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大学・研究所にある論文を検索できる 「X連鎖性鉄芽球性貧血におけるフェロトーシス関連遺伝子の転写制御」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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X連鎖性鉄芽球性貧血におけるフェロトーシス関連遺伝子の転写制御

小野 浩弥 東北大学

2021.03.25

概要

鉄はすべての細胞でヘムおよび鉄硫黄クラスターの合成を担い生体機能にとって必須である。一方、細胞内自由鉄は酸化ストレスを介した細胞傷害性をもつことから、鉄代謝は細胞内および全身で厳密に制御されている。鉄制御機構は、ヘモグロビン合成のために大量の鉄を取り込む赤血球前駆細胞で極めて重要である。しかし、遺伝的または後天的要因により赤血球前駆細胞に過剰に鉄が蓄積すると赤血球成熟が障害され早期細胞死に至る。遺伝性鉄芽球性貧血はこういった疾患の代表例である。

遺伝性鉄芽球性貧血は骨髄赤芽球におけるヘム・鉄代謝に関わる遺伝子群の変異により発症し、最も頻度が高いのは赤血球型 5-アミノレブリン酸合成酵素(5-aminolevulinate synthase 2, ALAS2)をコードする遺伝子の変異を原因とするX 連鎖性鉄芽球性貧血(X-linked sideroblastic anemia: XLSA)である。XLSA で同定された 80 種類以上の ALAS2 変異は、その多くが機能喪失型のミスセンス変異であり、変異の種類により重症度や治療反応性が異なることが知られる。およそ半数の患者がビタミンB6 により貧血の改善が認められる一方、その他の患者では無効であり、XLSA の分子病態の解明および新規治療法開発が課題だった。本研究では、 XLSA で高頻度に認められる ALAS2 のエクソン 5 にある 170 番目のアミノ酸が置換する変異のうち、ビタミン B6 への治療反応性など臨床的な特徴が異なる 2 種類の変異(ALAS2 R170L および R170H)をヒト赤血球系細胞株に導入し、XLSA の分子機構を解明することを目的とした。

まず、ヒト赤白血病細胞株 K562 から clustered regularly interspaced short palindromic repeat/CRISPR associated protein 9(CRISPR/Cas9)技術を用いて ALAS2 R170L および R170H 変異K562 細胞を樹立した。変異 K562 細胞を酪酸ナトリウムで処理し赤血球系に分化させたところ、ヘモグロビン合成障害が認められ、XLSA 患者の病態の一部を再現していると考えられた。一方で XLSA 患者の骨髄に特徴的な環状鉄芽球の出現は認められず、XLSA モデル細胞として限界があると思われた。次に同様の手法でヒト臍帯血由来赤血球前駆細胞(human umbilical cord blood-derived erythroid progenitor: HUDEP)-2 で XLSA モデル細胞株樹立を目指した。 ALAS2 R170L および R170H 変異 HUDEP-2 細胞を、クエン酸第一鉄(sodium ferrous citrate: SFC)を添加した培地でマウス間葉系細胞株 OP9 と共培養し赤芽球に分化させたところ、ヘモグロビン合成障害に加えて環状鉄芽球の出現が認められた。この結果から ALAS2 変異HUDEP-2 細胞(XLSA クローン)は XLSA モデルとして妥当と考えられた。

続いてSFC 添加培地で分化させたXLSA クローンおよび野生型HUDEP-2 細胞の遺伝子発現プロファイルを分化前の野生型 HUDEP-2 細胞のものと比較した。XLSA クローンでは野生型 HUDEP-2 細胞に比べフェロトースを抑制する遺伝子群の発現が低下していた。フェロトーシスは脂質過酸化を介した鉄依存性細胞死であり、心筋疾患や腎不全、神経変性疾患など多様な酸化ストレス関連疾患への関与が報告されている。遺伝子発現プロファイルに加え、XLSA クローンでは酸化ストレスに暴露された細胞に特徴的なミトコンドリアの形態変化が認められたことから、フェロトーシスが XLSA の病態に関与する可能性を考え解析を進めた。

XLSA クローンにフェロトーシス誘導剤であるエラスチンを添加し 24 時間反応させたところ、XLSAクローンは野生型HUDEP-2 細胞に比べエラスチンによる細胞死が多く、細胞内の脂質過酸化が亢進していた。 XLSA クローンのエラスチンによる細胞死は鉄キレート剤デフェロキサミンにより回避される傾向にあった。以上から、XLSA クローンから分化誘導された環状鉄芽球はフェロトーシス感受性が増大していることが示唆された。

ヘム応答性転写抑制因子BTB domain and CNC homolog 1(BACH1)は鉄代謝の重要な制御因子であるとともにフェロトーシスの促進因子であるため、XLSA クローンでの転写因子 BACH1 とフェロトーシスの関わりを調べた。SFC 添加培地で分化させた XLSA クローンでは BACH1 が有意に増加していたのに加え、 BACH1 により転写抑制される遺伝子の発現低下が認められた。発現低下した遺伝子にグルタチオン合成や鉄代謝といったフェロトーシス抑制に関わる遺伝子群が含まれていたことから、BACH1 の増加によってそれらの転写が抑制された結果、XLSA クローンのフェロトーシス感受性が増大したものと考えられた。

本研究の結果、XLSA では ALAS2 変異が遺伝子の転写を変化させ、グルタチオン合成の低下・鉄代謝の変化を介して脂質過酸化およびフェロトーシス感受性の増大に至る可能性が示された。

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