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書き出し

カンボジア都市部におけるメタボリックシンドロームと関連する生活習慣

玉置, 美春 名古屋大学

2023.05.16

概要

学位報告4

別紙4
報告番号



















論 文 題 目 カンボジア都市部におけるメタボリックシンドロームと関連する生活習慣


名 玉置 美春

論 文 内 容 の 要 旨
【背景】
カンボジアでは、心血管疾患や糖尿病などの非感染性疾患(Non-communicable diseases: NCDs)の増加
が顕著である。カンボジアのような低中所得国での NCDs の増加の一因として、急速な経済発展に伴う都
市化による生活環境の変化が挙げられる。例えば、砂糖や脂肪分、塩分を多く含んだファストフードが広
まり、それに従い肥満や高血圧の人が増えている。さらに、交通の便の改善により、身体活動量が減った
ことも一因とされている。メタボリックシンドローム(Metabolic syndrome: MetS)は、血圧上昇や脂質
異常症、高血糖、肥満などの要因を複合的に持ち合わせた状態であり、NCDs の高リスク因子である。
WHO が NCDs のリスク要因として挙げている、不健康な食事や運動不足、喫煙や過度な飲酒などの生活
習慣は、先行研究において MetS の発生にも影響を与えることが明らかとなっている。
これまでにカンボジアにおいて MetS についての報告はされていない。NCDs に影響を与える生活習慣に
関する研究も十分でなく、あっても一部で触れられている程度である。カンボジアにおける、MetS の有
病率や、先行研究で示された様々な生活習慣と MetS との関連が示されれば、現状を知ることができ、多
方面からの MetS の予防対策が可能となる。それのみならず、他の低中所得国での MetS の予防対策への
示唆ともなるだろう。本研究では、第 1 研究でカンボジア都市部の MetS の有病率を明らかにし、第 2 研
究で MetS に関連する生活習慣を明らかにする。
【対象及び方法】
カンボジアの首都プノンペンにある日系民間病院にて 2017 年 1 月から 2019 年 12 月の間に健康診断を受
けた 20 歳以上のカンボジア人を解析対象とした
本研究は、既存の健康診断のデータを使用した横断研究である。調査項目は、基本属性、血液検査結果(中
性脂肪、HDL コレステロール、LDL コレステロール、空腹時血糖、HbA1c)
、収縮期血圧・拡張期血圧、
腹囲、測定された身長および体重から算出した body mass index(BMI: 体重 kg/身長 m2)を使用した。生
活習慣項目は、
「1 回 30 分以上の軽く汗をかく運動を週 2 日以上 1 年以上実施している」

「日常生活におい
て歩行又は同等の身体活動を 1 日 1 時間以上実施している」

「ほぼ同じ年齢の同性と比較して歩行速度が
速い」

「人と比較して食べる速度が速い」

「就寝前の 2 時間以内に夕食をとることが週に 3 回以上ある」

「夕食後に間食をとることが週に 3 回以上ある」

「朝食を抜くことが週に 3 回以上ある」

「睡眠で休養が十
分とれている」

「お酒を飲む」

「現在タバコを習慣的に吸っている」の 10 項目である。この項目は、日本
の特定健診で使用されている「標準的な質問表」と同様の内容である。MetS の診断は、Harmonized diagnostic
definition を使用した。

学位関係

解析は男女別に行い、対象者の記述統計を示した。第 1 研究では、各年代の男女比較はカイ二乗検
定を行なった。MetS や MetS 構成要素の有病率の割合の比較、MetS 群と非 MetS 群の高血圧、糖尿
病、脂質異常症の有病率の比較は、年齢調整をした二変量解析を行なった。第 2 研究では、MetS 群と
非 MetS 群の身体測定値や血液検査値を、年齢調整し二変量解析を行った。MetS と生活習慣の関連の
検証には、MetS の有無を従属変数、生活習慣を独立変数とした多変量ロジスティック回帰分析を使用
した。統計解析には、IBM SPSS Statistics for Windows Ver.28(IBM, Armonk, NY, USA)を使用し、有意
水準は 5%(両側検定)とした。
【結果】
①第1研究
解析対象者は 6090 名(男性 3174 名、女性 2916 名)であった。MetS の有病率は、男性が 60.1%、女
性が 52.4%であった。Met S 有病率は男性・女性共に年代が上がるにつれ上昇していた。 Mets
components の有病率は、血圧上昇が 69.4% (男性:73.2% 女性 65.3%)で、男女ともに最も MetS
components の中で有病率が高かった。一方、最も低い有病率であったのは、男性は腹部肥満で 44.8%、
女性は高中性脂肪で 33.5%であった。異常値割合の MetS 群と非 MetS 群の比較では、MetS 群の方が、
高血圧・糖尿病・脂質異常・肥満の全ての項目において有意に高い割合を示した。対象者の未治療者
割合では、脂質異常に対して治療を行なっていない者が、脂質異常者の 9 割にも上った。
②第 2 研究
解析対象者は 5945 名(男性 2845 名、女性 2614 名)であった。男女ともに、MetS 群の方が非 MetS 群
と比較し、BMI、腹囲、血圧、中性脂肪、血糖値、HbA1c は有意に高い値を示した。男女ともに MetS
と有意に関連を示した生活習慣は、
「人と比較して食べる速度が速い」
(男性 OR [Odds ratio]: 2.25
confidence interval [CI] = 1.68–3.03、女性 OR:1.92
て歩く速度が速い」(男性 OR:0.78
飲む」(男性 OR:1.33

95% CI = 1.10–1.61、女性 OR:1.33

ことが週に 3 日以上ある」(OR:1.25
(OR:0.83

95%CI = 1.41–2.60)「ほぼ同じ年代の同性と比較し

95% CI = 0.67–0.92、女性 OR:0.75

他に「人と比較して食べる速度は普通」
(OR:1.73

95%

95% CI = 0.62–0.89)「お酒を

95% CI = 1.09–1.62)であった。男性はその

95%CI = 1.30–2.31)、女性は「夕食後に夜食をとる

95%CI = 1.01–1.55)「朝食を抜くことが週に 3 日以上ある」

95%CI = 0.69–0.99)「睡眠で十分に休養がとれている」(OR:1.19

95% CI = 1.01–1.42)が

MetS と有意な関連を示した。
【結論】
本研究により、①カンボジア都市部に住む人々の MetS の有病率と②MetS の有無に関連する生活
習慣の 2 点が明らかとなった。


MetS の有病率は、56.4%(男性 60.1%、女性 52.4%)であった。



MetS に関連する生活習慣として有意に関連がみられたのは、男女ともに、食べる速さが速いこ
と、同じ年代の同性と比較して歩行速度が遅いこと、飲酒をしていることであった。加えて男性
のみ、食べる速さが普通であること、女性のみ、週 3 日以上朝食を欠食すること、週 3 日以上夕
食後に夜食を食べること、睡眠で十分な休息を取れていることに有意な関連がみられた。

カンボジア都市部において MetS の有病率が高いことが明らかとなり、介入の必要性が示された。さ
らに、先進国のように健康教育や保健指導による生活習慣への介入が MetS の予防に有効である可能
性が導き出された。

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