウイルスゲノムのパッケージング、出芽などと様々な段階を経て感染が成立し子孫ウイルスの産生が行われる。しかしながら、本研究のスクリーニングでは、細胞への接着や侵入といった感染の最初期段階に関与する宿主因子が選択的に単離された。この選択バイアスの理由は、強い選択圧をかけるため、合計 4 週間と長くセレクション期間を設定したためと考えている。ウイルスの侵入以降のステップで関与する宿主因子が欠損した細胞では、ウイルスは子孫ウイルスの産生は行えないが、細胞内には存在する。従って、これらの細胞はセレクション期間中に、侵入したウイルスの細胞変性効果や、細胞内のウイルスに惹起されたアポトーシスにより、増殖が出来ずに、HSV-1 感染に抵抗性を示す集団から除外された可能性がある。本研究で HSV-1 宿主因子として同定した PAPSS1 遺伝子は、ヒトの細胞に普遍的に発現する。一方、その側系遺伝子 PAPSS2 の発現は組織特異性があり、その変異は軟骨異形成などの表現型を示す。しかし、本研究では RPE-1 細胞において、PAPSS1 遺伝子と PAPSS2 遺伝子がヘパラン硫酸生合成において機能的に補完可能であることが明らかとなった。今後に、PAPSS1 および PAPSS2 の細胞局在の違いや酵素活性、発生・分化段階における発現の違いなどの検討が必要ではあるが、どうして PAPSS2 の機能 喪失が軟骨異形成などの表現型を呈するのかを考える上で、重要な知見であると考える。

【結論】
HSV-1 の感染、特に標的細胞への吸着と侵入に、重要な一連の宿主遺伝子群を同定した。PAPSS1 を HSV-1 宿主因子として見出し、PAPSS1 はヘパラン硫酸の生合成に寄与することを明らかにした。本研究により、HSV-1 感染におけるヘパラン硫酸の重要性が確認された。

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