書き出し
第33回(2021年度)名古屋大学宇宙地球環境研究所年代測定研究シンポジウム 講演要旨
概要
三角州は河川が運搬してきた土砂が海岸に堆積することでできる地形で、その地層は過去の海岸や河川流域の環境変化を記録している。完新世の三角州の地層は主に放射性炭素年代によって編年されるが、光ルミネッセンス(OSL)年代も適用可能であり、特に貝殻や植物片などが含まれない地層での活用が期待される。OSL年代測定では石英や長石の堆積物粒子を用いるが、そうした粒子が堆積直前に太陽光に露光し、そのOSL信号がリセットされていることが、その適用性の前提条件である。太陽光への露光は、三角州平野の陸上や潮間帯では期待できるが、水中の堆積環境では自明ではない。そこで、ベトナム中部と南部の三角州から得たボーリングコアにおいて、OSL年代と放射性炭素年代との比較を行うことで、OSL年代測定の適用性の検証を行った。結果は、OSL年代測定は概ね有効であった。特に、泥粒子が水深10m以上の深部に堆積する場合でも、堆積地点ではなく、河川での運搬中に太陽光への露光が行われると考えられる。