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大学・研究所にある論文を検索できる 「後期古原生代海洋における酸化還元状態変化と炭素-窒素-硫黄循環 : カナダ,フリンフロン帯及びケープスミス帯に保存される黒色頁岩の地球化学」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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後期古原生代海洋における酸化還元状態変化と炭素-窒素-硫黄循環 : カナダ,フリンフロン帯及びケープスミス帯に保存される黒色頁岩の地球化学

元村, 健人 MOTOMURA, Kento モトムラ, ケント 九州大学

2022.03.23

概要

古原生代(25-16 億年前)は地球表層環境が大きく変化した時代の1つである.中でも約 24 億年前に始まった大酸化事変は地球史上最大の大気酸素濃度急上昇イベントであり,地球表層環境を大きく変えた.22-20 億年前頃には+10‰に及ぶ炭素同位体比の正異常(Lomagundi Event)が見られることから,当時の地球表層環境は一次生産の活発化により酸化的だったと考えられている.また,Lomagundi Event 期の地層からは真核生物化石が産出しており,酸化的環境の形成に伴って真核生物が誕生したと考えられる.先行研究により Lomagundi Event は約 20 億年前頃を境に終了したことが明らかとなっているが,Lomagundi Event の終焉・その後の地球環境変動については未だ不明である.

 本研究は,カナダ北東部に分布するケープスミス帯および中南部に分布するフリンフロン帯を研究対象として,約 19-18 億年前の海洋における酸化還元状態と炭素-窒素-硫黄循環の詳細な変動を復元することを目標とする.ケープスミス帯は約 18 億年前の島弧-大陸衝突により形成された.
約 27 億年前のスペリオルクラトンを基盤として 19.6 億年前から 18.8 億年前までの大陸縁辺堆積物(Povungnituk 層群)・苦鉄質火山岩類( Chukot at 層群)が層序を成している.本研究ではPovungnituk 層群の最上位に位置する Nuvi lik 層から掘削された2本のコア試料(718-3333 及び4G8069)に含まれる黒色頁岩を分析試料とした.フリンフロン帯には約 19.2–18. 4 億年前に形成された火成岩・堆積岩が保存されている.約 18. 8 億年前の付加イベントを境に衝突前の海洋プレートと堆積岩から構成される Amisk assemblag e(19.2–18.8 億年前)と衝突後の陸上堆積岩から構成される Missi 層群(~18. 4 億年前)が識別されている.また,フリンフロン帯には約 18. 4 億年前のタービダイトが各地に点在しており,堆積年代が等しいことから衝突に伴って形成された背弧海盆のタービダイト(Burntwood 層群;18. 4 億年前)のクリッペであると見なされてきた.分析試料にはそれぞれ黒色頁岩互を含む 3 本の掘削コア試料(EEL425,SD B001 及び TS07-01)を用いた.

 718-3333 コアは約 50m 連続する砂岩-黒色頁岩互層により構成される.4G8069 コアはタービダイト流により形成された砂岩-黒色頁岩互層(約 80m)とそれを覆うコマチアイト質の溶岩流(約 10m)により構成される.両コア中の黒色頁岩は主成分鉱物として石英を含み,副成分鉱物として白雲母や硫化鉱物等を含む.EEL425 コアは最下位の安山岩,上位の砂岩ー黒色頁岩互層(約 85m)とそれを覆うデーサイトによって構成され,SDB001 コアは最下位の玄武岩,上位の砂岩ー黒色頁岩互層(約 30m)とそれを覆う玄武岩質安山岩によって構成される.TS07-01 コアは約 440m のタービダイト性砂岩ー黒色頁岩互層部と約 10m の流紋岩(Rhyolite unit)から構成される.砂岩―黒色頁岩互層部は褶曲により上下が大きく4度入れ替わっており,それぞれ N1 (~20 m), R1 (~240 m), N2 ( ~10 m), R2 ( ~50 m), N3(~120 m) unit を識別した.Rhyolite unit と N3 unit の境界付近は約 30m にわたって強い変形を被っている.砂岩は主要鉱物として石英や斜長石を含み,副成分鉱物としてジルコン,アパタイト,チタン酸化物等を含む.黒色頁岩はシルトサイズの石英粒子と粘土鉱物,微量の黄鉄鉱を含む.

