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大学・研究所にある論文を検索できる 「Study on fluid-rock interactions in oceanic crust and upper mantle using isotope geochemistry」の論文概要。リケラボ論文検索は、全国の大学リポジトリにある学位論文・教授論文を一括検索できる論文検索サービスです。

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書き出し

Study on fluid-rock interactions in oceanic crust and upper mantle using isotope geochemistry

嚴, 智瑗 東京大学 DOI:10.15083/0002006692

2023.03.24

概要

論文審査の結果の要旨

氏名

嚴 智瑗

本論文は、オマーン・オフィオライトを参照ケースとして、同位体地球化学の手法を用いて、海洋地殻と上部マン
トルにおける流体-岩石相互作用に関する研究を扱ったものである。これは 5 章から構成され、最初の第 1 章は、
全体のイントロダクションとなっている。本研究の分析対象であるマグネシウム(Mg)の性質、地球表層環境にお
ける動態などに関するこれまでの知見が整理されている。さらに、海洋プレートの拡大軸で海洋地殻とマントルが
生成し、沈み込み、衝上して陸上に露出したと推定されるオマーン・オフィオライトの基本的情報や最新の研究成
果などが紹介され、課題が述べられている。現代の海洋地殻を深く掘削することが技術的に難しいことから、オフ
ィオライトは半世紀以上にわたり重要な海洋プレートの研究のプロキシとして探求されてきた。一方で、オフィオラ
イトは、現代の海洋地殻の性質と全く同じものではないことが指摘されてきた。本論文は、海洋地殻や上部マント
ルを対象として、流体―岩石の相互作用を研究し、生物地球化学に大きな影響を与える海洋リザーバーの Mg
循環を扱うとともに、オフィオライト形成にとって重要な、沈み込み時に起こる同位体の変化を解析したところに特
徴がある。

第 2 章では、西太平洋域の背弧を含む熱水系から採取された高温熱水の Mg 同位体組成を分析した結果が扱
われている。熱水流体中の Mg は主に除去メカニズムとされる。高温熱水端成分の δ26Mg 値は α= 1.00008 の分
別係数をもつことを示した。次に、海洋リザーバーにおける Mg の除去流量は、過去半世紀にわたり重要な課題
となってきた。この問題に関連し、本論文の分析値より収支計算を行い、河川の Mg 投入量の 7〜26‰が高温熱
水 Mg シンクによって除去されると示唆した。 これは、Mottl and Wheat(1994)による 10〜40%の熱推定よりも小
さく、従来の説を変更するものである。さらに、現代の海水の δ26Mg 値を説明するには、低温熱水変質・ドロマイト
化などの他の除去メカニズムが必要とされることを指摘した。

第 3 章では、オフィオライトの堆積物、地殻構成岩、およびマントルかんらん岩の Mg 同位体組成を分析し、オマ
ーン・オフィオライト形成に伴う流体-岩石相互作用における Mg 同位体挙動を研究した。地殻断面の δ26Mg 値
は、–0.58‰から–0.04‰の範囲で、熱水 Mg の沈み込みが深さ 2km 以内に限られていたことを示した。本論文で
扱ったマントルセクションの岩石は、世界のマントル岩の平均値である δ26Mg 値–0.25±0.04‰に比べ、–0.39‰か
ら–0.07‰の範囲を示した。δ26Mg 値の増加原因は、海底の風化によるもの、δ26Mg 値が局所的に減少していた原
因は、沈み込みに伴う流体-岩石相互作用とされた。

第 4 章では、オマーン・オフィオライトの形成過程を解析するため、Mg より敏感なストロンチウム(Sr)、ネオジム
(Nd)、硫黄(S)の同位体組成を分析・解析した。マントル最上部の岩石には、白亜紀の海水より

87Sr/86Sr

比が低

い(87Sr/86Sr <0.7074)試料があり、これらはマントルへの深層水循環の証拠を示している可能性がある。一方、当
初の予想に反し、白亜紀の海水よりも 87Sr/86Sr 比が高いかんらん岩(87Sr/86Sr > 0.7074)試料が多く見つかった。
これは、沈み込みの際に、87Sr/86Sr 比が高い堆積物由来の Sr がマントルセクションに付加したためと説明された。
εNd-87Sr/86Sr 図上での解析より、オマーンのマントルかんらん岩への、沈み込むプレート上の堆積物成分の寄与
を示した.さらに、硫黄含有量と負の-20.0‰などの低い δ34S 値を示す硫化物の証拠は、この見解を支持した。Sr、
Nd、および S 同位体の整合的な変動から、北フィズ山塊では、広範囲にマントルの同位体成分が改変されたこと
を示唆した。 特に、沈み込みに関連した硫黄の同位体は、下部マントルセクションで強く、沈み込むスラブに由
来する成分が寄与したことを意味した。

第 5 章では、全体をまとめ、得られた新知見に基づいてオフィオライト形成史を議論した。本論文は,生物地球化
学循環で重要な Mg に関し,高温での Mg の分別係数を推定するとともに主要な除去プロセスと推定される海底
熱水系の役割を定量的に示した。さらに、オマーン・オフィオライトで記録された環境履歴を、数種の同位体を駆
使して復元し、拡大軸付近の熱水活動が主要な変質プロセスである海洋地殻に対し、上部マントルでは沈み込
みに伴う流体がオフィオライトの岩石と反応したことを明白に示した。

なお、本論文第 2 章、第 3 章、および第 4 章は共同研究の下に実施されたが、論文提出者が主体となって分析
及び解析を行ったことは明らかで、論文提出者の大きな寄与があったと判断する。

したがって、博士(理学)の学位を授与できると認める。

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