 フリンフロン帯は 18. 8 億年前の付加イベントやその後の造山運動に伴う変形を幾重にも被っており,地層の対比(堆積岩の年代決定)が十分に行われていないため,掘削コア EEL425 及び TS07-01について U-Pb 年代を用いた堆積年代の推定を行った.

 EEL425 コアは最下位の安山岩からチタン石を分離し,TS07-01 コアは流紋岩2試料と砂岩からジルコンを分離した.分析の結果,EEL425のチタン石について約 1850Ma,TS07-01 コア中の流紋岩から分離したジルコンについて約 1880 Ma の年代を得た.流紋岩と接する N3 unit 中の砂岩から分離されたジルコンは 1862 Ma の年代を示した.黒色頁岩の分析の結果,SDB001 コアについては TS/TOC 比が非常に高い値をとること (avg. =57.2)などから熱水活動の影響あると推定した.一方で TS07-01 コアは TS/TOC 比が現世の淡水堆積物に匹敵するほど低いこと(avg. =0. 05)から硫酸に貧しく,外洋から閉ざされた環境で堆積したと推定した.また,全て試料において Ce/Ce* < 1.0 であり還元的環境(suboxic-sulfidi c)が推測できる.TS07-01 コアおよび 4G 8069 コアについては,V と砕屑物指標(Ti, Al)が正相関し,V/Ti や V/Al 比がPAAS と同程度であることからsuboxic 環境で堆積したと推定した.一方で EEL425 コアや 718-3333 コアは V/Ti や V/Al が一部P AAS の値を大きく超えており,さらに U/Tiや U/Al, Mo/Ti, Mo/Al も一部 PAAS の値を超える.以上からEEL425 コアおよび 718-3333 コアに含まれる黒色頁岩の堆積環境はsuboxic から sulfidic 環境に変化したと推定した.

 酸化還元状態の変化が示唆されたEEL425 コアや 718-3333 コアはsulfi dic 環境の形成に伴って有機炭素同位体比が減少する.また,718-3333 コアでは同時期に風化指標である W 値や CI A 値が増加し,硫黄同位体比が-20‰程度減少する.そのような有機炭素・硫黄同位体比の減少は軽い同位体比を持つ炭素や硫黄が大気海洋系に供給されたためである考えられ,同時期に起きた大規模火成活動(Circum-Superior LIP;18.8 億年前)が原因である可能性が高いと考えた.一方で 4G8069コアは酸化還元状態の変化が認められないものの,–3‰程度の有機炭素・硫黄同位体比の減少(W値や CI A 値の増加を伴わない)が確認できた.これについても大規模火成活動により同位体比の軽い炭素・硫黄が大気海洋系に供給されたことが原因であると考えられるが,オスミウム同位体比などを含めた更なる検討が必要である.EEL425 コアについては W 値や CIA 値の増加や硫黄同位体比の減少を伴わない.これについては有機炭素同位体比の減少原因や風化度に関する再考を要する.

 窒素同位体比を用いた検討では,約 19 億年前の大陸縁辺の海域において,硝酸イオンが豊富に存在する好気的窒素循環が駆動していたことが明らかとなった.この結果は先行研究と調和的であり,海洋表層は酸化的環境であったことがわかる.一方で,外洋から隔たれた環境で形成した堆積物(TS07-01 コア)からはシアノバクテリアによる窒素固定が支配的な嫌気的窒素循環が復元され,硝酸イオンに枯渇した環境であったことが明らかとなった.

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